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2014.04.30

「資源の枯渇」は杞憂だというが

連休の谷間,いかがお過ごしでしょうか。
小生はカレンダー通り,仕事をしておりました。

さて,WSJの記事:

世界の資源は枯渇せず―有限説はエコロジストの杞憂」(by Matt Ridley, WSJ, April 29, 2014)

というのがあります。

要するに,人口増加・エネルギー大量消費などによる資源枯渇・食糧需給の逼迫を憂うエコロジストが多いけれども,イノベーションの効果を忘れてはいませんか? という内容。オプティミズム。

イノベーションへの過大な期待はいかがかと思いますが,そうでもしないと恐怖に打ち勝てないのかもしれません。何の恐怖か知りませんが。

「2020年ピークオイル説」が流布されたのちに,シェールガスやシェールオイルが生産されるようになり,化石燃料枯渇の可能性が遠のいたことは,イノベーションの効果を信じさせる理由の一つになっているでしょう。他にもまだまだ化石燃料が隠されているかもしれず,エネルギー供給に対する心配事はあまりないかもしれません。

エネルギーおよび食糧の需要に関しても,人口増加がある点で止まり,さらに減少が始まる可能性もあるため,心配するほどのことはないかもしれません。労働者はどんどんロボットに置き換わっているし,これからの世界では人が不要になってきますからね。

とはいいながら,イノベーションへの期待ばかりふくらませるのもいかがなものかと。世界の歴史上,何回も科学技術が停滞した事例がありますし。イノベーションへの期待というのは結局のところ,他人任せに他なりません。

それにも増して,心配なのは現下の地球温暖化(?)。人間のエネルギー消費が地球温暖化の原因であるという説には異論もありますが,安全側に考えれば,まっとうな説だと思います。

気象庁の「さくらの開花日の変化」とか「アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について」とか見ると,地球温暖化に伴う気象変動がすでに起こっているのでは?という疑念が湧いてきます。

資源は枯渇しないかもしれませんが,イノベーションによる問題解決よりも猛烈なスピードで気候変動がやってきているのかもしれません。

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2014.04.27

村井紀が「戦時の折口」をたたき切る

現在発売中の『現代思想 2014年5月臨時増刊号 総特集=折口信夫』では,豪華執筆陣が折口信夫を様々に論じている。

そのことは先日のブログで述べたが,反折口の旗幟鮮明な村井紀の文章の切れ味が凄い。短い文章だからだと思うが,昨今の折口に関する新たな研究成果など目もくれず,折口の戦争責任の一点に集中砲火を浴びせている。

「坊主めいたペンネームにキリスト像めいたスケッチ,わけのわからぬ『死者の書』」(『現代思想 2014年5月臨時増刊号 総特集=折口信夫』村井紀「再説・反折口信夫 神道の戦争責任」, p.34)

と折口の業績もボッコボコ。

「折口信夫は,諸氏の折口信夫論の前提にある,アウトローを装ったホモソーシャルな"性政治"を含めて,「皇国史観」に集約される日本ファシズム研究の資料である。」(『現代思想 2014年5月臨時増刊号 総特集=折口信夫』村井紀「再説・反折口信夫 神道の戦争責任」, p.35)

と折口を研究材料扱い。

戦前・戦中の日本の政治体制をファシズムと見なすかどうかですでに議論があるのにもかかわらず,「日本ファシズム」と言ってしまうあたり,潔いとしか言いようがない。

いま,うちの本棚に村井紀が2004年に作品社から上梓した『反折口信夫論』がある。

同書所収の「序説」で村井紀はこのように宣言している:

「この男は時代をこえた存在として,ロマン的,反時代的な人物として語られている。

しかし,私はここで,こうした反時代的な折口信夫像を,彼が生きた時代に回収し,いいかえれば限りなく凡庸化し,諸家が黄金だと言うところを鉛だと言おうと思う」(『反折口信夫論』「序説 反折口信夫論」, p.7)

この本が出てから10年経ても,村井紀の姿勢にぶれは無い。

折口が戦時体制に対して抵抗したというエピソードはいくつも知られている。しかし,村井紀は,そういった"抵抗神話"は日本ファシズムに同調する指導者層の内部抗争事例に過ぎないと一蹴するわけである。

村井紀は

  • 叙事詩を以て神話を偽造し,人々を戦争へと駆り立てた
  • 戦後は,敗戦理由を国民の信仰不足とし,国民に戦争責任を押し付けた

という2つの理由を以て,折口の戦争責任を追及して止まない。

『現代思想 2014年5月臨時増刊号』の他の執筆陣が,とくに中沢新一が,折口の思想から何かを汲み出して,未来へとつなげようとしているのとは一線を画している。

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村井 紀

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2014.04.24

没後60年,「折口信夫」がアツい

折口信夫は1953年(昭和28年)9月3日に没した。ということで現在,没後60年を経たところである。

現在発売中の『現代思想 2014年5月臨時増刊号 総特集=折口信夫』は安藤礼二,富岡多恵子,そして折口の直弟子である岡野弘彦を執筆陣に迎えた豪華ラインナップで特集を組んでおり,読みごたえがある。

現代思想 2014年5月臨時増刊号 総特集=折口信夫現代思想 2014年5月臨時増刊号 総特集=折口信夫
安藤礼二 中沢新一 小松和彦 藤井貞和 赤坂憲雄 松岡正剛 島薗進 原武史 岡野弘彦 富岡多恵子 辻原登

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それにしても松岡正剛が何を書くのかと思っていたら,「学生運動でボコボコにされ,その後遺症で脳圧が上がって治療していた頃に,折口の著作を読み始めた」という,折口作品との出会いについて語っていた。著作の内容よりもどのように著作に出会ったかという体験を書くあたりが松岡正剛らしいと思った。

さて,それはさておき。

小生も本ブログでたびたび折口信夫=釈迢空を取り上げているので,今回はそれらの記事のバックナンバーをリストアップして紹介しておこうと思う。

結構たくさん書いているなぁ。

小生のみならず,なぜ多くの人が折口信夫に惹かれるのか?

