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2013.06.27

【記録更新ならず】日経平均株価のブルー・サーズデーズ

先日,「日経平均株価:ブルー・サーズデーズ (Blue Thursdays)」という記事を書いた。

日経平均株価が木曜日ごとに下落する現象についてである。

5/2 -105円
5/9 -94円
5/16 -58円
5/23 -1143円
5/30 -737円
6/6 -110円
6/13 -843円
6/20 -230円

と続いていたが,今回記録が途切れた。

今日の日経平均株価終値は前日比

6/27 +379円

ということで,今年五番目の上げ幅だった。中国市場の回復とか,ECBドラギ総裁による金融緩和継続の見通しとかいった好材料が原因。

とは言っても前日まで日経平均株価は下げ続けていたので,そろそろ反発?というタイミングだったのだろうと思う。

これで5.23ショック以降の波乱も終了か,と安堵したいところだが,7月5日には米雇用統計,7月15日には中国GDPの発表があるので,まだまだ安心できない。7月21日には参議院選挙投開票があるが,まあこれで「ねじれ解消」すれば,デフレ対策に集中でき,株価上昇には好材料になるだろう。

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2013.06.24

アグニェシュカ・ホランド監督「ソハの地下水道」を見てきた件

久々に西京シネクラブの例会に行って,アグニェシュカ・ホランド監督ソハの地下水道」(2011年/ドイツ・ポーランド合作)を見てきた。

アグニェシュカ・ホランド監督はアンジェイ・ワイダの弟子。これまでに『太陽と月に背いて』や『敬愛なるベートーベン』などの映画を撮っている。また,『トリコロール』三部作のうち,『トリコロール/青の愛』,『トリコロール/白の愛』の脚本も書いている。

舞台は1943年,ドイツ占領下のポーランドの一都市,ルヴフ(Lwow,戦後はウクライナ領リヴィウ。スタニスワフ・レムの出身地である)。

主人公,ポーランド人ソハ(Socha)は下水修理と空き巣を稼業としている。空き巣に入った家に戻ってきたドイツ人をボコボコにしたりして,相当手荒な悪党である。

ある日,ソハが地下水道を点検していると,ゲットーから地下水道へと逃げ道を作っているユダヤ人たちに遭遇。ドイツ軍に密告すれば報奨金がもらえるが,ソハは悪党なので,ユダヤ人たちを匿う見返りとして一日500ズロチ(ズウォティ, zloty)ずつ金をせびることにする。

ソハにとって,ユダヤ人を匿うのは金もうけの手段にすぎずなかった。ドイツ軍やウクライナ人軍事組織によるユダヤ人狩りが熾烈を極めてきたため,また,ユダヤ人たちの金が尽きてきたため,ソハはユダヤ人たちを匿うのをやめようと考え始めるが……。

ユダヤ人救済というと,シンドラーとか杉原千畝とか,そいうった人々が有名だが,この映画では,無名の,しかもどちらかというと悪党が10人余りのユダヤ人を救う。

それだけに,普通の人間でもこんなことができる,という等身大のリアリティを感じ,主人公ソハに感情移入ができる。

ソハに匿われたユダヤ人たちは,糞尿の臭い立ちこめるような地下水道での生活を強いられているが,単に大人しく協力し合って生存しているわけではない。極限状況におかれても性の営みが続けられており,また,嫉妬や裏切りなども展開されている。人間の業を感じる。

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地下水道の情景は臭気さえ感じさせるようなリアリティがあるが,アグニェシュカ・ホランド監督へのインタビュー記事(参考)によると,ほとんどはセットでの撮影だったそうである。ただ,残りは本物の下水道での撮影で,「汚くて、狭くて、べたべたしていて状況は最悪」だったとのこと。

主人公ソハ役を演じているのはロベルト・ビェンツキェビチ。悪党に良心が兆し,懊悩する,という難しい演技を見事にこなしている。現在,45歳ということで,小生とあまり年が違わないのでびっくり。

原作はロバート・マーシャルの"In the Sewers of Lvov"。邦訳は下の本である。

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2013.06.21

人身売買対策に関して日本は2等国扱い

6月19日,米国務省が「人身売買に関する年次報告書」を発表した。

「中国・ロシアが最低ランクのTier 3に分類された」という報道があったり,NGO「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の事務局長,鳥井一平氏が人身売買と闘うヒーローの1人に選ばれた,という報道があったりした。

しかし,それらにも増して小生が問題視しているのは,

人身売買対策に関して日本は2等国扱いされている

ということである。


人身売買に関する年次報告書」(Trafficking in Persons Report 2013, U.S. Department of State, June 2013, http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2013/index.htm)では,188か国・地域の状況を分析し,これらを次に示す4段階で格付けしている:


TIER 1
Countries whose governments fully comply with the Trafficking Victims Protection Act's (TVPA) minimum standards.

Tier 1:「人身取引被害者保護法」の最低基準を完全に満たしている国


TIER 2
Countries whose governments do not fully comply with the TVPA’s minimum standards, but are making significant efforts to bring themselves into compliance with those standards.

Tier 2:「人身取引被害者保護法」の最低基準を完全には満たしていないが,改善努力をしている国


TIER 2 WATCH LIST
Countries whose governments do not fully comply with the TVPA’s minimum standards, but are making significant efforts to bring themselves into compliance with those standards AND:

a) The absolute number of victims of severe forms of trafficking is very significant or is significantly increasing;
b) There is a failure to provide evidence of increasing efforts to combat severe forms of trafficking in persons from the previous year; or
c) The determination that a country is making significant efforts to bring itself into compliance with minimum standards was based on commitments by the country to take additional future steps over the next year.

Tier 2 監視対象国:「人身取引被害者保護法」の最低基準を完全には満たしていないが,改善努力をしている国。ただし,(1)人身売買の被害者が著しく多かったり,増加していたり,(2)人身売買対策が進展しているという証拠を示せなかったり,(3)改善努力というのが,「今後,改善する」というような将来の約束であったりするような国。


TIER 3
Countries whose governments do not fully comply with the minimum standards and are not making significant efforts to do so.

