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2013.07.30

マラカンド野戦軍

政治家,文筆家としてしられるサー・ウィンストン・チャーチルは若いころ,インドやアフリカなど,各地で戦っていた。

その時の記録の一つが『マラカンド野戦軍』である。インド北西部でのパシュトゥン族との戦いを描いている。

Gutenberg Projectでは公開されている("THE STORY OF THE MALAKAND FIELD FORCE")が,邦訳は見当たらない。

大政治家の戦記ということに詩情を感じた小生は,少しずつ読みながら訳してみることにした。

英語に堪能なわけでもないので多少の誤訳もあろうと思うが,とりあえず第1章分の訳文を公開してみる:

「Malakand-field-force-01.pdf」をダウンロード

チャーチルは巧みな文章を書いているのだが,日本語に直すのは難しい。

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2013.07.27

併せて読めば,効果倍増:『里山資本主義』と『適正技術と代替社会』

先日長々と,

藻谷浩介+NHK広島取材班『里山資本主義』(角川oneテーマ21)

を紹介したのだが,今日は短めに。

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『里山資本主義』が目指すところと,以前紹介した『適正技術と代替社会』が目指すところとは同じである。


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どちらも,大量生産・大量消費を前提とする技術体系から,地球環境にやさしく,資源を大量に消費しない,高度なレベルの技術体系を確立する方向に転換しようという姿勢を見せている。

発展途上国だからこそ,田舎だからこそ生み出せる適正技術。インドネシアだからこそ,山陰山陽地方だからこそ踏み出せる代替社会への道。

今,技術についてのみ述べたが,「里山資本主義」は環境問題,資源問題だけを解決するシステムではない,経済・福祉の問題解決も合わせた「ポリシー・ミックス(政策統合)」的問題解決システムである。

ポリシー・ミックスとは環境・経済・福祉といった諸政策を個別ではなく統合して扱うことである。

このあたりは一昨年,「『グリーン・エコノミー』を読む」という記事で紹介した。

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『グリーン・エコノミー』では,

「エネルギー環境政策と産業雇用政策を連携して,人減らしのための省力化投資よりも省エネルギーと再生可能エネルギーの開発,利用を推進する政策により雇用を増やす」(258ページ)

という政策が提案されていたが,これは発展途上国や先進国の田舎でこそ,真価を発揮するポリシー・ミックスであり,「里山資本主義」に他ならない。

三冊まとめて読めば,効果三倍。

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2013.07.25

藻谷浩介+NHK広島取材班『里山資本主義』を読む

7月15日…だと思うが,生パスタの店「TRATTORIA SUNMARUNO(トラットリア サンマルノ)」で食事をした後,宮脇書店に寄って買ったのが,この本,『里山資本主義』(角川Oneテーマ21)である。

ものすごく売れているようで,宮脇書店でも平積みの山が無くなる寸前で,小生が手にしたのは最後の一冊だった。

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NHK広島放送局が中国地方5県限定で「フェイス」という番組を作っている。

その拡大版である「フェイス グランデ 『里山資本主義』神様をいかせ 」(2012年11月2日)や「フェイス グランデ 里山資本主義 若者は"放棄地"を目指す 」(2012年6月22日)という特集で放送されていた内容を再編集し,『デフレの正体』でおなじみの藻谷浩介氏の論考を加えたのが本書である。

ちなみに藻谷浩介氏には2度ほどお目にかかったことがある。当時は日本政策投資銀行・地域企画部の参事役でいらした。全国津々浦々,あちこちを回っておられ,日本のどこのことでもご存知という方である。各地を回るついでに家族旅行もされていたそうで,仕事と家族サービスの一石二鳥と言っておられた。

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さて,「里山資本主義」とは何か?

本の帯に書かれていた定義らしきものを引用してみる:

さとやましほんしゅぎ【里山資本主義】[名] かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで,原価0円からの経済再生,コミュニティー復活を果たす現象。安全保障と地域経済の自立をもたらし,不安・不満・不信のスパイラルを超える。

現在主流の資本主義,すなわち,全てのものを市場に送り込み,お金という唯一の尺度で測る「マネー資本主義」とは全く異なる概念である。

「国内で生産するよりも安い」という理由で,食糧やエネルギーを輸入し消費するのではなく,手間がかかるのを承知で食糧やエネルギーの地産地消を図る,という考え方である。