『反折口信夫論』を上梓した村井紀は戦時における折口の責任を追及してやまないわけだが,そういうのをわかったうえで,まだまだ多くの人が折口信夫の文章・思考・人生から影響を受け続けているわけである。ちなみに村井紀も『現代思想 2014年5月臨時増刊号 総特集=折口信夫』に文章を寄せている。

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20年毎の韓国旅客船事故,繰り返される過積載

今なお捜索活動が続くSewol号転覆事故。事故原因はまだ特定されていないが,過積載が一因であることはほぼ確実視されている。

韓国では過去にも同様の大規模な旅客船沈没事故が発生している。

西海(ソヘ)フェリーの場合は天候不良が原因として加わっているが,どちらの場合も過積載が事故原因の重要な部分をなしている。

南営(ナムヨン)号の場合は定員302人を越える338人の乗客,最大積載量の4倍を超える過積載があった。西海(ソヘ)フェリーの場合は定員221人に対し362人の乗客ということでやはり過積載。

今回のSewol(歳月)号転覆事故も,魔改造によってフェリーがトップヘビーになり安定性を損なった上に4倍の過積載があったと言われている。

過積載が一因の旅客船沈没事故が,ほぼ20年おきに発生している。だが,周期性があるように見えるのは単なる偶然だと思う。

しかし,別の見方をすれば,20年の間に必ず大事故が起きるような状況が韓国の旅客船業界で醸成されている,というように言えるのではないだろうか。

どういうことかというと,「ハインリッヒの法則」を思い浮かべると良い。

1つの重大事故の背景には29の軽微な事故があり,さらにその背景には300のヒヤリ・ハット事例(工場用語で,事故には至らなかったが,ヒヤッとした事例のこと)がある,という経験則である。

南営号にしても西海フェリーにしてもSewol号にしても,これらの船だけで過積載があったわけではなく,韓国の旅客船業界では過積載があたりまえ,ケンチャナヨ状態なのではなかろうか。そして,そこに天候や未熟な操船技術やあれやこれやが重なると,ハインリッヒの法則が発動して大事故に至る,ということではなかろうか。

もしそうだとすれば,韓国の旅客船業界の安全に対する意識を変えなくてはならない。だが,国民全体にケンチャナヨ精神が蔓延していたら,一業界の努力もすぐ風化することだろう。

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2014.04.21

『旅する巨人』に見る柳田国男の人望の無さ

『旅する巨人』は偉大な民俗学者である宮本常一と,そのパトロンであり生涯の師である渋沢敬三とを描いた大部のノンフィクション小説である。この二人を際立たせるための演出かもしれないが,本書の中で一種のヒール(悪役)として配されているのが柳田国男である。

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柳田の学問は「一将功成りて万骨枯る」(↓参考)如きもので,柳田が全てを掌握し,柳田に師事する者たちは全てデータ提供者として柳田の研究に奉仕するというのが実情であった。

Mizukiyanagita
水木しげる『神秘家列伝 其ノ四』 (角川文庫ソフィア) 308頁より

そもそも柳田国男の代表作『遠野物語』にしてからが,序文に「この話はすべて遠野の人佐々木鏡石君より聞きたり」とあるように,鏡石佐々木喜善の話を自分のものにした作品である。

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柳田国男は日本民俗学の創始者というだけでも偉大な人物である。もちろん『蝸牛考』で示した「方言周圏論」のように,非常に鋭い理論を生み出すことのできる優れた学者でもある。

しかしながら,柳田国男は人望が厚いとは言い難い人物だった。

「大正二年の『郷土研究』創刊以来,柳田の許には数多くの門弟が参集していた。だが,最後まで柳田の許に残る門弟はほとんどいなかった。」(佐野眞一『旅する巨人』150頁)

佐野眞一『旅する巨人』「第6章 偉大なるパトロン」には柳田の人望の無さを示す事例がいくつか紹介されている。

こんな例がある。柳田は門弟をデータマンとしてしか見ておらず,その不満から早川孝太郎という研究者は柳田の許を離れた。

またこんな例もある。後に日本の民族学と文化人類学を主導することになる岡正雄は,柳田とともに民族学雑誌『民族』を編集していた。ある時,岡正雄が折口信夫から預かった「常世及びまれびと」という論文を『民族』に掲載しようとしたところ,柳田はこれを拒否した。非科学的だという理由だが,折口の台頭を妨げようとする意図があったようだ。これが原因で柳田と岡との関係がこじれ,『民族』は廃刊に追い込まれる。

柳田の許を離れた早川孝太郎や岡正雄はその後,どうなったかというと,渋沢敬三の庇護をうけることとなった。

早川孝太郎は後に柳田が激賞することとなる『花祭』という本を上梓するが,その執筆期間の生活を支えたのは渋沢敬三だった。

岡正雄は,ウィーン大学のヴィルヘルム・シュミットのもとで民族学を学び,帰国後は日本の民族学の理論的指導者となるが,その留学資金を与えたのも渋沢敬三だった。

柳田の偏狭さは優れた学者にありがちな気質と言えるかもしれない。しかし,その気質のまま振舞っていたのでは後進が育たず,民俗学やそこから派生した民族学,文化人類学などの芽が摘まれてしまったことだろう。渋沢敬三というパトロンが柳田の許を離れた優秀な人材に支援を与えることによって,各学問分野は発展を遂げた。

この偉大なるパトロンのもとで手塩にかけて育てられた最大級の研究者こそ,旅する巨人・宮本常一だった。

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2014.04.16

SEWOL号のSEWOLは「歳月」という意味,もとは日本の「フェリーなみのうえ」

すでにご存じの方も多いと思うが,今日の朝9時ごろ,韓国・珍島近くの海上で,乗客乗員477人が乗った旅客船SEWOL号が沈没した。

SEWOLとは「歳月」のハングル読みである。命名の由来はわからない。

船の写真館」というサイトによると,もとは鹿児島~奄美~沖縄を結んで航行していたフェリー「なみのうえ」である。2012年9月26日に引退したのち,韓国に引き取られたという。

今回の沈没事故は原因不明だが,日本で製造・就航していたことをネタに何か言われたらたまらない。

沈没の原因も問題だが,事故直後の対応,救助活動が適切に行われているかどうかが重要だと思う。行方不明者数が突然変わるあたりを見ると,非常に怪しい。

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2014.04.15

【百年戦争】フォルミニーの戦い【ブルトンの金獅子】

百年戦争後期,1450年の今日,4月15日,ノルマンディー州フォルミニー村でフォルミニーの戦いBataille de Formigny, Battle of Formigny)があった。

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この戦いで,リッシュモン大元帥率いるフランス軍はイングランド軍に大勝。百年戦争の流れは大きく変わり,翌年にはノルマンディーからイングランド軍が一掃されることとなる。

Web漫画『ブルトンの金獅子』ではまだそこまで進んでいないが,いずれ,この戦いが描かれることだろう。

Wikipediaの英語版仏語版とで,参加兵力と戦死者数が若干違うのが面白い。

仏語版だと,フランス軍4500人(騎兵2000人+歩兵2500人+大砲2門),イングランド軍7000人で,フランス側戦死者500~600人,イングランド側戦死者3800人,捕虜1200~1400人である。

これに対して英語版だと,フランス軍6200人(フランス兵5000人+ブルトン兵1200人),イングランド軍7000人で,フランス側戦死・負傷者200人,イングランド側戦死者3500人,捕虜900人である。