Tier 3: 「人身取引被害者保護法」の最低基準を完全には満たしていないし,改善努力も見られない国


いわゆる先進国,すなわち,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランス,イタリア,その他西欧諸国は最高レベルのTier 1に分類されている。

これに対し,日本はTier 1に入れてもらえず,Tier 2に分類されている。

「人身売買に関する年次報告書」に基づいてユーラシア各国の分類を行った結果を下に示す:

Asiancountries

この地図を見るとわかるが,韓国や台湾はTier 1,すなわち1等国,日本は2等国扱い,というわけである。これは,シンガポール,フィリピン,ベトナム,ラオス,インドネシア等,東南アジア諸国と同じレベルである。


  ◆   ◆   ◆


日本は2等国扱いされている。この結果は妥当なのかどうなのか?

この問題は実は客観的な問題と主観的な問題に分かれる。

客観的な問題というのは,人身売買に関して日本の実態はどうなのか,という事実関係の問題である。そして,主観的な問題というのは,アメリカの価値観(ものさし)で計った場合に日本はどのように分類されるのか,という問題である。

前者に関しては小生の手に余るので,ここでは詳述しない。他の論者のブログ,例えばネットゲリラの記事を見た方が良いだろう。

後者に関しては,アメリカの意図というものを感じる。最低ランクのTier 3に分類されているのは中国,ロシア,北朝鮮のほか,イラン,シリア,キューバといった国が入っている。寡聞にして小生の頭の中ではイラン,キューバといった国々と人身売買という話が結びつかない。

アメリカと価値観を共有できるかどうか,ということが,この報告書におけるランキング(というか分類)に強く影響を与えているように見える。そういう視点で見れば,韓国,台湾というアメリカの強力な支援を受けてきた国々がTier 1に分類されているのがわかる気がする。

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2013.06.19

日経平均株価:ブルー・サーズデーズ (Blue Thursdays)

誰が言ったか知らないが(カブドットコム証券の山田さんか?),個人投資家を脅かしているのが,「ブルー・サーズデーズ (Blue Thursdays)」である。

ここのところ,日経平均株価が木曜日ごとに下落する現象が続いている。とくに5月23日以降が酷い。今年のワースト3が集結している。

5/2 -105円
5/9 -94円
5/16 -58円
5/23 -1143円
5/30 -737円
6/6 -110円
6/13 -843円

明日木曜日はどうなるか?

ボリンジャーバンド(TM)とかMACDで個別の銘柄を見ていると,先週から持ち直しているような様子が見られるのだが,さて?

明日の日経平均株価は乱高下が静まったかどうかの一つの指標となるだろう。


【6月20日加筆】

結局,バーナンキがいらんことを言ったのがきっかけで,ブルー・サーズデーズ (Blue Thursdays)」の連続記録が更新されたのでした。

6/20 -230円

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2013.06.18

東百官:西郷頼母

大河ドラマ「八重の桜」に出てくる会津藩の家老,西郷頼母(さいごう・たのも)

西田敏行(探偵局長)が演じておりますが,「頼母」という名前は東百官(あずまひゃっかん)と呼ばれる,官職風の人名です。

「官職風」というのは「なんちゃって官職名」ということ。

鎌倉時代以降,「百官名(ひゃっかんな)」というのがあって,武士が,本人や先祖の官職を通称として用いることがあった。

「へうげもの」の主人公,古田織部なんか良い例。古田織部は従五位下織部正(織部助)に任ぜられたことがあるので,これを通称とした。

「百官名」は由来がはっきりしているのに対し,「東百官」は「なんちゃって官職名」なので,江戸時代の学者からはダメ出しされることがあった。でもなんとなくカッコいいと武士たちは思っていたので,ついつい使ってしまったわけである。

東百官:「頼母(たのも)」のモデルとなった百官名は,おそらく「主殿(とのも)」である。

主殿は宮内省主殿寮(とのもりのつかさ)のことで,内裏における消耗品の管理・供給が主たる仕事。長官は主殿頭(とのもりのかみ)で従五位下相当職。


さて。

西郷頼母は,会津若松城落城前に,城内での意見対立が原因で離脱。その後は旧幕府軍の一員として箱館戦争を戦い抜いた。

明治になって,藩主だった松平容保が日光東照宮の宮司となった際,西郷頼母は禰宜となった。

西郷頼母は四郎という甥を養子に迎えたが,この西郷四郎は後に,講道館四天王のひとりとなった。

なお,西郷頼母の妻子など一族21名は,頼母の最後の会津若松城登城時に自刃して果てたという。

八重役は綾瀬はるかよりも,歴史秘話ヒストリアで新島八重を演じた宝生舞の方が適役のような気がするのは小生だけだろうか?

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『オルグ学入門』を読む(終)

オルグと言うのは,労働組合でも政党でも何でもよいのだが,ある組織に,人々を引き込むための活動である。そしてまた,そういう活動を展開する人のこともオルグと称する。

活動と活動をする人の両方をオルグというので混乱が生じやすい。

そこで,以前の記事でも述べたが,本ブログではオルグ活動をする人をオーガナイザと呼ぶことにして,活動としてのオルグと区別することにしたい。

オルグ活動という言葉も左翼っぽい感じがするので言い換えたいのだが,なかなか難しいので,やむを得ず,オルグ活動という言葉のまま使用する。


さて,『オルグ学入門』について書くのも4回目となったが,今回は最終回である。残りの4章分,

第7章 感情オルグの技術
第8章 個人オルグとその技術
第9章 行動オルグの方法と文化オルグ
第10章 理論闘争の技術

を簡単に紹介する。

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  ◆   ◆   ◆


第7章 感情オルグの技術

第4章~第6章では,正統派のオルグ活動である「理論オルグ」について詳細な説明があったが,本章では,オーガナイザが,ターゲット(対象者)の感情を揺さぶることによって,組織に引き込む技術を紹介している。

感情オルグを行う場合の話し方のモデルが紹介されている:

  1. 挨拶
  2. 「われわれは何をするべきか」という問題提起
  3. 問題提起の答えとして,現実目標とそれ達成するための実践目標を提示
  4. 実践目標の達成のためには組織拡大・団結強化が必須であると述べる
  5. 現状分析によりターゲットが何によって抑圧されているか(阻害要因)を述べる
  6. 阻害要因を打破することで実践目標が達成できることを強調
  7. 帰結。「われわれがなすべきことは明白である」と宣言し,実践目標を再提示。また実践目標達成のため組織拡大・団結強化が必須であると再強調

