英国大学の非正規雇用「ゼロ・アワー・コントラクト」問題
今日も"The Guardian"紙の見出しを眺めていたのだが,英国では"zero-hours contracts"というのが問題になっているらしい。
「ゼロ・アワー・コントラクト」というのは,特に就労時間を決めずに,雇主が必要に応じて労働者を呼んで働いてもらうという雇用形態らしい。オンコールワーカーというのと同じか?
この雇用形態は,雇主にとってはとても便利な仕組みだが,労働者にしてみれば,未来の労働と収入,例えば「来週,何時間働いていくらもらえるのか」ということがいつもわからず,常に不安定な生活を強いられるわけである。
ガーディアン紙は先月からこの問題を取り上げているらしいが,今回は大学においてこの「ゼロ・アワー・コントラクト」がやたらに使われていることを問題として取り上げている:
"Universities twice as likely as other employers to use zero-hours contracts" Half of universities and two-thirds of further education colleges use zero-hours contracts, freedom of information requests reveal (by Sarah Butler, The Guardian, September 5, 2013)
同記事によると,英国の大学では他の産業セクターに比べ,約2倍も多く「ゼロ・アワー・コントラクト」が利用されているという。
University and College Union (UCU).という組織が調査した結果,回答した145大学のうち半分以上が,そして275カレッジのうち3分の2近くが「ゼロ・アワー・コントラクト」を利用しているとのことだった。
同記事にはこんな事例が乗っていた。
コンピュータ関連の講義を担当する60歳の非常勤講師,フィリップ・ロディス (Philip Roddis)はシェフィールド・ハラム大学 (Sheffield Hallam University) に勤めていた。しかし突然,年400時間の講義時間を50時間に減らされたのち,解雇されたということである。ロディスは同大学を訴えようとしたが,予備審問で却下されたという。
フィリップ・ロディスの場合,幸いなことに,子供はすでに成長しており,家のローンも終わっているということで大惨事にはならずに済んでいる。だが,そうでなかったら,悲惨なことになっただろう。
同記事によれば,推計100万人が「ゼロ・アワー・コントラクト」という雇用形態で働いているらしい。
非正規雇用は日本でも問題だが,英国ではさらにひどい雇用形態が常態化しているということである。
直接関係ないけど,東北大学もブラック企業リスト入りしたなぁ。
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