STAP細胞問題とメディア戦術
先日(4月9日)の小保方ユニットリーダーによる記者会見。
新証拠を出したわけではなく,専門家の間では厳しい見方が続いている。まあそりゃそうだ。日刊スポーツなんか調子に乗って紙面の半分以上を小保方ユニットリーダーの顔写真のドアップで埋め,「小保方さん反撃失敗」などと報道し,世間から失笑と批判を浴びている。
だがしかし,情緒面では今回の記者会見は成功だったといえるだろう。代理人弁護士事務所には50通のファンレターが届いているというし,記者会見翌日のワイドショーなどによれば,市井から小保方支持の声が寄せられているようだ。
つまり,今回のSTAP細胞騒動は,科学コミュニティ内でのバトルと世間でのバトルの二重構造になっている。戦前とは違って今の理研は税金で研究をやっているので,世間での反応は理研の生死に関わる。
メディア戦術の見地から見れば,未亡人メイクとまで評される様相で涙を交えつつ控えめに語る小保方ユニットリーダーは,世評を覆すことに成功したと考えられる。弁護団との入念な打ち合わせやリハーサルがあったかもしれない。
その一方,4月1日の午前と午後に行われた理研側の最終報告は,発言の正確さを重視しつつも,どこか横柄さを感じさせ,また,小保方ユニットリーダーにのみ罪を負わせるような内容に終始し,専門家と世間,両者の支持を受けられるようなものとはなっていなかった。
おそらく,世間は「理研は『トカゲのシッポ切り』で事態を収拾しようとしている」との見方をしている。STAP細胞の有無も重要だが,事態は,STAP細胞論文の不手際をめぐる「孤立する若手研究者VS理研首脳部」の戦いという構図になっている。日本には「判官びいき」という言葉があるのを諸兄もご存じでしょう。科学コミュニティの典型ともいえる理研は世間の目=納税者の視点について鈍感すぎる。
先日紹介した『パブリッシュ・オア・ペリッシュ』の一文をまた引用する:
日本では,政府機関,学会,大学,助成団体も,この問題<研究不正のこと>への対応を欠いている。研究者も,不正行為は一部の精神のおかしな人間による個人的な問題としか考えていない。(山崎茂明『パブリッシュオアペリッシュ』, p.28)
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研究不正を「未熟な研究者」による個人的な問題として片づけるだけでは,研究不正を防ぐこと,あるいは抑制することはできない。
さらに言えば,個人的問題としてのみ片づけようとする姿勢は世間から見れば「トカゲのシッポ切り」にしか見えない。
理研は研究不正を本質的に防ぐという目的からも,また,メディア戦術の観点からも,よく練った対応策を準備することである。
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