あとは話し方のテクニックとして

  • 札かくし
  • ハーフ・トゥルース
  • 価値付与
  • 価値剥奪
  • 焦燥感

というようなものがあるということが紹介されている。

このほか,聴衆(ターゲット)を興奮させるためには,

  • ハンド・クラッパー(サクラ)の投入
  • 成極化
  • 威光暗示
  • 省略

などという演出技術を,また,問題提起の際,聴衆(ターゲット)の心を揺さぶるために,

  • 恐怖喚起
  • スケープゴート設定

などという危機強調の技術を駆使することを,著者は勧めている。


  ◆   ◆   ◆


第8章 個人オルグとその技術

オルグ活動の基本は個人を説得すること,すなわち個人オルグである。理論オルグという手を使うにせよ,感情オルグという手を使うにせよ,個人オルグというのはパーソナル・コミュニケーションの一種である。

パーソナル・コミュニケーションでは,言葉だけでなく身振り手振りなど,音声以外の言語も重要な役割を持っている。

また,パーソナル・コミュニケーションでは第一印象が重要である。ここで,ターゲットに対し,良い印象を与えることの重要性を,著者は「一期一会」「一座建立」という茶道の用語を用いて説明している。

「一期一会」というのは「相手とのその一回の出会いで,生涯を通じての親交ができるよう全力投球を行うこと」,そして「一座建立」とは,ターゲットがオーガナイザに対し好感と信頼を寄せるような人間関係を,わずかな時間の間に作り上げることを意味している。

「一座建立」のための話の進め方は,次の通りである:

  1. アイス・ブレーク: オーガナイザとターゲットの間でリラックスした関係を作る
  2. オーガナイザがターゲットにとって良い聞き役になる
  3. ターゲットが悩み事などを語るようにする

オーガナイザが良い聞き役となる,というのは,カウンセリングと類似している。しかし,オルグ活動とカウンセリングとでは,ターゲットの悩み事を解決する方向に大きな違いがある。

カウンセリングの場合は,ターゲットがターゲット自身の内面を見つめなおすという方向で悩みの解決を図る。

しかし,オルグ活動では,ターゲットの悩みを外部,すなわち社会などの改変によって解決することを目指す。そうすることによって,オーガナイザはターゲットの興味を組織活動に向けさせるわけである。


  ◆   ◆   ◆


第9章 行動オルグの方法と文化オルグ

理論オルグにせよ,感情オルグにせよ,ターゲットとの出会いの場がなければ機能しない。

そこで,オーガナイザとターゲットとの出会いの場を作るのが,行動オルグや文化オルグである。

文化オルグはオーガナイザの組織が開催する文化活動であり,この文化活動自体は中立的なものである。しかし,この文化活動を通して,次に行動オルグへとターゲットを誘導する。

行動オルグはオーガナイザの組織が主導する行動のことであり,集会やデモなどがこれにあたる。

行動オルグにはある種のカッコよさ,そして正当性が必要である。また,行動オルグには旗やスローガンのような,行動オルグを象徴するシンボルが必要である。

もし,ターゲットがこの行動オルグに参加すれば,やがて,ターゲットは行動の理由を求めるようになる。これを認知不協和という。このときが,オーガナイザにとって理論オルグや感情オルグを実施するチャンスとなる。


  ◆   ◆   ◆


第10章 理論闘争の技術

オーガナイザはターゲットとの間で論戦になった場合,理論闘争に勝たなくてはならない。また,組織の一員が他の組織からのオルグ攻撃を受けた場合,理論闘争によって,その身を守らなくてはならない。

というわけで理論闘争に勝つための技術が紹介されているのが本章である。

理論闘争では,まず,相手(ターゲットや他の組織の一員)にしゃべらせておくことが大事である。

相手の理論が,「風が吹けば桶屋が儲かる」といった類のこじつけ(ダーク・ロジックと呼ぶ)にすぎない場合,議論の各段階の妥当性,客観性をつつけば,相手の理論は崩壊する。

相手の理論が三段論法のようなしっかりしたものである場合には,相手の理論の根拠や相手の現状認識の妥当性や矛盾点について攻撃を加えることで,相手の理論を崩壊に導く。


理論闘争では,最初に相手(ターゲットや他の組織の一員)にしゃべらせておいて,あとからオーガナイザが質問して相手の理論を崩すのが鉄則だが,逆に相手からオーガナイザに質問が来る場合がある。

この場合には次のような回答テクニックが挙げられている:

  • 認識操作: 認識に相違があるので,回答できないとつっぱねる
  • 争点操作: 相手の質問をすり替えて,的外れの回答を行う
  • 前提操作: 相手の知らない事実や理論を持ち出して,それらを勉強してから質問するように,とつっぱねる
  • 次元操作: 相手と自分とでは問題の次元が違うので回答できないとつっぱねる
  • 立場操作: 相手と自分とでは立場が異なる。自分と同じ立場に立つ人物からはそんな質問は出ない,とつっぱねる
  • 戻し質問・リレー質問: 相手が自分の立場ならどう考えるか,と質問を返す
  • 本心操作: 否定的態度をとる人に対しては何を応えても無駄だと述べる

あとは,理論闘争に備えて,常日頃から組織内で模擬的な理論闘争を繰り返しましょう,という話で,本書は終わる。


  ◆   ◆   ◆


というわけで,4回にわたって『オルグ学入門』を紹介してきたわけである。
結局のところ,組織形成のための説得術だというのが大まかな感想。

組織(組合とか党派とか)形成という目的を外してみれば,本書で紹介されているテクニックは,マーケティング,セールス,交渉術など,ビジネスに役立ちそうなものばかりである。

「オルグ」という左翼っぽい名前に対する嫌悪感・警戒感を一時保留にすれば,本書はビジネスマンにとって宝の山なのではないか,と思う。

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2013.06.17

PLUS社製のA4×1/3サイズノート,Ca.Crea(カ.クリエ)

久々に近所の文房具屋"CrossLand"宇部店を偵察。

前にも紹介した会議用ノート

ユナイテッドビーズ製のB5 MEETING NOTEBOOK (ミーティングノート),NOTE-B5F-07でも買い足しに行こうと思って。

そうしたら,品切れしてんの。小生しか買わないので取扱いやめたのかもしれへん。ガッカリですわ。これからはアマゾンで取り寄せます。ありがとうございました。

…さて,それはさておき,今度は新型のノートが登場していたので注目。

PLUSが今年4月に発売した「Ca.Crea(カ.クリエ)」A4×1/3サイズである:

