4月10日は『グレート・ギャツビー』の発売日
F・スコット・フィッツジェラルドが執筆し,後に20世紀最高の文学の一つに数えられることとなった『グレート・ギャツビー』 ("The Great Gatsby")は1925年4月10日,チャールズ・スクリブナーズ・サンズから発売された。

↑初版本の表紙 (Source: Wikipedia)
いろいろと翻訳が出ているが,書名が『グレート・ギャツビー』だったり,『グレート・ギャッツビー』だったり,『華麗なるギャツビー』だったり,少しずつ違う。小生は光文社古典新訳文庫版で読んだ。装丁が綺麗ですからね。
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語り手はニック・キャラウェイ (Nick Carraway)というイェール大卒の物静かな青年である。第1次世界大戦に従軍した経験がある。今は証券会社で働いており,隣にギャツビーの大邸宅がある。
ジェイ・ギャツビー (Jay Gatsby)は謎の若い大金持ちであり,毎夜豪華なパーティーを催している。ニックは,この人物と知り合い,その謎に少しずつ迫っていくわけである。
この小説,訳がいいのかもしれないが,すんなり読めてしまう。しかし,それゆえに,いったいどんな話だったのか,と人に説明するのが難しい。一途な恋のために虚栄を張った男の話,と簡単に片づけられない。時代の空気が描かれている,というように述べるのもなんだか簡単すぎて良くない。
いったい何の話だっけ,と再読して,1922年のアメリカの上流社会に没入し,そして読後には,やはり何の話だっけ,と自問する,そういう不思議な小説だ。
原文は"Project Gutenberg Australia"で読める: "The Great Gatsby"
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コメント
「爛れた生活おくっていても心は純なのよ」がテーマと思って読めば「はあ、そうですか」で終わってしまうところなのですが、肝は語り手の青年が(そしてギャツビーが)戦中派だと言うところではないでしょうか。
「偉大なる/華麗なる」19世紀の残照を少年時代に浴び、第1次大戦に出征し、戦場感覚を保ったまま復員する。ニックの慎重で的確な観察眼は「索敵」を思い起こさせます。大岡昇平や武田泰淳らの戦後文学にもそんな肌触りがありました。
ギャツビーにとって何がリアルだったのか。虚飾に満ちた現在なのか凄惨な戦場体験という過去なのか、最愛の女性とのあり得たかもしれない未来なのか、分裂の中をさまよい最後に雨の中の寂しい葬儀に帰結する話の筋書きは要約するに難しい。分裂がテーマなわけですから。それを「蚊帳の外」に立つ青年の目を通して描くこの小説、一気に読ませる力があると思います。
投稿: 拾伍谷 | 2014.04.10 18:19
短文ながら見事な批評ですね。「分裂をテーマとしている」とか,ニックの観察眼は「索敵」を想起させるとか,なかなか鋭いと思いました。
確かに戦争経験というものは小説の意図,構成,記述などに強い影響を与えるのでしょう。
水木しげるが,戦後しばらくは,困窮している人を見てもかわいそうに思わなかった,という話をしていたのを思い出しました。
投稿: fukunan | 2014.04.11 12:16
フィッツジェラルドの世代はロスト・ジェネレーションの一言で語られがちですが、メンバーを見ますと多士済済の感がありますね。
ふと、ラヴクラフトが生没年も活動期間もほぼフィッツジェラルドと同じことに思い当りました。幸福とはにわかに言い難い人生を生きたところも似ています。対照的な二人ですが、両者の作品、なぜか近しいものを感じてしまったり。
ミスカトニック大学の極地探検計画に金と退屈を持て余すギャツビーが出資して…なんて小説を想像するのも一興でしょうかね。
投稿: 拾伍谷 | 2014.04.11 13:11