こういうように書くと,江戸時代に戻るのか,という疑問が生じるかもしれないが,「マネー資本主義」の恩恵を完全に否定するものでもない。「里山資本主義」を「マネー資本主義」のサブシステムあるいはバックアップシステムとして組み込み,「マネー資本主義」への依存度を下げようというのが本書の主張である。




地方衰亡の原因

本書で紹介されている「域際収支」(176~177頁)を見ると,地方が衰えている原因がわかる。

「域際収支」というのはある地方自治体が製品やサービスを域外に売った分と域外から製品・サービスを購入した分の差額である。

本書では高知県が例に挙げられている。これを見ると,高知県は農業,漁業などの一次産品で収益を上げている一方,エネルギーや食料品など,大量の二次産品を購入することによって,域際収支を大赤字にしている。

地方自治体によって違いはあるが,地方が衰亡している原因はエネルギーや食料品などを域外に依存していることによる赤字であるということがわかる。

この赤字を埋める方法として実施されてきたのが,公共事業,工場誘致,補助金分配といった手法である。だが,何十年間もこれらの政策を実施してきたのにもかかわらず,地方の衰退は止まらない。

赤字を埋めるための新たな手は,域内の富を域外に出さない,という手である。例えば,一次産品を域内で加工して二次産品とし,域内で消費するという手である。つまり地産地消。地産地消には,さらに雇用を生み出すという効果もある。





真庭モデル,庄原モデル

「里山資本主義」の具体例として紹介されているのが,真庭モデル庄原モデルである。

真庭モデルというのは,岡山県真庭市の林業復活モデルで,本書の第1章で取り上げられている木材の徹底利用の事例である。

真庭には西日本最大規模の製材所「銘建工業」がある。ここでは年間4万トンの木屑が出るが,これをペレット化し,ボイラーの燃料としている。その結果,真庭市では域内の消費エネルギーの11パーセントを木屑(バイオマス)で賄うことに成功している。

参考動画:里山に眠る“エネルギー”(2)

建材としての木材自体にも革命が起きつつある。すでにオーストリアで利用されているのだが,Cross Laminated Timber (CLT, 直行積層材)という,木を組み合わせて接着した高強度の建材が登場しているのである。オーストリアではこの建材を利用した木造高層建築が登場している。

日本ではまだ導入されていないが,CLTは日本の林業の救いとなる可能性が高い。銘建工業ではCLTの普及を図っている。これが成功すれば,建材+バイオマスエネルギーという木材の徹底利用によって真庭の林業は勢いを取り戻し,地域経済が活性化する。


庄原モデルというのは,小生が勝手につけた名前だが,広島県庄原市で行われている福祉事業の実験である(第4章)。

庄原では社会福祉法人が,空家を地域のお年寄りが集まるデイサービスセンターとして活用している。デイサービス拠点ができることで,地元に雇用が生まれた。

また,デイサービスセンターに集まってくるお年寄りから,自作の野菜を地域通貨で購入することにより,食材費を削ることに成功した。

さらに,デイサービスセンターの隣に保育園を併設することにより,デイサービスセンターの従業者が子供を保育園に預けられるようにした。さらに,日中はデイサービスセンターに通うお年寄りが子供の相手をする仕組みも作った。




お金が無ければ知恵と手間で

真庭モデルと庄原モデルを見てわかるのは,お金が無い分を,地元の産品とマンパワーを利用しながら知恵と手間で補っている,ということである。

ある商品Xを手に入れたいとき,どうすれば良いか。一つの解決策は仕事を見つけてお金を稼ぎ,そのお金で商品Xを買うこと。もう一つの解決策は手間をかけて商品Xと同等のものを自作すること。前者は「マネー資本主義」的解決策,後者は「里山資本主義」的解決策。どちらか一方だけが正しい解決策ということはない。状況によってどちらかを選択すれば良い。

さて,その状況であるが,日本では「マネー資本主義」的解決策を選択することは難しくなりつつある。グローバル化が進み国際競争が激化している中,第1次産業ないし第2次産業でお金を稼ぐことは難しい。ものづくりの拠点はどんどん海外に移動している。第3次産業でも給与水準が低下しており,さらにTPPの結果次第では海外からの労働力が流入して,日本人が職を得られなくなる可能性もある。

とすれば,後者の「里山資本主義」的解決策を選ぶ方向にならざるを得ないだろう。ただ,やむを得ずこれを選ぶのではなく,金銭以外の新しい価値を見出し,進んでこれを選び取ることが望ましい。