A4三つ折りサイズのノートで,方眼罫入り。お値段399円とやや高いが,表紙の色合いがなかなか宜しい。

このノート,ノートとしてだけでなく,別の用途にも使える。ずっと前に「どうやって紙を3つ折りにするの?」という記事を書いたが,Ca.Creaを「型」として使えば,その問題を一気に解決できる※。

今回は「ふかみどり」の奴を購入させていただきました。


※正確には,背クロスの部分をガイドとして利用して三つ折り。

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2013.06.13

加藤コミッショナー「私のことは嫌いでも…」

プロ野球のボールがよく弾むようになり,ホームランが5割増加したとかで,加藤良三コミッショナーが

「私のことは嫌いでも,NPBのことは嫌いにならないで下さい」

と発言したとかしてないとか。出典は2ch。

冗談はさておき,なんで今まで伏せていたのかな~と思ったのだが,長嶋・松井の国民栄誉賞に水を差してはいけない,という大人の配慮があったのでは,と想像してみる。

良く考えたら,小生,清水の生まれなので,野球のことよく知りませんでした。素人がいらぬ心配をしてすみません。


国民栄誉賞ついでで思い出したが,三浦雄一郎氏の偉業にはなんで国民栄誉賞出ないんですかね?

三浦雄一郎氏が70歳でエベレスト登頂した時には小泉純一郎首相から総理大臣表彰を受けたので,下村文部科学大臣の言うようにそれ以上のものがあってしかるべきだと思うんですが。別の賞を新設する理由は? 政治的配慮とか?


【追記】
加藤良三コミッショナーは元駐米大使。大の野球好き。ご令室は法眼晋作元外務事務次官の次女。コミッショナーは週一回の通勤で月給200万円(参考)だそうで。いいなあ。

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『オルグ学入門』を読む(3)

今日は,「理論オルグ」に関する3つの章(第4章~第6章)を読む。

一昨日の記事では組織化活動(オルグ活動)にもいろいろあることを述べたが,組織化活動の中核ともいえるのが,理論オルグである。そのため,本書では理論オルグについて3つもの章を割いて議論している。


  ◆   ◆   ◆


第4章 理論オルグと訴求力

理論を道具にして,ターゲット(対象者)を説得し,組織に引き込む技術,これを理論オルグという。

理論オルグは正統派の組織化技術である。相手の弱みを握って組織に引き入れるやり方は効果的だが卑怯なやり方だと非難される。しかし,理論オルグならばそんな非難は受けない。

ただし,オーガナイザが理屈をこねまわすだけで,ターゲットを説得できるかというと,それは怪しい。

さらに,ターゲットを説得できたとしても,ターゲットが組織活動に加わってくれるかどうかはわからない。行動のきっかけは理性ではなく,情緒である。ターゲットを説得するだけでなく,組織活動に加わろうという感情をターゲットに持たせることが必要なのである。

オーガナイザがターゲットと議論して理論的に勝ってしまうのは,どちらかというと問題である。この場合,オーガナイザがターゲットの説得に成功しているというよりも,ターゲットにオーガナイザに対する抵抗感や憎悪を持たせてしまっている可能性が強い。ターゲットとの間の理論闘争は避けるべきである。

理論オルグで大事なことは訴求力のある話し方ができるかどうかという点である。訴求力というのは経営学,とくにマーケティングで重要な概念である。ターゲットの性質を見極め,理論の本質を損なうことなく,ターゲットにとって訴求力のある話し方ができるように調整することが重要である。


  ◆   ◆   ◆


第5章 理論オルグのための整備作業と内容分析

理論オルグの訴求力を高めるということは,ターゲットにとって好ましいイメージを伝達することに他ならない。そのためには,準備作業=整備作業が必要である。こうなると,理論オルグというのはもはやマーケティングの範疇に入る。本章は理論オルグの準備作業としてやらなくてはならないことを逐一あげている。

ターゲットにとって好ましいイメージを構築するためには,次に示す理想目標,中間目標,現実目標,実践目標の4つを明確にし,ターゲットに伝えなくてはならない:

  • 理想目標: 自由とか平等など,多くの人々に受け入れられる崇高で抽象的な目標
  • 現実目標: 組織に加わることによって実現される具体的かつ現実的な目標。賃金値上げとか労働時間短縮とか明確なご利益のことである
  • 中間目標: 理想目標と現実目標の間にあって,現実目標の達成を繰り返すことによって達成される目標。中間目標がいよいよ実現されそうだ,という状況になると,中間目標は現実目標と呼ばれるようになる。そして,その現実目標(かつての中間目標)と理想目標の間に新たな中間目標が設定されるようになる
  • 実践目標: 現実目標を達成するために日々行われる実践的な目標のことである。実践的な目標があって初めて,ターゲットを説得できる

しかし,ターゲットに理想目標,中間目標,現実目標,実践目標の4つを示すだけでは訴求力が不足している。

次の2つを満たすことが必要である。

  • ターゲットにとって各目標が魅力あるものとすること
  • ターゲットにとって各目標が正当なものに見えるようにすること

目標が魅力的であるということは,目標がターゲットの欲求にフィットしたものである,ということである。ターゲットの欲求を分析することも準備作業として必要である。

目標が魅力的であることも大事だが,同時に目標の正当性も大事である。人間はある程度正しさを求める傾向がある。魅力的でも非倫理的あるいは非合理的な目標を掲げていては組織化活動を継続できない。

つぎに各目標を実現するための戦略・戦術を選択し,ターゲットに伝えることも必要である。このとき,様々な戦略・戦術がある中で,所定の戦略・戦術を選択した正当な理由を述べる必要もある。

また,各目標を実現する際の阻害要因促進要因とを把握し,これらをターゲットに伝えることも必要である。

さらに,各目標を実現することが可能であるというイメージ作りも必要である。この際利用されるのが,歴史解釈である。歴史解釈とは,過去の事例に基づいて,各目標の実現性が高いことを示すことである。

というわけで,整理すると,理論オルグを実施する前には次のような事項を整理しておく必要がある。

  • 組織の目指す,理想目標,中間目標,現実目標,実践目標の4つの目標を明確にする
  • 各目標に魅力を持たせる
  • 各目標に正当性を持たせる
  • 各目標実現に向けた戦略・戦術の選択と正当化を行う
  • 各目標の実現性の高さを示す


