【桂ゆき装幀・挿画】花田清輝『随筆三国志』を読んでいる件
先月の初めに下関美術館で桂ゆきという画家の展覧会を見てきたわけである:「【生誕100年】桂ゆき,その60年におよぶ画業」(2013年8月5日記事)。
絵も素晴らしかったが,本の装幀・挿画の仕事も素晴らしかったので,古本で2冊ほど仕入れた。その一つが花田清輝『随筆三国志』(筑摩書房,1969年)である。
下の写真は外箱,挿絵のページ,そして本文の一部を並べたものである。
挿絵の三人の人物は公孫接(こうそんしょう)・田開疆(でんかいきょう)・古冶子(こやし)の三人,もしくは劉備・関羽・張飛の三人だと思われる。
◆ ◆ ◆
挿絵や装幀を鑑賞するつもりで購入したのだが,結局,中身も読んでいるところである。
孔明にプランニングの才を認め,曹操にはタクティクスの才しかなかったのではないかと論じた「蜀犬,日に吠ゆ」や,一見,反体制派集団であるはずの五斗米道や太平道に体制側と同じヒエラルキーがあることを指摘した「怪力乱神を語る」などの論考には知的な興奮を覚えた。
ただし,この本に収められた随筆はいずれも論旨を追うのがしんどい。タイトルや冒頭の文章から,その随筆の最も主張したいことをあらかじめ把握するのは難しい。話があちこちに展開するのを楽しみながらも,ゆっくりと着実に中心的な話題を追っていかないと,何の話をしているのかわからなくなる。
今の世の中ではこういう凝りに凝った文章を書くと怒られるのだろうな,と思う。
とはいえ,アマゾンの書評を見ると,中身,すなわち花田清輝の『随筆三国志』の評価は凄まじく高い。陳琳とか王連とか通好みの人物を取り上げていたり,天下三分の計に深い考察を加えていたりして,三国志ファンには堪らないようだ。
今は,講談社文芸文庫から出ている。
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