実際,山口県の周防大島ではそのような傾向が,Iターン,Jターンという形で表れてきているという。ここ10年余りで周防大島の人口流出が止まった。20代から40代の人々が過疎の島に移住し始めている。都市部から周防大島に移住し,「原料を高く買って」「人手をかけて」,食品を生産・販売し,ヒットさせている事例がある。




日本の未来は「里山資本主義」に

里山資本主義を推進すると,市場に出てこない,つまり値段のつかない製品やサービスが増え,GDPを下げることになるだろう。それでは国際競争に勝てないのでは?という疑問が出てくるはずである。しかし,その考え方自体,お金を唯一の豊かさの指標とするマネー資本主義にとらわれているのに過ぎない。

国債を大量発行して,お金を市場に流し,インフレを興し,経済を活性化し・・・,というよく聞く経済政策はマネー資本主義を大前提とした解決策の一つに過ぎない。こうした従来型経済政策について藻谷氏は「近代経済学のマルクス経済学化」と揶揄しているが,詳しいことは本書の「最終総括」を読んでいただきたい。とにかく,お金を大量かつ高速回転させないと日本が衰退する,という考え方そのものが錯覚であると藻谷氏らは言っているのである。

「里山資本主義」を「マネー資本主義」のサブシステム/バックアップシステムとして静かにひそかに組み込むこと。それがやがて,例えば50年後に日本の新しい姿として結実するだろう。本書は2060年の明るい未来を描き出して終わっている。




追記
『里山資本主義』を読むとバラ色の未来が広がるような気持ちになるが,都市部の人間が田舎に入ることの難しさも忘れてはいけない。先日から報道されている山口県周南市の連続殺人放火事件なんかはその例。ただ,その例を以て,『里山資本主義』は絵空事,とするのも偏った意見である。




関連情報

里山のチカラ

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2013.07.17

セミの羽化

昨晩,帰宅して駐車場に車を止めたところ,羽化直前のセミが塀に取り付いているのを発見した。

Semiuka01

クマゼミだと思う。

たまに庭の植え込みにセミの抜け殻があるのを見つけることがあるが,羽化する直前のものを見るのは初めてである。

夕飯を食べ,9時過ぎにもう一度見に行ったところ,羽化がだいぶ進行しているのを確認した。

Semiuka02

Semiuka03

あまり光を浴びせてはいけないような気がしたので,二枚ほど写真を撮って退散。

それにしてもヒスイのようなきれいな緑色である。

珍しいものを見た。

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2013.07.16

宇部郵便局近くの生パスタの店:トラットリア・サンマルノ

たまには外食を。

ということで,月曜日(海の日)の昼,ツマとともに生パスタの店,「TRATTORIA SUNMARUNO(トラットリア サンマルノ)」に行った。

というように書くと,よく行っているような口ぶりだが,初めて行く店である。

今年(2013年)の6月9日にオープンしたばかりのイタリアンレストランである。場所は常磐町の宇部郵便局の近くである。

サンデーうべ山口宇部経済新聞の記事によれば,オーナーは丸野氏といい,東京で8年間,生パスタ専門店で働いてきた人である。祖母が営んでいた旅館の一階を改装して,この店を開いたという。

Sunmaruno

外観をみると,およそイタリアンレストランには見えないのだが,内装は白い壁と木材で構成されており,シンプルで快適な空間となっている。

休日のせいだろうか,店は満員。予約していなかったので入れるかどうか怪しかったが,なんとか席に着かせてもらえた。

頼んだのはBコース。前菜とパスタと飲み物とデザートが揃って1600円。小生はパスタとして「フグのペペロンチーノ」をチョイスした。パスタの上に焼いたフグの身が乗っており,その上にさらに唐辛子をまぶしただいこんおろしがかかっていてとても美味だった。ツマはボロネーゼのフェットチーネ。一口二口分けてもらったがこれも美味しかった。パスタは全てデュラムセモリナ粉を100%使用している。

市街地にリーズナブルな価格で本格的なパスタを楽しむことができる場所が出来たのは非常に嬉しいことだ。

休業日は日曜日,営業時間は昼11:00~14:00,夜18:00~。

結構人気があるので,今度からは予約して行こう。

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2013.07.15

美しき昭和文体:『すてきなあなたに』

雑誌「暮しの手帖」に連載されてきた小さなエッセーをまとめた一冊である。

編著者は大橋鎭子(おおはし・しずこ)。装丁や飾絵は花森安治が担当している。

毎日の生活の中で幸せに感じたこと,生活の知恵,美味しい料理のレシピなどが綴られている。

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どれもこれも読者を幸せにさせてくれるような話題ばかりだが,何よりも素晴らしいと思うのは,これらのエッセーの語り口である。