  ◆   ◆   ◆


第6章 理論オルグの技術

前章の準備作業を経て,いよいよ理論オルグを実施する。

本書では正統派理論オルグにおける,話し方の順序の一例を示している(131頁から132頁):

  1. 出会いの話しかけ
  2. 現状認識による問題提起
  3. 現実目標の策定と正当化
  4. 中間目標の明確化と正当化
  5. 理想目標の明確化と正当化
  6. 目標選択と目標達成手段選択(戦略)の正当化
  7. 歴史的解釈による裏付け
  8. 戦略に対する反論
  9. 現実認識に対する反論
  10. 戦略に対する反論反駁
  11. 現実認識に対する反論反駁
  12. 帰結としての主張の正当性と大衆組織化のすすめ

8~11に反論の提示とそれに対する反駁を示しているが,これは話している内容に説得力を持たせるためのテクニックである。あらかじめ予想される反論を示し,それを反駁することによって,オーガナイザの主張の正しさを強調するわけである。

昨日の記事では「組織化戦術公式1~4」を示したが,今示した話し方の順序のモデルの中で,2は第1公式(地獄のイメージ),3~5は第2公式(極楽のイメージ),6以降は第3公式(合理化)の応用である。

今示した話し方の順序のモデルでは,実践目標が出てこないじゃないか,という疑問が生じるかもしれない。実は,正統派理論オルグというのは,もともとオーガナイザの組織に興味を持っているターゲットや,すでに組織に加わっている者に対して行う活動であり,組織の理論を深く理解してもらうための活動なので,実践目標はとりあえず引っ込めてある。

実践目標が必要なのは,オーガナイザの組織についてあまり知識のない人,一般の人を対象に行う,大衆用理論オルグを実行する場合である。

大衆用理論オルグでは,次のような話し方のモデルが用意されている(140頁~141頁)

  1. 出会いの話しかけ(アイスブレーキング)
  2. 実践目標の明確化
  3. 現状認識による問題提起
  4. 実践目標の再提示と理想・中間・現実目標との関係の解説
  5. 実践目標達成に向けた戦術の提示
  6. 戦術に対する反論
  7. 戦術に対する反論反駁
  8. 使命感(組織活動への献身)の植え付け

このモデルでは,具体性に重みを置き,実践目標達成による現実的利益の享受について語ることで,オーガナイザの組織について興味がなかった人々をも引き付けようとしている。


  ◆   ◆   ◆


ということで,理論オルグについて学んだわけだが,やはり経営学,特にマーケティングにおえるプロモーション活動に通じるものを感じる。


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2013.06.12

『オルグ学入門』を読む(2)

昨日読んだのは

 第1章 大衆組織化の意義とオルグ活動
 第2章 オルグ作戦とその計画の策定

である。今日はその続き,

 第3章 オルグに必要な心理知識とその利用

を読む。


  ◆   ◆   ◆


本書で重要なのは,組織化戦術(オルグ戦術)として社会学や心理学の知見を利用しているところである。

本書では社会的交換理論,刺激反応理論,動機づけ理論の3つを踏まえて,つぎのような一連の組織化戦術公式を示している。

ある組織のオーガナイザが,一人の対象者を説得しているところを想定しよう。オーガナイザは次のような公式を利用する:


第1公式(地獄のイメージ): 現状では,(物質的あるいは精神的な)コストばかりかさみ,それに対する(物質的あるいは精神的な)報酬は少ないままである,という生き地獄のイメージを対象者に植え付ける。

第2公式(極楽のイメージ): オーガナイザの組織に加わることによって,対象者はコストを最小に報酬を最大にすることができる,という極楽のイメージを植え付ける。


この2公式の適用によって,対象者は現状に幻滅し,オーガナイザの組織に加わることに魅力を感じるようになる。しかし,それでも抵抗感を覚える可能性がある。どういう抵抗感かというと,対象者と同じ状況に置かれている仲間たちに対する裏切り行為の様に感じる,ということである。

そこで,オーガナイザは次の2つの公式を利用する:


第3公式(合理化): 現状のままでいることは非合理的であり,オーガナイザの組織に加わることは合理的であると説明する

第4公式(自己犠牲・利他行動のイメージ): 新たな組織に加わることは,対象者個人にとって不利益になる可能性もあるということを述べるとともに,そうはいっても,対象者が組織に加わるという行動は,対象者と同じ状況に置かれている仲間たちの先駆けとなり,仲間たちを利するための自己犠牲として有意義である,ということを説明する


これら4つの公式を駆使して対象者を説得しようというのが,組織化技術(オルグ技術)である。もちろん,これらの公式の有効性を増すためには,説得時にたとえ話,故事成語,有名人の言葉の引用など,話の肉づけを行う必要がある。


  ◆   ◆   ◆


認知不協和説の利用というのも組織化技術の一つである,ということを本書では説明している。

「対象者の考え方を変えれば,対象者の行動も変わる」,というのが従来型の説得術である。

これに対し,「対象者の行動を変えれば,その行動を正当化しようとして対象者の考え方も変わる」,というのが認知不協和説を利用した説得術である。

昨日の記事で書いた「文化オルグ,行動オルグ」というのが,認知不協和説を利用した組織化技術である。つまり,まず,オーガナイザの組織の活動に参加させ,その結果として考え方を変えさせる,というわけである。ヒトラーのベルリン五輪なんか,その一例かもしれない。


  ◆   ◆   ◆


以上述べたのは,対象者を説得する技術である。

本章の最後では,競合する組織間での交渉の枠組みが紹介されている。

複数の組織が競合している状況では,何が重要かと言うと,自分の組織の生存である。自分の組織が生存するためには,多数派工作(本書では「勝連合」と称している)必要である。

多数派工作の技術としては,自組織と他組織がそれぞれ持っている目標の共通部分となる上位目標を設定する,というものがある。

また,自組織と他組織との間で条件交渉がある場合には,例えば,最初に自組織にとって大幅に有利な条件を提示し,しかる後に条件の大幅譲歩(とはいっても結局は自組織にとって有利なレベルの譲歩)を行って,他組織にとって非常に得であるかのような錯覚を起こさせるという手もある。

まあこのあたり,本書ではあまり詳しく書かれていないが,実際には,経営学というか,ビジネス交渉術などを取り入れるのが,いいんじゃないかと思う。

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2013.06.11

『オルグ学入門』を読む(1)