昔のことなので,数字は推定値でしかないが,英語版の方がフランス軍が多め,イングランド軍戦死者が少なめに記述されているのが面白い。

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2014.04.14

胞子文学のススメ

消費税が上がって以来,書店に行くのを我慢していたのだが,とうとう書店に行って本を買ってしまった。

行ったのは広島の丸善ジュンク堂。出張のついでである。

そして買ったのは,田中美穂編『胞子文学名作選』(港の人)である。

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田中 美穂

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丸善ジュンク堂の文学の棚に『胞子文学名作選』を推奨するPOPが貼りついていた。それが気になって本棚を何回も見直したところ,渡辺淳一のどうでも良い本の陰に隠れるようにして『胞子文学名作選』が2冊あった。

まず何よりも驚くのがその装幀である。吉岡秀典という人がブックデザインを担当しているらしいが,様々な種類の紙を使い,フォントを駆使して,遊び心のある本を作り出している。

松岡正剛が本の身体性ということをよく口にするが,重さ,紙の手触り,透過性など,本が我々に及ぼす物理的な影響を想わずにはいられないような本である。

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↑栗本薫「黴」は光沢のある半透明の紙に印刷されている。

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↑井伏鱒二「幽閉」はボコボコのボール紙のような紙に印刷されている。


『胞子文学名作選』には以下の作品が収められている:

  • 永瀬清子「苔について」
  • 小川洋子「原稿零枚日記(抄)」
  • 太宰治「魚服記」
  • 松尾芭蕉 俳句
  • 小林一茶 俳句
  • 伊藤香織「苔やはらかに。」
  • 谷川俊太郎「交合」
  • 多和田葉子「胞子」
  • 野木桃花 俳句
  • 川上弘美「アレルギー」
  • 尾崎一雄「苔」
  • 内田百閒「大手饅頭」
  • 河井酔茗「海藻の誇」
  • 栗本薫「黴」
  • 宮沢賢治「春 変奏曲」
  • 佐伯一麦「カビ」
  • 前川佐美雄 短歌
  • 井伏鱒二「幽閉」
  • 尾崎翠「第七官界彷徨」
  • 金子光晴「苔」

よくもまあこれだけ集めたものだと感心する。ページ数の多くを占めるのは女性の作家たちである。伊藤香織「苔やはらかに。」も多和田葉子「胞子」も栗本薫「黴」も,読んでいると,空気に含まれる高濃度の胞子が我々の体の中に入り込み,神経の隅々まで菌糸を張り巡らせ,ついには我々を支配してしまうかのような感覚を起こさせる。とどめは尾崎翠「第七官界彷徨」で,多分これが胞子文学の最高峰ということになるのだろうと思う。


  ◆   ◆   ◆


『胞子文学名作選』に触発されて,家にある胞子関係の本を並べてみた。

Housikinoko

四手井淑子『きのこ学騒動記』と『きのこ学放浪記』は,著名な森林生態学者の四手井綱英の妻である。主婦からきのこ研究者になった女性が,家庭生活とのバランスに悩みながら研究を続けている様子を書き綴っている。

きのこ学騒動記―学問と主婦事情 (1983年)きのこ学騒動記―学問と主婦事情 (1983年)
四手井 淑子

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浅田彰『ヘルメスの音楽』がなぜ胞子関係の本だと言えるのかというと,「キノコの音楽――ジョン・ケージを聴く」という一章が掲載されているからである。

ジョン・ケージはキノコ狩りを趣味としていた。

Asadaakirakinokonoonngaku
↑浅田彰『ヘルメスの音楽』(筑摩書房,1985年,pp. 102 - 103)より

ケージがよく言うように,「キノコ」と「音楽」は辞書で隣り合わせに並んでいる。むろん,それは単なる偶然だ。だが,その偶然に賭けることから彼の音楽のすべてが始まる。(浅田彰『ヘルメスの音楽』「キノコの音楽」,p.102)
ヘルメスの音楽 (水星文庫)ヘルメスの音楽 (水星文庫)
浅田彰

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星野之宣『2001夜物語』の2巻がなぜ,胞子と関係あるのかというと,「共生惑星」という作品があるからである。

Yukinobuhoshinokyouseiwakusei
↑星野之宣『2001夜物語 Vol.2』(双葉社,1985年,pp. 168 - 169)

「アリーナがロックを開けた時にすでに胞子はコロニー全体に――」(星野之宣『2001夜物語 Vol.2』p. 169)

みずへび座β星第5惑星に進出した人類は菌類とどのような関係を構築できるのか?


2001夜物語 2 新装版 (双葉文庫名作シリーズ)2001夜物語 2 新装版 (双葉文庫名作シリーズ)
星野 之宣

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というわけで,家の本棚をあさってみるといろいろ見つかるものである。

よくよく考えてみれば,坂口謹一郎『日本の酒』(参考)も胞子関係の本であるし,うちの本棚にはないが,石川雅之『もやしもん』もまた,胞子漫画の傑作として挙げることができる。


  ◆   ◆   ◆


本書の姉妹編として『きのこ文学名作選』というのがあるのだが,これは未入手。

きのこ文学名作選きのこ文学名作選
飯沢耕太郎 萩原朔太郎 夢野久作 加賀乙彦 村田喜代子 八木重吉 泉鏡花 北杜夫 中井英夫 正岡子規 高樹のぶ子 宮澤賢治 南木佳士 長谷川龍生 いしいしんじ

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2014.04.11

STAP細胞問題とメディア戦術

先日(4月9日)の小保方ユニットリーダーによる記者会見。

新証拠を出したわけではなく,専門家の間では厳しい見方が続いている。まあそりゃそうだ。日刊スポーツなんか調子に乗って紙面の半分以上を小保方ユニットリーダーの顔写真のドアップで埋め,「小保方さん反撃失敗」などと報道し,世間から失笑と批判を浴びている。

だがしかし,情緒面では今回の記者会見は成功だったといえるだろう。代理人弁護士事務所には50通のファンレターが届いているというし,記者会見翌日のワイドショーなどによれば,市井から小保方支持の声が寄せられているようだ。

つまり,今回のSTAP細胞騒動は,科学コミュニティ内でのバトルと世間でのバトルの二重構造になっている。戦前とは違って今の理研は税金で研究をやっているので,世間での反応は理研の生死に関わる。

メディア戦術の見地から見れば,未亡人メイクとまで評される様相で涙を交えつつ控えめに語る小保方ユニットリーダーは,世評を覆すことに成功したと考えられる。弁護団との入念な打ち合わせやリハーサルがあったかもしれない。

その一方,4月1日の午前と午後に行われた理研側の最終報告は,発言の正確さを重視しつつも,どこか横柄さを感じさせ,また,小保方ユニットリーダーにのみ罪を負わせるような内容に終始し,専門家と世間,両者の支持を受けられるようなものとはなっていなかった。

おそらく,世間は「理研は『トカゲのシッポ切り』で事態を収拾しようとしている」との見方をしている。STAP細胞の有無も重要だが,事態は,STAP細胞論文の不手際をめぐる「孤立する若手研究者VS理研首脳部」の戦いという構図になっている。日本には「判官びいき」という言葉があるのを諸兄もご存じでしょう。科学コミュニティの典型ともいえる理研は世間の目=納税者の視点について鈍感すぎる。

