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2013.06.24

アグニェシュカ・ホランド監督「ソハの地下水道」を見てきた件

久々に西京シネクラブの例会に行って,アグニェシュカ・ホランド監督ソハの地下水道」(2011年/ドイツ・ポーランド合作)を見てきた。

アグニェシュカ・ホランド監督はアンジェイ・ワイダの弟子。これまでに『太陽と月に背いて』や『敬愛なるベートーベン』などの映画を撮っている。また,『トリコロール』三部作のうち,『トリコロール/青の愛』,『トリコロール/白の愛』の脚本も書いている。

舞台は1943年,ドイツ占領下のポーランドの一都市,ルヴフ(Lwow,戦後はウクライナ領リヴィウ。スタニスワフ・レムの出身地である)。

主人公,ポーランド人ソハ(Socha)は下水修理と空き巣を稼業としている。空き巣に入った家に戻ってきたドイツ人をボコボコにしたりして,相当手荒な悪党である。

ある日,ソハが地下水道を点検していると,ゲットーから地下水道へと逃げ道を作っているユダヤ人たちに遭遇。ドイツ軍に密告すれば報奨金がもらえるが,ソハは悪党なので,ユダヤ人たちを匿う見返りとして一日500ズロチ(ズウォティ, zloty)ずつ金をせびることにする。

ソハにとって,ユダヤ人を匿うのは金もうけの手段にすぎずなかった。ドイツ軍やウクライナ人軍事組織によるユダヤ人狩りが熾烈を極めてきたため,また,ユダヤ人たちの金が尽きてきたため,ソハはユダヤ人たちを匿うのをやめようと考え始めるが……。

ユダヤ人救済というと,シンドラーとか杉原千畝とか,そいうった人々が有名だが,この映画では,無名の,しかもどちらかというと悪党が10人余りのユダヤ人を救う。

それだけに,普通の人間でもこんなことができる,という等身大のリアリティを感じ,主人公ソハに感情移入ができる。

ソハに匿われたユダヤ人たちは,糞尿の臭い立ちこめるような地下水道での生活を強いられているが,単に大人しく協力し合って生存しているわけではない。極限状況におかれても性の営みが続けられており,また,嫉妬や裏切りなども展開されている。人間の業を感じる。

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地下水道の情景は臭気さえ感じさせるようなリアリティがあるが,アグニェシュカ・ホランド監督へのインタビュー記事(参考)によると,ほとんどはセットでの撮影だったそうである。ただ,残りは本物の下水道での撮影で,「汚くて、狭くて、べたべたしていて状況は最悪」だったとのこと。

主人公ソハ役を演じているのはロベルト・ビェンツキェビチ。悪党に良心が兆し,懊悩する,という難しい演技を見事にこなしている。現在,45歳ということで,小生とあまり年が違わないのでびっくり。

原作はロバート・マーシャルの"In the Sewers of Lvov"。邦訳は下の本である。

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コメント

「悪の陳腐さについて」という副題を持ったアーレントの著作を思い出しました。彼女にならって言えば善もまた陳腐かつ矮小であるのではないでしょうか。
私たちは恐らく、ある日突然に自分が善であり、あるいは悪であることに気付く(気付かされる)のでしょう。「え!?俺が!?」という瞬間は、しかし避けようもなくいつか訪れる運命にある、と言っては些か黙示録的に過ぎるでしょうか。

投稿: 拾伍谷 | 2013.06.27 05:20

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