順不同でいくつか紹介しよう。

12月の章「スケーターワルツ」の冒頭部分

とても素敵なご報告を一つ。私が,あこがれのスケーターワルツにあわせて,スケートがすべれるようになったのです。
スケートをするということはこのあいだまでは,想像もしていなかったことでした。冬季オリンピックのとき,氷の上で花のように踊ったスケーターの人たちを見て,同じ人間なのに,どうして,あんなすばらしいことが出来るのかしら,と思いました…(289頁)


7月の章「台所の冒険」の冒頭部分

使いそびれたり,半端だったり,多く作りすぎて残ってしまったその残りもので,わたくしは料理のテストをいたします。
残りものだ,という気やすさもあって,このテストはとても大胆にやれます…(187頁)


4月の章「自分の作った服」の冒頭部分

このワンピース,そんなにステキでしょうか,私が作ったんです。信じて下さらないでしょうけど,本当なんです…(110~111頁)


6月の章「わが家のじまん料理」の冒頭部分

ご自分の好きなものを一つ,あなたのご自慢料理になさっては,いかがでしょうか…(147頁)


目の前の人に親しく語りかけるようなスタイルで,読み手は一瞬のうちに文章に引き込まれていく。

読む者によってはずいぶんと気取った文体のように感じるかもしれないが,このような上品な日本語の文章は最近は目にしなくなった。

独特な言い回しもある。例えば来客のあることを「お客さまをする」と言う。

かつては品格というものに価値が見出されていた。そんな時代の極上の文章がここにある。

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gleeのフィン役,コリー・モンティス急死の件

gleeの第3シリーズが7月24日(23日深夜)からNHK総合でスタートするわけだが,レイチェルとともに超重要登場人物の一人であるフィン(を演じていたコリー・モンティス)が死んだと聞いてびっくりしている(参考:CNN)。

カナダ・バンクーバーのホテルで死んでいるのが発見されたとのこと。31歳だった。

コリー・モンティス(フィン)はフェアモント・パシフィック・リム・ホテルの一室に宿泊していたのだが,チェックアウト時間を過ぎても出てこなかった。不審に思ったホテルスタッフによって遺体が発見されたという。

レイチェル役のリー・ミシェルはコリー・モンティスと交際中だったわけであるが,訃報を聞いて泣き崩れたという(参照)。

gleeファン(含小生)にとっては大ショックである。

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2013.07.12

チェンマイ雑記

先日行ったチェンマイだが,「百万の田」ランナー王国の首都だった都市である。13世紀にメンラーイ王が建設した。メンラーイ王自身はこの年には住まず,チェンラーイに住んでいたそうである。

下の地図はチェンマイの道路と河川・堀の略図である。右側の道路と堀で四角く囲まれた範囲が旧市街である。

Chiangmaimap

旧市街は堀だけでなく煉瓦壁にも囲まれており,都城だったことがわかる。

地図上の"T"は都城の東門(Tha Phae Gate)跡である。

Thaphaegate


チェンマイではインペリアル・メーピン・ホテルに泊まった。上の地図では"M"で位置を表している。

メーピンホテルはやや古いが立派なホテルである。リーズナブルな価格で泊まれる。ネット環境も整っている。小生が泊まった時には,大勢の中国人観光客が押しかけていた。もちろん欧米人(ファラン)や日本人の観光客もいた。

メーピンホテルの裏側にはビアバーが立ち並んでいる。日中はこんな感じで閑散とした有様である。

Maepingbackside

メーピンホテルからさほど遠くないところにいくつかの市場がある。

夜に賑わうのが,上の地図で"N"という記号を付したオレンジ色の四角部分でナイトバザーと呼ばれるところである。白人(ファラン)の観光客が大勢練り歩いている。

Chiangmainightbazar01

Chiangmainightbazar02

売っている物はファラン目当ての土産物やパッチモンばかりである。あまり買いたいとは思わない。

Chiangmainightbazar03

上の地図で"A"という記号を付したオレンジ色の四角部分はアヌーサン・マーケット(Anusan Market)と呼ばれる,露店が集合しているところ。ここもファランが大勢来る。