一昨年,広島市の丸善ジュンク堂で平積みになっていたのを買ったものの,自宅の本棚に収納したままだった。

昨日,偶然目にしたので読んでみることにした。

それにしても買ったまま放置している本の多いこと。

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オルグ」という言葉の古さ。今ではほぼ死語に近いのではないかと思う。

オルグという言葉から連想されるのは,左翼の活動家が学生や労働者を煽って組織に勧誘する情景である。著者もそれは念頭に置いているようである。しかし,この本が目指しているのは,オルグと言う活動の一般化,理論化,体系化である。

オルグというのは,ドイツ語由来の日本語だろう。英語で言えば,organization,つまり組織化である。また,オルグと言う言葉はオルグ活動をする人,organizerを指すこともある。

個人は弱い。抑圧者や外敵に対抗しようとすれば,個人個人を束ねて組織化することが必要である。これがオルグ。

いったん,組織化が成功しても,組織が巨大化すれば,今度は組織内の成員の中に組織の主張や活動に無関心な人々が増える。この人々を変革し,組織を再活性化させること,これもオルグである。

つまり,ばらばらの個人個人の組織化と組織内部の活性化,これらの活動がオルグなのである。


  ◆   ◆   ◆


オルグという言葉が書いてて気に食わないので,本ブログではなるべく組織化活動と言うことにしよう。また,組織内部の活性化についてオルグと言う場合には,再組織化活動とでも呼ぶことにしよう。さらに,オルグを行う人をオーガナイザと呼ぶことにしよう。これですっきりした。

さて,主義主張はどうあれ,ある主張の下に,ばらばらの人々を束ねようとすれば,組織化活動が必要になる。人々はたとえ困難な状況に置かれても,自然にはまとまらない(危機に際しては自然に組織化が行われるという説もあるがここではわきに置いておく)。オーガナイザが積極的に組織化活動を展開しなければ,人々はばらばらのままである。

しかし,組織化活動というのは,人々に対して主義主張,理屈をこねてみても進展しないし,思いつきで呼びかけを行っても成功しない。何らかの作法に基づいて行わなくてはならない。組織化活動の方法の体系化,それが,本書のねらいである。

経営学では経営組織論という一部門があり,理論と実践の両面において莫大な量の知見が蓄積されているわけだが,それは企業の社員など,既に経営組織の成員となっている人々をまとめ,効率的に組織を運営することを目的とした学問である。

これに対し,主義主張,目的,知識レベルの異なる人々を組織化する方法は整備されていない,というのが,著者・村田宏雄が第1章で主張することである。そして第2章では,組織化活動に戦略と戦術が必要であることを述べている。


  ◆   ◆   ◆


本書の第2章では,組織化戦術(オルグ戦術)として以下の戦術を羅列している。

  • 理論オルグ: 理論を道具に用いる組織化戦術
    • 正統派理論オルグ: 対象者に対し,理論的に組織化の必要性,組織後の展望について述べて説得する
    • 大衆用理論オルグ: 対象者に対し,組織化の現実的なご利益を強調して説得する
  • 感情オルグ: 感情に訴える組織化戦術
    • 恐怖喚起: 対象者に対し,恐怖を与えるようなことを述べ,その恐怖から逃れるためには組織に加わるしかないことを主張する
    • スケープ・ゴート: 対象者に対し,共通の敵を示し,それを打倒するために組織化が必要であることを主張する
  • 文化オルグ: 文化活動を通して対象者をひきつける
  • 行動オルグ: 行動参加により一体感を高め,対象者をひきつける
  • 理論闘争オルグ: 対象者と議論して説得する

こうした戦術は,対象者の性質によって使い分けるべきであること,また,戦術の組み合わせとしての戦略は,自分の組織の状況,社会状況,対象者の状況の3つの組み合わせによって決定するべきこと,などが第2章で述べられている。

経営学で言えば,自分の組織の状況は内部環境,社会状況は外部環境,対象者の状況はSTPの中のST(セグメンテーションとターゲティング)ということに対応すると思う。


  ◆   ◆   ◆


ということで,まだ読み始めたばかりだが,『オルグ学入門』は「オルグ」という古臭い言葉で損しているものの,経営学の知識で解釈でき,しかも,マーケティング経営組織論に様々な示唆(implication)を与えてくれるものではなかろうか,と思っている。

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2013.06.10

セイゴオ読書術2冊一気読み:『本の読み方(1)―皮膚とオブジェ』と『多読術』

米英の諜報活動スキャンダルは4回も記事を書いたのでしばらくお休み。

今日は文化的な話題。セイゴオ(松岡正剛)先生の読書術の新書を2冊,一気読みした件について書く。

そもそもは本棚で10年近く眠っていた新書:

『本の読み方(1)―皮膚とオブジェ』(松岡正剛編集セカイ読本◆中速◆ デジタオブックレット002,2003年4月発行)

をたまたま取り出して見たことから始まる。同書は下の写真(↓)の左側の本である。この本を持っている人はあまりいないんじゃないかと思う。

Honnoyomikata1

この本は「ダイヤモンド・エグゼクティブ」1994年10月号から1995年8月号までに連載された文章をまとめたものである。

これを一気に読んだ後,ベストセラー『多読術』(ちくまプリマ―新書,2009年4月)を初めから終わりまで,やはり一気に再読した。

どちらも読書術なのだが,もっと正確に言うと,本との付き合い方に関する本である。同じ著者のものなので,ほぼ同じ主張が繰り返されている部分もあるし,そうでない部分もある。


  ◆   ◆   ◆


まず,2つの本に共通する主張について。

通常の読書術は,どうやって内容を把握するか,ということに終始しているのだが,セイゴオ流読書術はだいぶ違う。

セイゴオ流読書術では,本の内容を追いながら,同時にその本を読んでいる場所や時間,その本の味わいについても楽しむ,という方法が紹介されている。いわば,本の内容把握だけでなく,読書中の身体感覚や感情の動きも読書体験として重要である,ということ。

『多読術』によれば,読書体験の多重構造に気付いたのは,高校の終わりぐらいにプルーストを読んだことがきっかけだという(『多読術』51頁)。プルーストの作品では「意識の流れ」と「実景描写」が二重進行していることに気付いたというのだ。これを読書術に置き換えると,読書をするときには「場所」を下敷きにするという「二重引き出し読書」という方法となる。