先日紹介した『パブリッシュ・オア・ペリッシュ』の一文をまた引用する:

日本では,政府機関,学会,大学,助成団体も,この問題<研究不正のこと>への対応を欠いている。研究者も,不正行為は一部の精神のおかしな人間による個人的な問題としか考えていない。(山崎茂明『パブリッシュオアペリッシュ』, p.28)
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研究不正を「未熟な研究者」による個人的な問題として片づけるだけでは,研究不正を防ぐこと,あるいは抑制することはできない。

さらに言えば,個人的問題としてのみ片づけようとする姿勢は世間から見れば「トカゲのシッポ切り」にしか見えない。

理研は研究不正を本質的に防ぐという目的からも,また,メディア戦術の観点からも,よく練った対応策を準備することである。

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かつて日本でもサマータイムが導入されていた

サマータイム(夏時間)という制度がある。

夏場,太陽の出ている時間帯を有効に利用するため,標準時を1時間進める制度のことである。主として欧米で導入されている。

東日本大震災直後,夏期の節電対策としてサマータイムを導入しようという議論が持ち上がっていた(参考)。

実は日本はかつてサマータイムを導入していたことがある。それは1948年から1951年までのことだった。

しかし,1952年の今日(4月11日),「夏時刻法を廃止する法律」が公布・施行され,夏時間は廃止となった。

Wikipediaの「夏時刻法」の記事によれば,廃止の理由として,占領の終了,生活リズムの混乱,通勤ラッシュの激化などが挙げられている。


  ◆   ◆   ◆


上述したように,東日本大震災後,節電のためのサマータイム導入,という意見が浮上しているわけだが,本当に節電効果があるのかどうかについては疑念が持ち上がっている。

ここでいう節電は最大電力消費(ピーク)を下げることである。丸一日のトータルの電力消費量を下げるという節電ではないことに注意。

たとえば,日本サステナブル建築協会が示した2011年夏の提言によれば,オフィスビルの2時間程度の時差使用は,最大電力消費量をほとんど下げないとのことである。 夏休みの分散なんかはオフィスビルの最大電力消費量を13~18%程度抑制する効果があるそうだが。

まあそれはそうだろう。昼間にエアコンなどを使用する限り,仕事開始の時間が多少早まっても,結局真昼間に電力を大量に使用することに変わりはない。どうせやるなら,昼は出勤せず,夜中に仕事をやった方がよい。


夏時間が日本で定着せず,欧米で定着するのは,夏と冬の日照時間の差が極端に大きいかどうかということが原因だろうと思う。特に高緯度地方では冬の日照時間が短く,その反動として夏の日照時間の有効活用ということが考えられる。日本は(北海道は違うかもしれないが),日照時間の有効利用への思いはそれほど切実なものではないと思う。

そういった生活習慣上のこともあり,また電力のピークカットにも役立たない可能性もあり,サマータイムは結局日本には根付かないだろうと思う。

日本睡眠学会などは,健康,労働安全,経済損失などの理由を挙げて,サマータイム導入に反対しているし(参考)。

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2014.04.10

4月10日は『グレート・ギャツビー』の発売日

F・スコット・フィッツジェラルドが執筆し,後に20世紀最高の文学の一つに数えられることとなったグレート・ギャツビー ("The Great Gatsby")は1925年4月10日,チャールズ・スクリブナーズ・サンズから発売された。

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↑初版本の表紙 (Source: Wikipedia)

いろいろと翻訳が出ているが,書名が『グレート・ギャツビー』だったり,『グレート・ギャッツビー』だったり,『華麗なるギャツビー』だったり,少しずつ違う。小生は光文社古典新訳文庫版で読んだ。装丁が綺麗ですからね。

グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫)グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫)
F.スコット フィッツジェラルド F.Scott Fitzgerald

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語り手はニック・キャラウェイ (Nick Carraway)というイェール大卒の物静かな青年である。第1次世界大戦に従軍した経験がある。今は証券会社で働いており,隣にギャツビーの大邸宅がある。

ジェイ・ギャツビー (Jay Gatsby)は謎の若い大金持ちであり,毎夜豪華なパーティーを催している。ニックは,この人物と知り合い,その謎に少しずつ迫っていくわけである。

この小説,訳がいいのかもしれないが,すんなり読めてしまう。しかし,それゆえに,いったいどんな話だったのか,と人に説明するのが難しい。一途な恋のために虚栄を張った男の話,と簡単に片づけられない。時代の空気が描かれている,というように述べるのもなんだか簡単すぎて良くない。

いったい何の話だっけ,と再読して,1922年のアメリカの上流社会に没入し,そして読後には,やはり何の話だっけ,と自問する,そういう不思議な小説だ。

原文は"Project Gutenberg Australia"で読める: "The Great Gatsby"

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2014.04.09

研究不正を個人の問題に帰するだけではダメ

某小保方博士(暫定)の記者会見の視聴率はすごかったんでしょうね。

さて,研究評価・研究不正の専門家と言えば山崎茂明先生である。その著書『ブリッシュ・オア・ペリッシュ』(みすず書房)を再読しているのだが,第3章の冒頭にいいことが書いてある。

科学の不正行為は,ねつ造,偽造(改ざん),盗用といった明確なものから,マイナスデータの意図的な除外や改変,貢献のない研究組織のトップを著者に入れる「ギフト・オーサーシップ」まで含めれば,より広く存在している。欧米では,科学研究の公正さをめぐる国際会議が開催され,何冊かの単行本も刊行されている。そして、米国では専門の査察機関も組織されている。しかし日本では,政府機関,学会,大学,助成団体も,この問題への対応を欠いている。研究者も,不正行為は一部の精神のおかしな人間による個人的な問題としか考えていない。(山崎茂明『パブリッシュオアペリッシュ』, p.28)
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この文章が暗に言おうとしているのは,研究不正を個人の問題に帰するだけでは研究不正を防止(抑制)できないということである。

以前,紹介したように『背信の科学者たち』にも研究組織の責任に触れた部分がある(参考:「(続)『背信の科学者たち』は予言の書か?」)。(ちなみに,『背信の科学者たち』は絶版になっていて,古書がとんでもない値段で取引されているようである)

もし,どのような小さな欺瞞でも,研究者の社会への仲間入りを熱望するあまり,心の平静さを失ってしまった哀れな人びとの責任に帰するのであれば,科学に自己規制力を与えているとされる種々の機構や制度については,何らの変更の必要はないことになる。(『背信の科学者たち』,94ページ)
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ということで研究不正に関しては組織的に対処する仕組みを作らないといけないというわけである。


『パブリッシュ・オア・ペリッシュ』によれば,研究不正に関する関心が高まったのは1980年代の米国の生命医療の分野からだということである。

これを受けて,米国の保健福祉省 (U.S. Department of Health & Human Services)には研究公正局 (The Office of Research Integrity, 略称ORI)が設立されている。日本にはこんな官庁は無い。

