レイモンド・マンゴー『就職しないで生きるには』を読む
カンボジア出張中に読んでいた本がこれ:
レイモンド・マンゴー著(中山容訳)『就職しないで生きるには』(晶文社)
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原著は
Raymond Mungo: "Cosmic Profit: How to Make Money Without Doing Time" (Atlantic Little Brown, Boston, 1980)
というのだが,絶版になっているようだ。
日本語版のタイトルだけ見ると,働かずに社会に寄生して生きるためのハウツー本のように見えるのだが,そんな内容ではない。
本書は
「やって楽しいことをやりつつ,心の奥底で自由に生きていられるようにしてくれるなにか。そんなことをやりながら,なおかつ生計がたつ道をひらいてくれるなにか」(11ページ)
を追及する旅の記録である。。
舞台は1970年代終わりのアメリカ。その10年ほど前にベトナム戦争反対運動やらパリ五月革命やら世界にカウンターカルチャーが広がっていた。その後を受けてニューエイジ運動が盛り上がっていたのがこの本で描かれている時代である。
レイモンド・マンゴーは誰かに従って働くということを嫌い,友達と一緒に本屋兼出版社:モンタナ・ブックスをシアトルで始めた。経営は良かったり悪かったりだったが,『乾燥しよう,気に入りますよ』とか『みることの技術』とか,ベストセラーを送り出すのに成功したこともある。その顛末が描かれているのが第1章「小さな本屋さんをはじめた」。
ストーリーじみたものがあるのは第1章だけで,第2章以降は,ニューエイジっぽい様々な新興企業を訪ね歩く旅が描かれている。
自然食品や天然石鹸や東洋宗教やラジオ局や週刊新聞社。それまでにはなかった新たなビジネスが誕生している。いずれも既存企業に就職するという道を選ばず,自らの信念に従ってニュービジネスを立ち上げたという事例である。
有名どころでは「ビルケンシュトック」が出てくる。
レイモンド・マンゴーはこの靴によって救われたと公言している。
そういえば,小生もこれを履いている↓。ほんとにいい靴である:
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…それはともかく,嫌な仕事を唯々諾々としてこなすのが嫌だったら,そして生きがい,つまり根源的利益を追求したいのなら,起業しよう! こういう姿勢はホントに大事だと思う。
今や終身雇用制も崩れたし,みんな一事業主として生きていくのがいいんじゃないかと思う。好きなことだけやってて世の中渡りきれないとは思うが,チャレンジしなければ余計ひどい目に遭う世の中になってきた。昔よりも今の日本人の方が,この本のメッセージを受け止めることができる状況に置かれているのではないだろうか?
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