読書の味わいについては『本の読み方(1)―皮膚とオブジェ』の「読書中の内部共鳴現象に注目する」で詳しく論じられている。全く異なる主題,アプローチの本2冊を読んだときに,なぜか読者の心の中ではこれらの2冊の本が重なることがある。セイゴオ先生の挙げた例としては,大澤真幸『意味と他者性』と勅使河原三郎『骨と空気』の2冊,あるいはキャサリン・モーリス『わが子よ,声を聞かせて』と岩村蓬『鮎と蜉蝣の時』の2冊がそういった内部共鳴現象を引き起こしている。

この内部共鳴現象は,本の内容が似ているとか似ていないとかいう話ではなく,読書中に自分の中に湧き起こる感覚の類似性,つまり味わいの類似性によって起こる現象なのである。

「ハンバーグを食べたあとにギョーザを食べて,その匂いや舌ざわりやジューシーな感覚を連続的に楽しんでいることと同じなのだ」(『本の読み方(1)』37ページ)

読書は内容を把握することだけに非ず,読んでいるときの場所,味わいについても多重的に楽しむべし,というのがセイゴオ流ということになるだろう。


  ◆   ◆   ◆


本をオブジェとして見る,という考え方,つまり本の物理性について,『本の読み方(1)―皮膚とオブジェ』でははっきりと一章を設けて語っているのに対し,『多読術』ではあまりはっきりと語っていない。

『多読術』で本の物理性について(間接的に)触れているのは2か所。一つは「本をノートとみなす」,「マーキング読書術」に関して述べた箇所(『多読術』84~86頁)。もう一つはマルチメディアとの比較において,本が「ダブルページ」(見開き)になっていると述べた箇所(『多読術』191頁)である。

これに対して,『本の読み方(1)―皮膚とオブジェ』では「ときに書物をオブジェにしてみる」という章で本の構造について語っている。かつて,セイゴオ先生は稲垣足穂の『人間人形時代』(工作舎)という本を出版した。この本は,本の中央に丸い穴があいているという,いたずら心に満ちたものだった。

「著者の稲垣足穂も『これを50冊並べてレンズをつけたら望遠鏡になるなあ』とよろこんでいた」(『本の読み方(1)』43頁)という。


  ◆   ◆   ◆


セイゴオ先生の語る,本の物理性は重要なことだと思う。

現在,本の電子化が進んでいる。このままだと,書店(リアル書店)の役割がいずれ終わる可能性がある。

もし電子本との違いを示そうとすれば,その物理性を最大限に利用しなくてはならない。セイゴオ先生が示した例は一つの答えである。遊び心に満ちた装丁,造本をすることが,リアル本生き残りの策の一つだろうと思う。

あと,本の物理性に伴う身体感覚も重要だろうと思う。リアル本は全身の感覚で能動的に読むものであり,おそらく頭脳だけでなく,身体感覚としても読書体験が記憶されることだろう。これに対し,電子本では頭脳とあとは目の動きだけ。頭脳と身体の多重な体験を経ていない読書は,忘却されやすいかもしれない。

とりあえず,2冊一気に読んだことによって,読書における身体感覚の重要性,本の物理性などについてあれこれ思いを巡らせることができた。


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2013.06.09

【オバマ,キャメロン大打撃?】加熱する米英諜報スキャンダル報道

日本ではあまり話題になっていないが,米英では,諜報機関によるネットおよび携帯電話の情報収集活動が発覚し,オバマやキャメロンの政権に大打撃を与えかねない状況になっている。

英紙The Guardianでは連日,新たな問題が明るみになり,小生としては同紙から目を離せない有様だ。

これまでに報じられている問題(一件はワシントンポスト報道)を並べてみるとこういうような感じになる:

  • アメリカ国家安全保障局(NSA)ベライゾン社ユーザ数百万人分の携帯通話記録を入手(参考)
  • NSAとFBIがインターネット大手企業から情報を入手する「プリズム」プログラムを実施(参考
  • 英国政府通信機関(GCHQ)がNSAを通じて「プリズム」で収集した情報を入手(参考

これらについては弊ブログでも紹介してきた:

これらに加えて,小生が土曜日(6/8)にThe Guardianで目にしたのは次の2つである。

オバマ大統領が海外へのサイバー攻撃の目標のリスト作成を指示

"Obama orders US to draw up overseas target list for cyber-attacks" (Glenn Greenwald and Ewen MacAskill, guardian.co.uk, Friday 7 June 2013 20.06 BST)

Top-secret directive steps up offensive cyber capabilities to 'advance US objectives around the world'


『プリズム』で収集された情報をGCHQが入手している件で,政府が窮地に

"Prism: ministers challenged over GCHQ's access to covert US operation"

Government rounded on after disclosure that highly-classified system supplied eavesdropping headquarters with information


前者は米国から海外へのサイバー攻撃,後者はネット上での諜報活動という違いはあるが,基本的にはネット上(サイバー空間)での軍事・諜報活動ということにまとめることができる。

自由と平和を謳歌し,プライバシーが保護されているものと考えられてきたネット空間が戦場と化してきたことを意味する。

英国では議会の情報・公安委員会(Intelligence and Security Committee、ISC)が動き出し,まもなく「プリズム」の件に関してGCHQに説明を求めるようである。


  ◆   ◆   ◆


さて,一連の米英諜報スキャンダルについて,一歩引いたところから少し考えてみよう。

「誰がこの事件で得をするのか? (Cui bono?)」

  • 人権活動家
  • 政敵
  • テロリスト
  • 中国

この問題(Cui bono?)を考えることは,問題の背景は何か? リークしたのは誰か? 煽っているのはだれか?等ということにもつながってくるだろう。

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2013.06.08

【プリズム・プログラム】英国情報部が米プリズムプロジェクトを通してインターネットの情報を監視中【ベライゾン通話記録入手】

急激な円高,連日の株乱高下,米雇用統計の微妙な結果,…と連日,経済ニュースから目を離せない人々が多いことと思う。

小生の場合は,The Guardianが連日報道している「米国国内向け諜報活動スキャンダル」から目が離せません。

一昨日の「アメリカ国家安全保障局,ベライゾン社を通じて米国住民の通話記録を収集中」,昨日の「【オバマ政権の危機?】米国民の携帯通話を国家安全保障局が監視している件」に続き,本日は第三弾「英国情報部が米プリズムプロジェクトを通してインターネットの情報を監視中」をお届けする。

