日本では知られていないが,フィリピン・ザンボアンガでは紛争が起きている件
日本ではほとんど報道されていないが,今,フィリピン第6の都市,ミンダナオ島のザンボアンガ (Zamboanga)では,モロ民族解放戦線ミスアリ派とフィリピン警察・政府軍との間で戦闘が繰り広げられている。
モロ民族解放戦線によって100人余りの人質が捕られたことを報じるアルジャジーラの記事: "Rebels take hundreds hostage in Philippines" (September 9, 2013, ALJAZEERA AMERICA)
ある報道ではこの争乱によって何十億フィリピンドルもの損失が生じているという:
"Billions lost in business due to Zamboanga standoff" (by Alvin Elchico, Sep. 18, 2013, ABS-CBN News)
またこの争乱のせいで,約20万人の児童が学校に通えなくなったという報道もある:
"200K students affected by Zamboanga fighting" (by Dona Z. Pazzibugan, Sep. 17, 2013, Philippine Daily Inquirer)
今回,戦闘を始めたモロ民族解放戦線ミスアリ派というのは,モロ民族解放戦線の創始者,ヌル・ミスアリを支持するグループである。モロ民族解放戦線は一枚板ではなく,さまざまな派閥がある。
1970年代からモロ民族解放戦線はフィリピン政府に対し戦いを繰り広げていた。しかし,1996年,両者の間に和平が成立した。
和平後,ヌル・ミスアリはムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)の知事として権勢をふるっていた。しかし,2001年,当時のアロヨ政権はミスアリと対立するパロウク・フシンと結託し,ヌル・ミスアリを失脚させた。
今回の紛争は,様々な利権に与れなくなったミスアリ派の積年の恨みが昂じて起こったものだと考えられる。
モロ民族解放戦線はイスラム教徒の政治組織であるため,イスラム教国の関心は高い。インドネシアでも当然,関心が高く,小生がバンドンにいるとき,海外ニュースのトップには必ずこのザンボアンガの紛争が取り上げられていた。
インドネシアは1996年の和平を仲介した。
今回もインドネシア政府は和平仲介の労をとると表明している。
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