上の地図で"W"という記号を付したオレンジ色の四角部分はワローワット・マーケット(Warowat Market)と言い,わりと現地の人たちでにぎわう市場である。果物など食材が豊富である。ここではドライフルーツを買った。

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東南アジアに行くたびに思うのは,果物が豊富であることだ。「寝ててもバナナが口に入る」というのは冗談だが(※),普通に暮らしていけば,飢えることはあまりなさそうである。


※梅棹忠夫『東南アジア紀行(上)』(中公文庫)122頁参照

東南アジア紀行 (上巻) (中公文庫)東南アジア紀行 (上巻) (中公文庫)
梅棹 忠夫

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2013.07.11

Hard-nosed Thai したたかなタイ

先日,チェンマイから帰ってきたところだが,チェンマイ滞在中に読んだのが,柿崎一郎『物語 タイの歴史』(中公新書1913,2007年)である。

物語タイの歴史―微笑みの国の真実 (中公新書 1913)物語タイの歴史―微笑みの国の真実 (中公新書 1913)
柿崎 一郎

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以前,読んだもののいろいろと忘れていることが多かったので今回再読した。やはり現地で現地の歴史を学ぶと頭に入りやすい。


  ◆   ◆   ◆


16世紀後半,ナレースアン王はビルマのタウングー朝に隷属していたアユッタヤー朝を復興し,独立させた。

アユッタヤー朝復興以降,ビルマの再侵攻や王朝交代など変遷があったものの,基本的には現在のタイにつながる歴史の流れは,ナレースアン王に始まったと言ってよい。タイの国技ムエタイを創設したのもこのナレースアン王であるという。

ナレースアン王によるアユッタヤー朝復興は1574年で,日本では織田信長が伊勢長島一向一揆を滅ぼした頃である。

アユッタヤー朝は貿易国家として栄えるが,18世紀後半に王族同士の争いで力が衰える。

そして,ビルマにコンバウン朝が勃興すると,アユッタヤー朝はコンバウン朝に脅かされるようになる。

1767年にはビルマのシンビューシン王によって,首都アユッタヤーが陥落,アユッタヤー朝は滅亡した。日本では田沼意次が側用人として頭角を現してきた頃。

しかし,アユッタヤー陥落後半年程度で,華人系地方領主タークシン(鄭信)が登場し,旧アユッタヤー朝の領土を回復。タークシンはトンブリーの地に都をつくり,トンブリー朝を立てた。

タークシンは10年ほどで現在のラオス,カンボジアを含む広大な領域を征服した。しかし,後年,奇行が目立つようになったため,腹心だったチャオプラヤー・チャックリー将軍によって処刑される。

チャオプラヤー・チャックリーはトンブリーからチャオプラヤー川を挟んで対岸の地に新たな都を築いた。これが現在のバンコク(クルンテープ)である。チャオプラヤー・チャックリーはラーマ1世として即位した。これが現在も続くチャクリー朝(ラッタナコーシン朝)である。1782年のことであり,日本では天明の大飢饉が起こっていた。


  ◆   ◆   ◆


Flag_of_thailand_1855
(1855年~1916年のシャム(タイ)王国国旗)

ということで,現在のタイの王朝に至るまでの歴史を振り返ったわけだが,アユッタヤー朝から現在に至るまで,タイの政治的な動きには特徴がある。

物語 タイの歴史』の終章で,著者柿崎一郎はこのように書いている:

「タイは有能な人物を誰でも登用し,大国の勢力をうまく拮抗させてバランスを取り,しかも大国と運命をともにせざるを得ないときにはより有利なほうを見極めてから選択したのであった。」(285頁)

まず,アユッタヤー朝復興以来,タイの為政者は外国人であろうと有能であれば積極的に登用していた,ということにタイの歴史の特徴がある。

日本でも有名な山田長政はアユッタヤー朝で登用され,オークヤー・セーナーピムックという最高位の欽賜名を得た。

コンスタンティン・フォールコンというギリシャ人もアユッタヤー朝で登用され,外交を一手に引き受けた。

チャクリー朝でもチュラロンコーン大王(ラーマ5世)による近代化政策(チャクリー改革)の中で,大量の外国人専門家が招聘された。

そもそもタークシンもラーマ1世も中国人の血をひいており,タイ社会では民族的出自はほとんど問題にされなかった。能力主義というのが,タイのいいところである。

つぎに,近代に入って,列強間のバランスを利用して国家の生き残りを図ったというところにもタイの歴史の特徴がある。

アユッタヤー朝ではポルトガルの圧力をかわすためにオランダを利用したり,オランダの圧力をかわすためにフランスを利用したりと,バランス外交を行った。

チャクリー朝でもフランスとイギリスの双方の影響を拮抗させることにより,植民地化を防ぐ努力を続けた。

第1次世界大戦では,ぎりぎりまで参戦せず,1917年4月のアメリカの参戦を機に,連合国側での参戦に踏み切った。結果として戦勝国となったタイは,かつてフランスとの間に結んでいた不平等条約の撤廃に成功する。

