(続)『背信の科学者たち』は予言の書か?
先の記事でも述べたが,STAP細胞騒動に関連して『背信の科学者たち』を再読しているのだが,第4章「追試の限界」の冒頭の文もなかなかいいことを書いている:
科学における欺瞞が新聞の見出しを賑わすたびに,科学界のお偉がたは常に何らかの”腐ったリンゴ”説をもち出す。データ捏造者は精神的なプレッシャーに弱かったとか,強いストレスの下にあったとか,あるいはまた精神的に混乱状態にあったなどと結論づける。その言外の意味は,すべて責任は科学にではなく,罪を犯した個人に帰すべきだという主張である(『背信の科学者たち』,93ページ)
もし,どのような小さな欺瞞でも,研究者の社会への仲間入りを熱望するあまり,心の平静さを失ってしまった哀れな人びとの責任に帰するのであれば,科学に自己規制力を与えているとされる種々の機構や制度については,何らの変更の必要はないことになる。(『背信の科学者たち』,94ページ)
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