古事記編纂1301年の今,何から読み始めるべきか?
久々に日本神話に関わる話をしよう。
昨年は古事記編纂1300年ということで古事記に関わる様々な本が書店に並んだ。小生もいくつかの本を紹介した。
今年は1301年目ということになり,日本神話ブームが終わったかと言うと,実は重要イベントが二つあった。
一つは60年に一度の出雲大社大遷宮。
もう一つは20年に一度の伊勢神宮式年遷宮。
こうしたイベントをきっかけに,掛けまくも畏き神々の世界について興味を持ち始めた人も多かろうと思う。そういう人は何から読み始めたらよいだろうか?
◆ ◆ ◆
古事記をやさしく書き下した本は非常にたくさんあるが,小生としては次の2種類の本を薦めておきたい。
一つは武光誠『一冊でわかる古事記』(平凡社新書)である。
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なぜ,これがおすすめかというと,わずか一冊で神々の誕生から平群氏衰亡まで古事記上中下巻の全貌を理解することができるからである。
神々・天皇家の系図や大和,出雲の歴史地図(豪族の勢力範囲だとか履中天皇の逃走経路だとか)など各種説明図が必要に応じて掲載されていて,理解しやすい。
小生が何よりも感心したのは,イザナミ,イザナギが契りを結ぶにあたって,柱の周りを回ったことについて,ちゃんと解説していることである。結婚の際に柱を回るミャオ族の伝統だとか,男性神は右回りと左回りのどちら選ぶべきかとか。今までの入門書でここまで踏み込んだものは見たことがない。
◆ ◆ ◆
こういう様々な知識を得たうえで挑戦してほしいのが,以前にも紹介した,こうの史代『ぼおるぺん古事記』(平凡社)である。
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本書では古事記上巻の内容がほぼ完璧に原文通りに表現されている。
セリフなど原文そのままで書かれているので,初心者にはハードルが高いかもしれないが,絵を見れば,何が書かれているかすぐわかる。
原文のリズムにも触れることができるので,何度も繰り返してよむべき本だと思う。古事記研究の中上級者になっても読むに耐える三冊本である。
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