第2次世界大戦では,日本と米英を天秤にかけ,初期はやむを得ず日本側に付いたという体裁で,フランス領のカンボジアやラオス,イギリス領のビルマ・シャン州に積極的に進出し,失地回復(これらの地は近代以前はタイ王国の領土だった)に努めた。

日本側が不利になると,表立っては日本との対立を避けつつ,「自由タイ」という親連合国組織を通じて連合国側と連携を始めた。日本が敗戦すると,日本側に立って連合国に宣戦布告したことを無効にしてしまい,敗戦国の立場を逃れることに成功した。

このように,タイは烈しい国際競争の中でしたたかに振る舞い,大国を手玉にとって生き残ってきたのだった。

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(現在のタイ国旗)

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2013.07.09

『カンニング・スタンツ』面白いよ

サワディーカップ。チェンマイから帰国いたしました。

チェンマイにいる間に,『カンニング・スタンツ』が更新されていた。

カンニング・スタンツ』は「楚漢戦争」,すなわち,秦王朝滅亡後の覇権を巡って項羽と劉邦との間で繰り広げられた戦いを描いたWeb漫画である。作者は十段氏。

いわゆる「項羽と劉邦」ものだが,季布(きふ)が主人公というのが同時代を描いた他の漫画や小説と違うところである。

陳勝のモデルが高田延彦で,やたらに「お前,男だ」と言ったり,陳勝を推戴した三老の一人がソフトバンクの王会長だったり,広陵の豪吏・召平というマイナーキャラのモデルがプロ野球選手の田口壮だったり,プロレス・プロ野球由来のキャラが続出する。遊び心豊かな作品である。

ふざけているだけかと思うと,典拠がちゃんとした人物造形も行われている。

張良は『カンニング・スタンツ』の中では女性のようなキャラとして描かれているが,これは司馬遷の「婦人好女の如し」という発言に基いている。張良は古来から髭のない,なよっとした人物として描かれることが多い。

通常,「項羽」として知られる西楚の覇王・項籍は重瞳(双瞳)の人物として描かれているが,これも資治通鑑などの記述に基いている。

『覇記』が全然更新されないので,『カンニング・スタンツ』を楽しむほかない状況である。


『カンニング・スタンツ』を読んで気分が高揚した人は,歴史シミュレーションゲーム『新史記』をプレーすると良い。

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2013.07.03

今度はチェンマイに行くわけで

明日,チェンマイに行くことになった。


800pxflag_of_thailand_svg


全然実感がない。

考えてみれば,カンボジア,ラオス,カンボジア,ラオスとタイの周辺国を回り,マレーシア,インドネシア,マレーシア,インドネシアと赤道直下の国々を回り,東南アジア各国を相当な回数訪問したと思っていたのだが,肝心のタイに入国していないことが分かった。

つまり今回が初タイということになる。しかし,バンコクには寄らず,いきなり古都チェンマイ。

百万の田と百万の象の帝国:失われたラオ人の帝国」という記事を前に書いたことがあるが,チェンマイはかつては「百万の田の国(ラーンナー)」の首都だった。

Lanexang

(ラーンサーン王国とラーンナー王国の勢力圏。赤い線は現在のラオス人民共和国の領域)


ラーンナーの王朝は現在のラオスの前身である「百万頭の象の国(ラーンサーン)」の王朝と姻戚関係にあった。

ラオスの首都,ヴィエンチャンを築いたセーターティラート王(1534~1572年)はラーンサーンおよびランナー両王国の王位を継いだ。

ひょっとしたらこの王の時にラーンサーンとランナーを合わせた巨大なラオ人の帝国が誕生した可能性もあったのだが,そうはならなかった。その事情は先の記事で述べたとおりである。


……というような歴史ロマンを感じさせる文章をかいておきながら,やはり明日にはチェンマイにいるだろうという実感がわかない。

緊張感がないのもどうかと思う。荷物も詰めてないし。

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