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2013.09.28

ニール・ブロムカンプ『エリジウム』見てきた

宇部のシネマスクエア7に出かけてツマと一緒にニール・ブロムカンプ『エリジウムを見てきた。レイトショーなので一人1200円とお得。

先日からワイアード誌の記事を読んだりして予習をしてきたわけだが(参考),想像以上に良かった。

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ストーリー良し,俳優良し,CG良し,デザイン良し,いいこと尽くめである。

現代にも通じる格差社会の拭いがたい哀愁を,理想郷”エリジウム”と荒廃した地球との対比から浮かび上がらせる(サンデーうべ・おのだ,2013年9月28日号)

スラム化した地球に住む人々は青い空に白く,月のように浮かんで見える「エリジウム」を見上げて暮らしている。エリジウムではベルサーチやアルマーニの服に身を固めた富裕層が大豪邸で暮らし,プールサイドでシャンパンを片手に談笑している。この対比が見事。

デラコート防衛長官を演じるジョディ・フォスターはなんか老けているし,マット・デイモンはブルース・ウィリスみたいになっているし,殺し屋クーガー役のシャールト・コプリーは日本刀みたいな刀をぶんぶん振り回す頭のおかしい男だし,味のある俳優ばかりで実に良い。


ワイアード誌の記事にも出ていたが,ニール・ブロムカンプの好きな映画の一つがリドリー・スコット『ブレードランナー』である。『ブレードランナー』の舞台は2019年のロサンゼルスだが,ニール・ブロムカンプ『エリジウム』の地球側の舞台も2154年のロサンゼルスである。

リドリー・スコットは未来のロサンゼルスを酸性雨降りしきるチャイナタウン風の都市として描いたが,ニール・ブロムカンプは未来のロサンゼルスを埃舞うメキシコシティ風のスラムとして描いた。どちらもありそうな未来像である。

『ブレードランナー』と『エリジウム』の共通点をもう一つ挙げておこう。デザイナーにシド・ミードが加わっているということである。シド・ミードは『ブレードランナー』において未来都市やカーデザインを手がけたが,この『エリジウム』ではスペースコロニー「エリジウム」のデザインを手がけている。SFそのものでありながら,実際にありそうなデザインは作品にリアリティを与えている。


天野祐吉が「CM天気図」(2013年9月25日,朝日新聞)というコラムで

「この映画は格差問題への恐怖アピール広告とも言えるだろう」

と述べているが,Wired Vol.9のニール・ブロムカンプの記事を読む限り,それは違う。ブロムカンプは

「『エリジウム』にもメッセージはないよ」(Wired Vol.9, 31ページ)

と笑いながら答えている。

ブロムカンプは未来社会に関する明確なビジョンを見せているだけなのである。しかも,娯楽映画としての完成度を保ったままで。

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コメント

「メッセージはない」と言うのはそちらで話題が独り歩きするのを避けた一種の韜晦ではないかと思いました。
明白すぎるほどにはっきりとメッセージ性が打ち出されていると思いますが、この作品の場合(ブラック)ユーモアがあり、また娯楽に徹する職人技が盛り込まれているのが良いですね。実際笑えない風刺ほど味気ないものはありません。公式サイトの不動産広告風「エリジウム」紹介など、とてもセンス良いなと感心しました。

作品に込められた「格差問題への恐怖」を真顔で指摘するのも大事かもしれませんが「いや口に出さなくともわかりますよ」と軽く突っ込んでおきたい気にもなりますね。こう言っても「格差問題」を等閑視するわけではなく、あくまで「言わずもがな」ということではないでしょうか。「第9地区」の監督による作品なわけだし。

投稿: 拾伍谷 | 2013.09.28 02:40

WIRED誌の記事を読んでいると,韜晦ではなく,本当にメッセージ性を拒否しているように思います。『エリジウム』と「オキュパイウォールストリート」運動を重ね合わせてしまうような現状は観客にとって不幸なことだと言っていますし。

かつて栗本薫は杉浦日向子のことを,江戸を見たまま描いている漫画家として評価していました。ニール・ブロムカンプもまた,未来を見たまま描いている映画監督なのかもしれません。

投稿: fukunan | 2013.09.29 00:53

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