カンボジアにおけるエネルギー消費の状況(全体像)
今日は真面目なお話。
発展途上国におけるエネルギー消費量は,経済成長とともに拡大する傾向にある※。経済成長がエネルギー消費量の拡大を促すとともに,エネルギー消費量の拡大が経済成長を促すという相互依存関係があるからである。
※先進国の場合はそうとも限らない。日本が良い例であるし,エイモリー・ロビンズ『ソフト・エネルギー・パス』によれば,デンマークでは1500年代の方が1900年代よりもエネルギー消費量が多かった(エネルギー効率が悪かったため)。
しかし,カンボジアの場合,統計値から単純に経済とエネルギーの関係を傾向を読み取るのは困難である。カンボジアでは多くの人々が,統計的に把握しがたい薪や炭などのバイオマス燃料に依存した生活をしているからである。
下の図は1995年~2011年のエネルギー最終消費(IEA推計値)を2000年~2010年のカンボジアの実質GDP(IMF推計値)とともにプロットしたものである。
カンボジアで消費されるエネルギーの大半をバイオマス燃料が占めていることがわかる。
2004年から2008年までバイオマス燃料の量が落ち込んでいるが,総量を把握しきれなかった可能性がある。
しかし,統計的に把握しやすい石油系燃料および電力に関しては年々増加している傾向がみられる。これは経済成長と共に生活水準が向上し,電化製品・自動車が普及していることが影響しているものと考えられる。
次の図は2010年におけるカンボジアとその周辺国の国民一人あたりのエネルギー消費量を示している(出典:Asian development Bank: Key Indicators for Asia and the Pacific 2013)。
タイでは年間一人あたり1841石油換算kg,カンボジアでは年間一人あたり351石油換算kgのエネルギーが消費されており,両者の間には約5倍の差がある。
ところで,2010年のタイの一人あたりGDPは9780米ドル(購買力平価),カンボジアのそれは2159米ドルであり,ここでも両者の間には約5倍の差がある。単純に考えれば,将来,カンボジアの経済が現在タイの水準にまで成長すれば,カンボジアの国民一人あたりのエネルギー消費量もまた現在のタイの水準に近づくだろうということが予測される。
そのころにはカンボジアの人々は石油系燃料と電力に依存した生活を送るようになるのだろうが,はたして,資源は足りるのか?という深刻な問題が残されている。
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