研究公正局は研究不正を明確に定義している(参考)。それはねつ造,改ざん,盗用 (fabrication, falsification, or plagiarism, 略称:FFP) の3つである。

「ねつ造 (Fabrication)」とは,データや結果をでっち上げたり,報告したりすることである。

「改ざん (Falsification)」とは,研究者にとって都合の良いように,実験材料や装置や手順をいじりまわしたり,データを変えたり省略したりすることである。

「盗用 (Plagiarism)」とは,出典を明らかにせず他人のアイディアや結果や言葉を横取りすることである。

このように研究不正を明確に定義した上で,ORIはアメリカ公衆衛生局 (Public Health Service) およびその支援を受けた組織における研究が公正に行われているかどうかを監視している。

日本の研究機関や官庁にこういう常設機関を設けたらどうか……とも思ったが,(1)性善説の立場から,こういう機関は不要という意見が出る,あるいは(2)こういう機関を設置しても形骸化するだけ,という結論になるのだろうと思う。


  ◆   ◆   ◆


あと,言い残したが,研究公正局は「誠実な誤り (honest error)」は不正行為には含まれないと定義している。ここは気を付けないと抜け道になる。

『パブリッシュ・オア・ペリッシュ』ではベル研の「シェーン事件」の例を取り上げているが,シェーンは不正行為を認めず,「誠実な誤り」であると主張した。まあ,調査報告が出た後,ベル研はシェーンを解雇したわけであるが,某理研が同じように毅然とふるまえるかどうかはよくわからない。

シェーン事件については村松秀『論文捏造』を。

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4月9日は「ワールシュタットの戦い」の日

時差があるので日本時間の今日ということではないが,1241年4月9日,レグニツァの戦い,通称ワールシュタットの戦いがあった。

モンゴル帝国軍とポーランド・ドイツ連合軍がポーランド南西のレグニツァ近郊で激突。モンゴルの圧勝で終わった。世界史好きの人の間では有名な戦いである。

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Matthäus Merian『レグニツァの戦い』 (Source: Wikipedia)


モンゴル軍の兵力は,Wikipediaの日本語版英語版ともに8,000人~20,000人と推定している。

ポーランド・ドイツ連合軍の兵力については日本語版英語版とで異なっていて,日本語版では2,000〜25,000人,英語版では3,800~8,000と推定している。

この戦いでポーランド・ドイツ連合軍は壊滅。総司令官のポーランド大公ヘンリク2世は戦死した。この戦いでヨーロッパ人の間にはモンゴルへの恐怖が植えつけられる。また,ヘンリク2世の領土は分裂し,ポーランド統一が遠のく原因となった。

モンゴル側はどうかというと,ポーランド支配までは考えていなかったようで,皇帝オゴディ死去の情報が入るや否や,撤退していった。

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研究倫理は倫理。法律ではないから裁けない:先進理工学研究科・疑惑の博士論文には多分お咎め無し

小保方博士(暫定)のSTAP細胞騒動が飛び火して,小保方博士(暫定)のものも含め,早稲田大先進理工学研究科の過去の全博士論文約280本を対象に,盗用など研究不正が無いかどうか精査することになったそうである。

小保方博士(暫定)の博士論文以外にも盗用らしき箇所がある博士論文が複数あることがネット上で指摘されているので,それに対応するための措置であろう。

悪質なケースについては博士号の取り消しも,ということである。


しかし,これは小生の予測だが,いくつかの博士論文に盗用らしきものが発見されても,おそらく博士号の取り消しなどは無く,厳重注意程度でおさまるだろう

理由は三つ。


  ◆   ◆   ◆


理由の一つ目は,前にも述べたように,Nature掲載のSTAP細胞論文に関する理研の不正調査委員会が「文章のコピペは研究不正行為に当たらない」という判断を下していることである。

いわば,出典を明らかにしないコピペでも,意識が朦朧としているときにやってしまったとか,単なる過失であると主張できれば,不正行為とは言い切れないという訳である。過失である理由はいくらでも主張できるから,理研は「文章のコピペは研究不正行為に当たらない」とお墨付きを与えてしまったようなものである。


理由の二つ目は,アカデミズムにおける「弱者保護」の姿勢。早稲田の先進理工学研究科は2007年にできたばかりの歴史の浅い大学院である。そこを出た約280人のほとんどは若い研究者だろう。

アカデミズムの世界というのは面白いところで,個々の研究者はわがままで身勝手な性格の人物が多いのだが,集団になり,議論の場になると「性善説」がまかり通るようになる。もしも,若い研究者が不正を働いた場合には,ベテラン研究者たちはその若い研究者を「弱者」と見なし,「前途ある若者をこんなことで潰してしまってよいのか」とかいう議論をする。多分,反省文を書かせて終わり。


理由の三つ目は,著作権侵害は親告罪であるということ。文章の盗用があった場合,著作権侵害という立派な犯罪として扱うことができる。しかし,著作権侵害の処罰は親告罪であるので,著作権者が告訴しない限り,刑事責任を問うことができない。

研究論文の文章が盗用されたとしても,元の論文の著者なり,出版社なり,著作権者が盗用者を訴えない限り,訴追されないわけである。おそらく,よほどのことが無い限り著作権者は面倒臭いし,時間と金の無駄なので盗用者を訴追しないだろう。盗用されるぐらいの論文を書くのは優秀な研究者だったりして,法廷での争いよりも,研究に力を割きたかったりする。第三者がワーワー言ってもダメ。事実上,法律の問題としてではなく倫理の問題として扱われることだろう。

倫理というのは法律の裏付けのないものである。また倫理の基準は人によって異なるので,良し悪しの判断は困難である。もしも良し悪しについて結論を出すことができても処罰には結びつかない。倫理規定で処罰を定めている場合もあるが,それすらあいまいになることが多い。法律じゃないので。


  ◆   ◆   ◆


まあいろいろ書いたが,結局,研究不正は研究倫理の問題であって,違法行為として処罰することができない。

研究に関する倫理規定があれば研究不正を処罰できるかもしれない。しかし,日本の場合,研究に関する倫理規定はアカデミズムの世界全体に浸透していないので,法律と違って強制力を持たず,適用するのは困難だろうと思う。無理に適用すれば,名誉毀損訴訟等の裁判沙汰になるだろう。

もし研究不正に対する処罰に当たるものがあるとすれば,それはアカデミズムの世界における悪評ということになるだろう。だが,悪評は広がる範囲が限られているし,いずれは薄まり消失するものである。

ということで,先進理工学研究科の全博士論文約280本の中のいくつかに疑義があろうとも,基本的には深刻な結果にはならないであろうと予測する。外れたら黒霧島飲んで寝ます。

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2014.04.08

「CNN:ココアノミクス」:チョコレートの需給,コスト構造についてのわかりやすいスライド集

CNN.co.jpのサイトでこういうページを見つけた:

ココアノミクス――チョコレート産業の包みの中は?

