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2013.09.05

スラヴォイ・ジジェクがスノーデン,マニング,アサンジについて語る

The Guardianを読んでいたら,ジジェクがスノーデン,マニング,アサンジらによる内部告発の意義について述べていた:

"Edward Snowden, Chelsea Manning and Julian Assange: our new heroes" As the NSA revelations have shown, whistleblowing is now an essential art. It is our means of keeping 'public reason' alive (by Slavoj Zizek, The Guardian, Sep. 3, 2013)

この文章,基本的にはカントに依拠して国家を撃つという論調である。

国家というのは公的な存在に見えるが,実際には何らかの内輪の論理・利害に基づいて行動をするわけで,世界全体から見れば実は私的集団である。

これに比べれば,一般市民はインターネットを通して世界につながり,私的集団の制約を離れ,世界的な視点で行動できるという意味で公的な存在である。

単純化しすぎたが,カント的な見方をすれば,国家と一般市民とのあいだにこういった公私の逆転現象が生じる。このあたりは次の記事が詳しい:「啓蒙とは何か―カント、公私の逆転」("Communication and Deconstruction", 2011年10月14日記事)


言うまでもないが,ジジェクが取り上げたスノーデンとは,アメリカ国家安全保障局(NSA)が国内外で諜報活動を行っていた事実をリークした人物のことである。この一連の騒動については本ブログでも2013年6月6日から4回ほど取り上げた:

これまで,ネット上の言動はどこかで監視されているのだろうな,と感じていた人々はいたに違いない。

しかし,具体的にどのようなことをどんな手段で監視していたのか,というのはスノーデンによって初めて明らかになったわけである。

では,ジジェクの弁を聞いてみよう。


  ◆   ◆   ◆


ジジェクはスノーデンの行為を"public use of reason"すなわち「理性の公的な使用」もしくは「理性の公共的使用」と呼んで支持している。

ジジェクは言う。世界秩序の代表者を僭称する者たちが,自分たちの考えた民主主義や人権を世界中に押しつけ,ITを駆使して世界秩序を乱す動きがないかどうか監視し続けているのが我々の置かれた現状であると。

そして,「理性の公的な使用」の余地がどんどんなくなってきていることを我々は恥じるべきであると。

"What we should be ashamed of is the worldwide process of the gradual narrowing of the space for what Kant called the 'public use of reason'." (Slavoj Zizek)

また,ジジェクは言う。我々のプライバシーが失われることが危険なのではなく,我々の個人的な秘密が「ビッグブラザー」に曝されることが危険なのであると。

"What makes the all-encompassing control of our lives so dangerous is not that we lose our privacy, that all our intimate secrets are exposed to Big Brother." (Slavoj Zizek)

現在,大量の個人情報が国家によって収集されているが,それは膨大過ぎて情報機関のコンピュータをフル活用しても処理しきれないほどである。すると場合によってはコンピュータ・プログラムのバグによって,普通の市民がテロリストと誤認される可能性もある。なぜテロリスト判断されたのか,理由もわからずに。

"Without knowing why, without doing anything illegal, we can all be listed as potential terrorists." (Slavoj Zizek)

我々は,情報機関が我々の秘密を全て把握していることを恐れるだけでなく,情報機関が我々の秘密を間違って把握することをも恐れるべきである。

"we should fear that we have no secrets, that secret state agencies know everything, but we should fear even more that they fail in this endeavour." (Slavoj Zizek)


こういう国家による「理性の私的な使用」が蔓延しつつある状況下で,スノーデン,マニング,アサンジらが内部告発を行ったことは,「理性の公的な使用」として支持するべきことであるとジジェクは主張する。

もちろん,アメリカだけを糾弾するべきではなく,その他の国も「理性の私的な使用」に関して追及されるべきである。ロシアや中国でもスノーデンが登場するべきであるとジジェクは言う。

"We need Mannings and Snowdens in China, in Russia, everywhere." (Slavoj Zizek)

最後にジジェクは内部告発者たちを保護し,彼らのメッセージを拡散する国際的ネットワークの必要性を唱えて,内部告発者たちを称賛して文章を締めくくっている。

"we need a new international network to organise the protection of whistleblowers and the dissemination of their message. Whistleblowers are our heroes because they prove that if those in power can do it, we can also do it." (Slavoj Zizek)


   ◆   ◆   ◆


以上がジジェクの弁の要約である。

外交やインテリジェンスの専門家(プロ)から見たら青臭い議論だと思うだろう。

しかし,プロが自分たちの従っている枠組みや依拠する規範・倫理を盲信するのは危険な話で,自分たちがやっていることは実は「理性の私的な使用」にすぎないと醒めた目でみることは必要だろうと思う。

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