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2014.01.14

ダンセイニ『ぺガーナの神々』再読:酒場詩人・吉田類も読んでいた

2年前に読み,本ブログでも紹介した(参照)ことがあるダンセイニ『ぺガーナの神々』(荒俣宏訳・ハヤカワ文庫FT)。

今回また再読した。

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きっかけは2014年1月12日付の朝日新聞読書欄「思い出す本 忘れない本」で,吉田類が紹介していたからだ。

BS-TBS「酒場放浪記」でおなじみの吉田類だが,ただの酔っ払いのおじさんではない。俳人でもあるし,画家でもある。

上述の朝日新聞読書欄で,吉田類は「ペガーナの神々」の世界と生まれ故郷の高知の山村での体験とを重ね合わせた面白い話をしている。

この人も読んでいたということで少しだけ再読したのだが,やはり面白いファンタジーである。

以前のブログ(参照)に書いた内容と重複するが,『ぺガーナの神々』の世界構造についてちょっと書いてみる。


  ◆   ◆   ◆


いつだかわからない大昔,<宿命 Fate>と<機会 Chance>とがサイコロ勝負をし,勝者が創造主マアナ=ユウド=スウシャイ MANA-YOOD-SUSHAIに,遊び道具として神々を作るよう依頼する。

マアナ=ユウド=スウシャイは神々と鼓手スカアル Skarlを作った。マアナ=ユウド=スウシャイと神々とスカアルとが居るのがぺガーナという場所。

マアナ=ユウド=スウシャイは神々を作った後疲れてしまい,スカアルの敲く太鼓の音を聞きながら寝入ってしまう。

創造主の寝ている間,神々は手慰みとして世界を創造する。キブ Kibという神によって人間は作られたが,キブをねたむムング Mungという神によって死ぬ運命となる。

マアナ=ユウド=スウシャイはいずれ目を覚ます。そして神々と世界とを一掃する。つまり神々も世界も人間もいずれ滅びるはかない存在に過ぎない。


  ◆   ◆   ◆


以前のブログにも書いたが,この世界も神々もいずれ滅びるはかない存在だという話はヒンドゥー教の世界観に似ている。

先月紹介した J.ゴンダ『インド思想史』によれば,人類の歴史は「世期」という単位で計られる(ゴンダの言う「世期」は神々のユガ,マハーユガのことだろう)。その長さは432万年である。そしてその1000倍,43億2000万年が宇宙の根本原理であり創造主である梵(Brahman)の半日(kalpa,劫,昼)にあたる。

マアナ=ユウド=スウシャイと梵とは非常に似ていると思う。

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ちなみに梵も永遠ではない。梵の劫=昼(kalpa)と夜とが36000回繰り返される,つまり梵にとっての百年が経過すると,梵も生涯を終える。

『インド思想史』とは別の本によれば,梵が生涯を終えるとき,梵は自身の夢の中に溶け込むのだという。


  ◆   ◆   ◆


吉田類の記事で面白かったのが,『ぺガーナの神々』の冒頭で神々が次々に登場する所について,

『古事記』上巻で,ビッグ・バンみたいに次々と神々が誕生する「神生み」のシーンと似ていなくもない。(吉田類,2014年1月12日,朝日新聞読書欄)

と述べているところである。たしかに。

この吉田類の指摘で思い出したのが,キブによって作られた人間が,ムングの妬みによって死ぬ運命となるところ。構図がだいぶ違うが,死んだイザナミによって人間が死ぬ運命を背負ったのと似ている気がする。

古事記・ミーツ・ヒンドゥーイズムという感じ?


  ◆   ◆   ◆


ハヤカワ文庫から出ている荒俣宏訳『ぺガーナの神々』は実は『ぺガーナの神々』と『時と神々』の2部構成となっている。

原文(英語)はグーテンベルクプロジェクトで公開されているので,英語で味わいたい人は読んでみたらどうでしょう?:

『ぺガーナの神々』:"The Gods of Pegana"
『時と神々』:"Time and the Gods"

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コメント

ラヴクラフトが大きな影響を受けた作家ですね。
粗筋をさらっと聞いただけでも魅力的だなと思えます。

投稿: 拾伍谷 | 2014.01.15 01:22

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