チョコレート産業は11兆円の市場規模を持つ巨大産業である。しかし,コスト構造を見ると,小売部門が43%,製造部門が20%,マーケティング部門が10%を占めていて,カカオ農家が手にするのは3%にすぎないとのこと。

File0001241908641
(by Alvimann)

どこかで似た話を聞いたと思ったら,コーヒー産業がそうだった。あれもコーヒー農家が手にする金はわずかだという話だった。

だからと言って製造・マーケティング・小売り部門といった下流部門が利益を収奪しているというわけでもない。

最近では,フェアトレードとか新たな取り組みがあるが,世界市場に影響を与えるほどではない。

タイとかマレーシアのゴム農家なんかは毎日,ラジオでゴム取引価格をチェックして,売るか売らないかを決めて利益を得ている。

つまり,カカオの場合も情報化が,カカオ農家が貧困から脱するための第一歩なのではないかと思う。

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カンボジア・コンポントム州,中田厚仁氏殺害から21年

1993年4月8日,カンボジア総選挙の選挙監視員として活動していた中田厚仁氏(当時25歳)が,カンボジア・コンポントム州で何者かに殺害された。

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中田厚仁氏は東大阪出身で,大阪大学法学部の卒業生だった。当時,小生は阪大生だったし,東大阪に住んでいたので,ニュースを聞いたとき,妙に親近感を覚えたものである。

その一方,当時の小生にとってはカンボジアは遥か遠くの国だった。しかし,今では毎年,同地に出張している。

この事件だが,真相は不明のままである。クメール・ルージュ犯行説もあるが,プノンペン政権の軍人による犯行という説もある。徹底的な事件究明が行われないまま現在に至っている。

Wikipediaの記事を読むと,中田厚仁氏を記念して,殺害事件が起こった周辺を「ナカタアツヒト・コミューン」と定めたという記述がある。しかし,コンポントム州の地図を見る限り,そのようなコミューンは存在していない。(参考: 「カンボジア2009年全国事業所リスティング速報結果No.2, 小地域(District、Commune)別地図 06 Kampong Thom 州」)


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お父上は息子さんの遺志を継いで国連ボランティア終身名誉大使をされています(参考)。

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2014.04.07

4月7日はアユタヤ王朝滅亡の日

4月7日はアユタヤ王朝滅亡の日である。正確には翌日までビルマ兵による殺戮や略奪が続いたので4月8日を滅亡の日としてもおかしくはない。

1765年,ビルマ・コンバウン王朝のシンビューシン王はアユタヤから見て北(ランナー),北西・西(テナセリム)から侵攻を開始した。第二次泰緬戦争の始まりである。このころのビルマ軍は強力だった。シャム(タイ)各地で抵抗があったものの,1766年には王都アユタヤを包囲した。

Burmesesiamese_war_17651767
ビルマ軍の侵攻ルート(Wikipedia

1767年3月下旬,ビルマ軍はアユタヤの城壁の下にトンネルを掘った。そして,4月7日午後4時,いくつかのトンネルを爆破し,城壁を倒壊させた。日暮れまでにビルマ軍はアユタヤ市内に突入し,シャムの守備兵を駆逐した。そのあとは殺戮と略奪の嵐である。王宮は破壊され,シャム王は遺体で発見された。数万のタイ人が捕虜としてビルマに連れ去れた。アユタヤ朝400年の歴史はここに幕を閉じることになる。

このあたりの話はWikipedia英語版の第二次泰緬戦争の記事の"Sack of the city"の項が詳しい。


  ◆   ◆   ◆


ところが,ビルマによる支配はそう長く続かなかった。シャム(タイ)はすぐに回復する。救国の英雄,タークシン(中国系タイ人。中国名は鄭信。元首相のタクシンとは綴りが違う)が登場する。

タークシンはアユタヤ王朝の将軍である。アユタヤ陥落後,その下流にあるトンブリーに新王朝を樹立。国内に乱立した諸勢力を鎮圧後,アユタヤ王朝の旧領や属国を回復した。

タークシン王は晩年,精神錯乱をきたし,家臣によるクーデターで捉えられる。そして,民衆の支持を受けたかつての右腕,チャオプラヤー・マハーカサット・スック将軍に処刑された。

このチャオプラヤー・マハーカサット・スック将軍こそ,後にラーマ1世となる人物である。ラーマ1世が興したチャクリー王朝は今も続いている。


  ◆   ◆   ◆


ビルマによるアユタヤ王朝の滅亡は,現在のビルマ(ミャンマー)とタイの関係に強い影響を及ぼしている。タイの歴史の教育では必ず,第二次泰緬戦争とアユタヤ陥落が取り上げられ,タイ人のビルマ(ミャンマー)人に対するネガティブな感情のベースとなっている。

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インドでは今日(4月7日)から総選挙が始まる:国民会議派大敗の可能性

アフガニスタンの大統領選挙(4月5日実施)も大事だが,世界最大の民主主義国家:インドの総選挙も大事である。

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インドの総選挙(下院議員選挙)は4月7日から始まるが,この一日で終るわけではなく,5月12日まで国内各地で実施される。開票はまとめて5月16日に行われる。随分と時間がかかるように思えるが,インドの有権者は8億人を超え,国土も広いから,まあこんなものだろう。

インドの下院(ローク・サバー)は定数545議席。そのうち,与党・国民会議派(Indian National Congress, INC, 通称はCongress Party)が206議席,人民党(Bharatiya Janata Party, BJP)が117議席を占めている。

国民会議派はインド独立前からの伝統ある政党である。ネルー,その娘インディラ・ガンディー,その息子ラジーヴ・ガンディーと,いわゆるネルー・ガンディー王朝がこの政党のリーダーシップをとっている。現在は,ラジーヴ・ガンディーの妻ソニア・ガンディー総裁と息子,ラーフル・ガンディー副総裁(43)が率いている。政治的立場は中道左派である。

人民党(BJP)は1980年にできたヒンドゥー至上主義政党である。1998~2004年まで政権を担っていた(バジパイ(ヴァージペーイー)首相)。現在はナレンドラ・モディ(グジャラート州政府首相)(63)がリーダーとなっている。


  ◆   ◆   ◆


The Guardianの記事によれば,今度の選挙では国民会議派が大敗しそうである:

Rahul Gandhi faces poll disaster as India is set for historic vote (by Jason Burke, The Guardian, April 5, 2014)

同記事に引用された,複数の世論調査結果によると,BJPが大勝し,過半数まであと30議席ほど,という結果になりそうだとのこと。ということは240議席程度獲得の見込みか?

一方の与党,国民会議派だが史上最悪の結果になりそうである。二桁しか議席が取れないという予測もある。

デリーの政治評論家の間では,BJPの勝利は当然のこととして,いったい何議席取れるのか,ということに議論が集中している。


ということで,ナレンドラ・モディが政権を担うことになるとして,彼の主張はどんなものだろうか?

