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2013.12.10

小澤祥司『エネルギーを選びなおす』を読む

最近,山口県内で「スマートコミュニティ」推進の相談を受けることが多くなっている。昨日もスマートコミュニティに関する会議のため山口県の東端まで出かけてきた。

あちこちの自治体で「スマートコミュニティの推進」が掛け声のように叫ばれているが,そもそも何故,スマートコミュニティが必要なのか? その理由を教えてくれるのが小澤祥司『エネルギーを選びなおす』(岩波新書)である。今年の10月に刊行された。

エネルギーを選びなおす (岩波新書)エネルギーを選びなおす (岩波新書)
小澤 祥司

岩波書店 2013-10-19
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大規模発電所は「規模の経済」により比較的廉価で電力を提供できる。しかし,電源と消費地が分離しているため,発電の際に生じた排熱は無駄に捨てられてしまう。また,大規模集中設備は災害などで停止した場合の被害が甚大である。

家庭など,消費地で(オンサイトで)分散して発電あるいは熱電併給を行うようにすれば,エネルギーは無駄なく消費されるかもしれない。しかし,分散した設備の維持には莫大な費用が掛かるだろうし,設備の稼働率や効率は大規模集中型に比べて劣るだろう。

個別分散でもなく大規模集中でもなくその中間,コミュニティサイズでエネルギーの生産・消費を行うのが最も効率が良い,というのが本書の主張である。本書では「スマートコミュニティ」という言葉は使っていないが,目指すところはそこである。


  ◆   ◆   ◆


さて,過去に本ブログを読んだことがある人は気が付いたかもしれないが,同じような主旨の新書をこれまでに3冊紹介してきた。

新しい順に並べると,まず,藻谷浩介+NHK広島取材班『里山資本主義』(角川oneテーマ21)がある。

里山資本主義  日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介 NHK広島取材班

角川書店 2013-07-10
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つぎに,田中直『適正技術と代替社会』(岩波新書)がある。

適正技術と代替社会――インドネシアでの実践から (岩波新書)適正技術と代替社会――インドネシアでの実践から (岩波新書)
田中 直

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そして,吉田文和『グリーン・エコノミー』(中公新書)がある。

グリーン・エコノミー - 脱原発と温暖化対策の経済学 (中公新書 2115)グリーン・エコノミー - 脱原発と温暖化対策の経済学 (中公新書 2115)
吉田 文和

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これらの新書に共通するのは,

  • 大量生産・大量消費を前提とする技術体系から,地球環境にやさしく,資源を大量に消費しない,高度なレベルの技術体系を確立する方向に転換しようという姿勢(適正技術
  • 環境・エネルギー・経済・福祉・防災などの諸政策を地域レベルで組み合わせ,地域経済を活性化し,生活環境を強靭化する考え方(ポリシーミックス

というようなことである。

本書で取り上げられたネタで特に『里山資本主義』と重なる主張としては「再生エネルギーの普及で国富を域外に逃さない」ということが挙げられる。

『里山資本主義』ではエネルギーの地産地消を行うことで,自治体からの「国富」の流出を食い止めようという話が出ていたが,本書では再生エネルギーの推進によって国のレベルで鉱物性燃料の輸入を減らそうという話が出ていた(『エネルギーを選びなおす』179頁)


  ◆   ◆   ◆


本書の特徴の一つとしては,「エネルギーは電力だけではない」「電力の呪縛から逃れよう」->「プラグを抜こう」ということが強調されていることが挙げられよう。

家庭では給湯・暖房需要が多いが,電気でわざわざ加熱するのはもったいなく,加熱は燃焼熱で,ということが主張されている。こうした「エネルギーの適材適所」は古くはエイモリー・ロビンス『ソフト・エネルギー・パス』で唱えられていたことである。

エネルギーの適材適所」ということで言えば,本書では,むやみやたらな太陽光発電の増加や無計画なバイオマス発電の推進を厳しく戒めている。

先ほど述べたように,家庭の給湯・暖房需要ということを考えれば,太陽光発電よりも太陽熱温水器の方が,設置面積も小さく,費用対効果が大きい。

また,バイオマスに関しても山の奥で木質ペレットを生産・輸送して燃焼・発電して暖房に回すよりも,周辺の山林からを切り出して燃焼させて蒸気や温水を利用する方が安く済む。

ここで大事なのは電力の買い取り価格にまどわされてなんでもかんでも電気に変換するのではなく,「エネルギーの適材適所」を考えることである。


  ◆   ◆   ◆


古代文明から現代にいたるまでのエネルギー利用史をコンパクトにまとめているのも本書の特色である。

本書第I部を読むと,人類は大昔からずっとエネルギーを渉猟するだけだったことがわかる(『エネルギーを選びなおす』「I エネルギー渉猟文明」)。究極のリサイクル社会と称賛されていた江戸時代においても,実際には山が丸裸になるぐらい薪がとられていたようである。

今,人類は歴史上初めてエネルギーを再生産することに挑戦しているのだ,ということが強く印象付けられる第I部である。

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