« 不幸なヴァンダル族 | トップページ | 10月20日は「もう一つの太平洋戦争」終了の日 »

2013.10.17

「ごちそうさん」が「あまちゃん」を越えたというのは本当か?→0.3%の視聴率の差に意味はあるか?

ごちそうさん」の視聴率が「あまちゃん」のそれを越えたかという疑問に対しては「多分ね」とか「そうかもね」という留保の言葉が必要だと思う。

また,どちらの視聴率が勝っているかという議論では「0.3%」にはほとんど意味がないと思う。


NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」第15回(2013年10月16日放送)の平均視聴率が27.3%(関東地区・ビデオリサーチによる)を記録し,「あまちゃん」の最高視聴率27.0%(第145回2013年9月16日)を越えた,という報道があった。

ビデオリサーチの数値はそれはそれで厳然たる数値である。だが,それを使って勝ち負け・人気不人気についてあれこれ述べるマスコミやテレビ業界の側には「標本誤差」の考え方が抜けている。わざとかもしれないが。


読者の皆さんもご存じのように,ビデオリサーチによる視聴率調査は全数調査ではなく標本調査である。関東地区では600世帯を対象として調査を行っている。

だから,関東地区(島部を除く東京都,神奈川県,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,静岡県の熱海市・伊東市)の全世帯の真の視聴率とビデオリサーチが調べた視聴率との間には統計学で言う「標本誤差」が生じる。

このことについてはビデオリサーチも丁寧に説明している:

視聴率調査について(視聴率ハンドブック) 7 標本誤差」(ビデオリサーチ)

ここに出てくる標本誤差の式に従えば,「ごちそうさん」第15回の視聴率27.3%の標本誤差は±3.6%ということになる。

念のため「あまちゃん」の最高視聴率27.0%の標本誤差についても計算してみると同じく±3.6%となる。

ここから考えると,0.3%の違いなどというのは標本誤差の範囲内にあり,番組の勝ち負けについて議論する場合には,ほとんど意味のない数値ということになる。

ビデオリサーチの調査結果をもとに何か言うとすれば,

「ごちそうさん」のこれまでで最高の視聴率が「あまちゃん」の最高視聴率と同レベルに達した

ということは言える。


こういうことを書くと,ビデオリサーチの数値に全く意味が無いかのように思えるが,そういうことではない。正確に数値を出すことには意義がある。その数値を用いて議論する場合,議論の内容によって細かい数値に意味があったりなかったりするということである。


じつは今まで述べてきたような話は,先日読んだ林知己夫の『調査の科学』(ちくま学芸文庫)にも出てくる話である。

林知己夫が「視聴率20~30%くらいのところで4~5%ぐらいの誤差は避けられない」というようなことを述べたら,業界関係者に「こちらは1%の視聴率の数字に骨身をけずっている。現実を知らぬ学者のたわ言だ」と怒られたという(参考:『調査の科学』186~187ページ)。

視聴率の細かい数値を巡って業界内で鎬を削るのは自由だし(それで大入り袋が出たり,ボーナスがあがったりするらしいが),それを用いて番組の勝ち負け・人気不人気についてマスコミが議論するのも勝手である。

だが,視聴者や新聞読者は騙されないように「標本誤差」というものを意識するべきだろう。

調査の科学 (ちくま学芸文庫)調査の科学 (ちくま学芸文庫)
林 知己夫

筑摩書房 2011-05-12
売り上げランキング : 484579

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

|

« 不幸なヴァンダル族 | トップページ | 10月20日は「もう一つの太平洋戦争」終了の日 »

映画・テレビ・芸能・アイドル」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/44485/58402306

この記事へのトラックバック一覧です: 「ごちそうさん」が「あまちゃん」を越えたというのは本当か?→0.3%の視聴率の差に意味はあるか?:

» 春子の部屋~あまちゃん 80's HITS~ビクター編 |監修・選曲 宮藤官九郎 [見つけました]
春子の部屋~あまちゃん 80's HITS~ビクター編監修・選曲 宮藤官九郎ビク... [続きを読む]

受信: 2013.10.20 09:15

« 不幸なヴァンダル族 | トップページ | 10月20日は「もう一つの太平洋戦争」終了の日 »