伝えられるところによると,ナレンドラ・モディは反中国・反パキスタンの姿勢が強いと言われている。また,グジャラート州への企業誘致を積極的に進め,同州の経済成長を促したという功績がある。経済成長+反中国ということで,日本との友好が深まる可能性がある。

その一方で,女性の権利,地位向上に対しては疑問符がついている;

Narendra Modi as prime minister would roll back women's rights in India (by Amrit Wilson, The Guardian, April 4, 2014)

同記事によれば,ナレンドラ・モディが治めているグジャラート州では,男女比率がいびつで(男性1000人に対して女性918人,インド全体では男性1000人に対して女性940人),女児殺害件数が高い可能性がある。また,女子の就学率が全インド平均よりも低い。さらに,レイプや女性誘拐事件に対する有罪判決の比率がインドで最も低い。

先の「反中国・反パキスタン」姿勢,加えて,女性の権利への無関心が国内を不安定にする可能性もある。

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2014.04.05

アフガニスタン大統領選挙:各地で多少の混乱

先日,アフガニスタンの政治状況や大統領選について書いた(参照)が,今日がその大統領選の期日である。

Flag_of_afghanistan

The Guardianの記事によれば,無視できない程度の混乱があったものの,なんとか実施されたようである。

人口3100万人のうち,1200万人が有権者だという。そんな大量の人々が全国7000か所での投票を行うことになったが,治安の理由から900か所の投票所は閉鎖されてしまったという。

ローガル州(Lowgar)では投票所での爆発があり,4名負傷。ファーリヤーブ州(Fāryāb)では爆弾犯らしき人物が逮捕。

このほか,あちこちの投票所で有権者が殺到して長蛇の列ができ,投票用紙が品切れになったり,投票時間の延長が行われたり,と混乱があった模様。


  ◆   ◆   ◆


そういえば,この選挙では誰が立候補しているのか,という話を書いていなかった。

カルザイ大統領はすでに2期務めているので,三選禁止の原則から立候補できない。

立候補者は27名いたが,そのうち11名が立候補を認められた。この11名の中からさらに脱落者が出ており,最終的には8名で争うことになった。

その8名のうちで有力なのはアブドラ・アブドラ元外務大臣,アシュラフ・ガニ・アフマドザイ元財務大臣,ザルマイ・ラスール前外務大臣らである。

カルザイ大統領の兄,アブドゥルカイユーム・カルザイ氏も立候補していたが,ザルマイ・ラスール前外務大臣の支持を表明して撤退した。

ザルマイ・ラスール前外務大臣は,カルザイ大統領が暫定政府を率いていたときには安全保障担当の大統領顧問を務めていた。カルザイ大統領の外遊時には必ず随行していたということであり,カルザイ大統領の側近である。まあ要するに,カルザイ大統領としては兄の立候補を取り下げさせてでも,ザルマイ・ラスール前外務大臣に次の大統領をやってほしいわけである。

アブドラ・アブドラ元外務大臣は前回の大統領選挙でカルザイ大統領の有力対抗馬となった人物である。その時は,カルザイ大統領の得票率が49.6%だったのに対し,アブドラ・アブドラ元外務大臣は得票率30%だったので,かなり強い支持を得ている。

というように,候補者の略歴や人間関係などは調べればすぐにわかるのだが,それぞれの政策などは良くわからない。アフガニスタンの大統領選では,有権者は候補者の主義主張で選ぶのではなく,人脈や出身部族や支持母体で選んでいるのではないか,と邪推しているが,どうでしょう?

アフガニスタン大統領選では,どの候補も過半数の得票を得られなかった場合,上位2名での決選投票が行われる。

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2014.04.04

「シェールガス革命」の恩恵には預かれない

某所で世界のエネルギーの概況についてお話しさせていただくので,スライドを作っている。

日本が「シェールガス革命」の恩恵に預かれるかどうかという話題もしようと思っているが,アメリカエネルギー省エネルギー情報局(DOE, EIA)のデータを見る限り,「『シェールガス革命』の恩恵には預かれない」ということになりそうだ。

アメリカの天然ガスの価格の推移を見てみよう。まず,源泉価格および輸入価格を見てみる。源泉価格というのは天然ガス田での値段である。輸入価格は主としてカナダからの輸入価格である。単位は1000立方メートルあたりの価格(米ドル)である。

Gasslide01_2

源泉価格は2012年12月までしか公表されていないが,輸入価格とおよそ対応しているので,輸入価格をみれば大体あっていると思う。

シェールガス開発が進展したのは2011年暮れから2012年初めだが,2012年4月には1000立方メートルあたり源泉価格で1.89ドル,輸入価格で2.04ドルまで下がっている。このときはたしかに「シェールガス革命」によるガス価格低下はあったといえる。

しかし,最近はどうかというと,2014年1月には輸入価格が6.94ドルまで上昇している。源泉価格も大体そんなものだろう。

今度は輸出時の価格と米国国内産業向けの価格を見てみる。

Gasslide02_2

パイプラインで輸出される価格は先ほどの源泉価格や輸入価格と同じような動きを示している。

米国内産業用の価格はいろいろと税金や手数料がかかるのかもしれないが,輸出価格より若干高めになっている。とはいえ,これから説明する液化したガス輸出価格(LNG)に比べればはるかに安い。まあ,安いといってもシェールガス革命以前の水準に戻っているのだが。

日本がアメリカから天然ガスを輸入しようとすれば,液化,すなわちLNGとして輸入しなくてはならない。

このグラフを見ればわかるように液化の手間がかかっているため,LNGとしての輸出価格は何倍にも跳ね上がっている。「シェールガス革命」の熱気があった2012年4月には8.54ドルにまで下がっていて,日本のエネルギー産業各社も大喜びだったかもしれないが,その後は乱高下。

そして2014年1月には13.7ドルにまで上昇しており,まえと変わらない状況である。

シェールガス開発が進もうが進むまいが天然ガス価格が上昇するのは,DOE(米エネルギー省)も予測していたことである。なにしろ,新興国の経済成長に伴って,石油やガスの取り合いになっているのだから。

結局,「シェールガス革命」で日本も安くガスを仕入れられるという思いは,はかない夢だったわけである。

むしろ,恐ろしいのは,日本のエネルギー多消費型産業のコンビナートが高騰するエネルギー価格に耐えられず,米国など,エネルギーの産地に出て行ってしまうのではないかということである。

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2014.04.03

香港中文大学がSTAP細胞の正しい作り方を特定?

先日の理研の調査委員会報告は,「STAP細胞の有無」に関する報告ではなくて,「Nature掲載のSTAP細胞論文に不正があったかどうか」に関する報告だった。

とはいえ,みんなが知りたかったのは,やはり「STAP細胞の有無」。

STAP細胞が無いとなれば(作れないとなれば),STAP細胞自体が嘘,論文も嘘,というようにすっきりした構図となる。

しかし,STAP細胞が有るとなれば,論文の不正は厳然として不正であるにもかかわらず,社会的には問題視されなくなり,STAP細胞作製の功績が讃えられて,小保方博士(暫定)および共著者たちの地位が再び浮上する可能性もある。

そうなるとややこしい。


  ◆   ◆   ◆


前置きはここまでにして,STAP細胞騒動をややこしくしてくれるような話が香港からやってきた:

香港中文大学,STAP細胞作製の再現に成功か」(WIRED, 2014年4月2日)

香港中文大学の李嘉豪(Kenneth Ka-Ho Lee)教授が"ResearchGate"というサイトでSTAP細胞作製プロセスを順次公開しているのだが,4月1日に

"Dear All,

I am shocked and amazed by the qPCR results for the 3 day-old control and STAP cultures. Totally speechless!

ENJOY!

The STAP Saga continues..."

という文章とともに,定量PCR分析(幹細胞のスクリーニング手法だという話)の結果を公開している。

その内容,端的に言って,STAP細胞の正しい作り方がわかったようだ,ということである。

ただし,その作り方は理研が公開しているやり方(酸に浸す処理)でもなく,ヴァカンティが公開しているやり方(酸に浸す処理+研和処理 (Trituration))でもない。

研和処理だけ,のようだ。

上述のサイトの定量PCR分析結果のグラフによれば,研和処理だけを行ったコロニーには未分化細胞のマーカーであるOct4(参考)が大量に存在することが示されている。

研和処理でSTAP細胞が作られることが分かった場合にはまた大騒ぎが起こることだろう。

李嘉豪教授が称賛されることは当然として,某ユニットリーダーが

「論文やプロトコル(作成方法)の記述が悪くてご迷惑おかけしましたが,STAP細胞はこの通り作られるのです」

とか言って開き直る可能性がある。

香港中文大学の実験結果が,日本国内のSTAP細胞騒動をさらに混乱させるかもしれない。


  ◆   ◆   ◆


【続報:2014年4月4日加筆】

その後,李嘉豪センセーはギブアップしました。

ResearchGateより李嘉豪教授の最後のコメントを引用:

Thank you all for your excellent suggestions on improving the data. Personally, I don't think STAP cells exist and it will be a waste of manpower and research funding to carry on with this experiment any further.

<中略>

I will no longer blog on this page any more. I want to get back to doing my own science interest.

スタップ細胞は存在しないと思うし,これ以上の追試はマンパワーと金の無駄だろうということ。

それはそうと,ユニットリーダー凹様が週刊新潮の取材に答えたとか。桜色のコートとヴィヴィアン・ウェストウッドのトートバッグ姿だったというどうでも良いファッション情報付き。

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2014.04.02

旬のものは旨いね

一昨日,増税前の最後のあがきとして本屋に行ったほか,スーパーにも行ったわけである。

そこで調達したのが旬の素材。

まずは筍。

Takenoko20140401

熊本産580円。たいそうご立派である。中国産の水煮よりは値が張るが,国産愛好ということで。

あとは,萩産の魚,金太郎。スズキ目の魚ヒメジの地方名である。

Kintaro201404011

萩の名物と行っても良い。15センチ程度の魚である。詳しくは「萩の金太郎プロフィール」を参照。

金太郎の旬は11月~3月だというので,旬も終わりごろではあるけれど。

これらの素材をツマに調理してもらって,昨晩賞味した。

Kintaro201404012
↑金太郎焼いたらこんなかんじ。焼いても赤く,食欲をそそる。

筍の煮物も金太郎の塩焼きも旨いとしか形容の仕方がない。やはり旬のものは良い。

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2014.04.01

【朗報】「文章のコピペは研究不正行為に当たらない」と理研がお墨付き

理研なりのエイプリルフールだったのではないかとも噂される(嘘です)STAP細胞論文に関する不正調査委員会の記者会見。

画像に関しては研究不正行為だったと認定しているけれども,長文のコピー&ペーストに関しては過失であって不正行為に当たらないと発表していた。

現在,某早大某研究室でいくつかの博士論文に文章の盗用があるとの指摘が持ち上がっているが,この案件の取り扱いに影響を及ぼすことは必定である。

「典拠を示すのを忘れました」

と言えば単なる「過失」として無罪放免になる前例ができたわけである。

博士取り消しになるかも,と思っていた方々には朗報である。

これで,アニリール・セルカン宇宙飛行士のみならず,栃木の文豪,故立松和平先生(参考)の無念も晴らされるであろう。


【ついでに】
理研の調査委員会が及び腰のような感じになっているのは,おそらく2004年の不正事件がその後,名誉毀損訴訟に発展したという前例があるからでしょう。

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増税前,最後のあがき

いわゆる駆け込み需要の状況を見ていて,「そんなにあわてて買わんでも」と思っていたのだが,いよいよ4月1日から増税だと思うと焦ってきた。

結局,3月31日,行きつけの宮脇書店に行って,気になっていた本を買いあさることとなった。

まず,これ。そのボリュームで他の文庫本を威圧する,『文語訳 新約聖書』(岩波文庫)である:

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戦前の作家はよく文語訳の聖書の章句を引用した。文語訳は作家たちをひきつけてやまない魅力があるようだ。

本書の解説にも出ているが,堀辰雄『風立ちぬ』の終章は「死のかげの谷」というが,これは本書の「詩編」からの引用である。太宰も「詩編」からの言葉「われ山に向かいて目をあぐ」を愛用した。

小生も「ヤコブ書」の言葉に目を止めたのでここに引用する:

「聴け,富める者よ,なんぢらの上に来(きた)らんとする艱難(なやみ)のために泣きさけべ」(ヤコブ書 5.1)

さて,これも買った。山本紀夫『梅棹忠夫―「知の探検家」の思想と生涯』(中公新書):

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梅棹忠夫自身が書いた本はいくつか読んだ(参考)が,第三者が梅棹忠夫を描いた本を読むのは初めてだ。著者は梅棹忠夫の弟子の一人とでも言うべき民族学者。

あとはこれも買った。原田勉『イノベーション戦略の論理 確率の経営とは何か』(中公新書):

イノベーション戦略の論理 - 確率の経営とは何か (中公新書)イノベーション戦略の論理 - 確率の経営とは何か (中公新書)
原田 勉

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神戸大の先生だが,小生は仕事の都合上,この人の『汎用・専用技術の経済分析』(白桃書房)を読んだことがある。「アーティキュレーション・ジレンマ」という言葉が記憶に残った。

今回の本では,米国流コーポレート・ガバナンスではイノベーションを生みやすいビジネス環境を構築できないことを指摘している。


…というわけで,消費税増税騒動が収まるまでは新しい本を買わずに,今回買い貯めした本と,読んでなくて放置してきた本を読みふけってみようと思う。

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