"UK gathering secret intelligence via covert NSA operation" (Nick Hopkins, guardian.co.uk, Friday 7 June 2013 14.27 BST)

UK security agency GCHQ gaining information from world's biggest internet firms through US-run Prism programme

同記事によれば,英国の諜報機関の一つ,政府通信本部(Government Communications Headquarters: GCHQ)が,2010年6月以来,米国のプリズム・プログラムを通して,大手ネット企業からの情報を収集し,197の報告書を作成しているという。それらのレポートはかの有名なる諜報機関,MI5およびMI6にも渡っている。


プリズム・プログラムというのは,国家安全保障局(NSA)およびFBIがGoogle,Facebook,Microsoft,Appleをはじめとする米国大手9社の主要サーバーに直接アクセスして,ネット上の情報を監視しようとする計画のことである。

この計画の存在をすっぱ抜いたのはワシントンポスト(参照)。

ガーディアンとワシントンポストという米英二大新聞が揃って,米英で起こっている,国内諜報/監視活動を報道している。米英国民のプライバシーが危機に瀕しているというわけである。

ガーディアン紙によると,米国の高官は「プリズム」についてこう述べているという:

……「プリズム」は秘密連邦裁判所(Foreign Intelligence Surveillance Court: FISC),行政機関,議会の監督下にあり,ちゃんとした手続きを踏んで実施されている。米国外にいる非米国民を対象としたものであり,情報収集の過程で米国民に関する情報を入手したとしても,それを取得・保持・流布しないように努めている……

とはいえ,この一連の諜報活動に対し,非難の声は止まない。

これは憲法に対する総攻撃だ!」(ランド・ポール米上院議員(ケンタッキー州・共和党))

ランド・ポール上院議員はガーディアン紙に寄せた文の中でこう結んでいる:

2008年,オバマ上院議員はブッシュ大統領と秘密連邦裁判所FISCに対してこう述べた:

「私たちは,この国のあらゆる人間が法の下にあるということを,改めて認識するべきだ」

そう,米国ではあらゆる人間が法の下にある。オバマ大統領,あなたもだ。

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2013.06.07

【オバマ政権の危機?】米国民の携帯通話を国家安全保障局が監視している件

日本ではサッカー関連のニュース(※)で連日盛り上がっておりますが,米英ではプライバシーの問題が盛り上がっております。

※ワールドカップ出場の件と,奥大介氏が佐伯日菜子女史にDVの疑いの件


昨日の弊ブログ記事でも紹介したが,この事件を簡単におさらいすると,

4月下旬以来,アメリカ国家安全保障局(NSA)が通信大手のベライゾン社から莫大な量の電話利用者の通話記録(誰と誰がどこで何分間通話したか)を毎日入手している

ということが,英国のThe Guardian紙が入手した秘密文書(連邦秘密裁判所FISCの命令書)によって判明したという話。

ベライゾン社の傘下には携帯電話大手ベライゾン・ワイヤレスがあり,加入者は1億2千万人を超えている。通話内容は監視対象となっていないようだが,上述したように,誰と誰がどこで何分間通話したか,ということは完全に監視されている。


今回の記事は,この事件の続報で,オバマ政権がNSAによる米国住民への監視活動を弁解しているという内容:

Obama administration defends NSA collection of Verizon phone records (Dan Roberts and Spencer Ackerman in Washington, guardian.co.uk, Thursday 6 June 2013 15.10 BST)

同記事によれば,報道内容を知った政治家や運動家たちが「前代未聞のプライバシー侵害」,「ジョージ・オーウェルの描いた世界より酷い」,「民主主義の危機」として米政府を非難しているという。

ブッシュ政権下でも高官が,NSAによる米国住民の通話記録監視が実施されていることを漏らしたことがある。

しかし,今回のThe Guardianの報道は,その監視活動が継続されていることを,証拠資料(連邦秘密裁判所の命令)を添えて明確にしたということで,米国民に強烈なインパクトを与えている。

で,オバマ政権側は本件には直接触れず,通話記録入手は「国家を守るための重要な手段」だとコメントしているという。

ブッシュ政権からオバマ政権に交代した時,テロや紛争が減り,平和な世界になっていくのでは…という印象を持った人々が多かっただろうと思う。その傍証ともいえるのが,オバマ大統領のノーベル平和賞受賞である。

しかし,テロや紛争は相変わらず続いている。シリア内戦などを見るとますます先鋭化しているように見える。

カウンターテロ活動もブッシュ政権時代よりもさらに巧妙かつ大胆なものになってきている。特殊部隊によるビン・ラディン急襲・暗殺や,ドローン(無人機)によるテロ容疑者暗殺などはその例。今回の国内向け諜報活動もその一例だと言えるだろう。

自由やプライバシーを尊重することがアメリカの国是だったはずである。対テロ活動を理由として,これらを制限・侵害することが許されるのだろうか,というのが今回の事件の論点である。

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2013.06.06

アメリカ国家安全保障局,ベライゾン社を通じて米国住民の通話記録を収集中

本日の英国"The Gurdian"紙の特ダネ記事:

"Revealed: NSA collecting phone records of millions of Americans daily" (Glenn Greenwald, The Guardian, Thursday 6 June 2013)

Exclusive: Top secret court order requiring Verizon to hand over all call data shows scale of domestic surveillance under Obama

アメリカ国家安全保障局(NSA)が秘密連邦裁判所(FISC)の命令を得て,通信大手のベライゾン社から全ての通話記録を毎日入手しているという話である。

ガーディアンの記事ではベライゾンとしか書いていないのだが,ガーディアン紙が入手した裁判所命令を読むと,

"Verizon Business Network Services, Inc. on behalf of MCI Communication Services Inc., d/b/a Verizon Business Services (individually and collectively "Verizon")"

と書いてあるので,Verizon Business Network Services社を通じて,通信事業コングロマリットであるベライゾン・コミュニケーションズ社全体からデータを収集する,ということだと思う。

ベライゾン・コミュニケーションズ社の傘下には,1億数千万人のユーザを擁するベライゾン・ワイヤレス社があるので,この通話記録の入手が最大の目的だろう。

収集期間は今年の4月25日から7月19日までの約3カ月間。

発信者受信者両者の電話番号,場所,通話時間等が情報収集の対象となっており,通話内容自体は含まれない。また,米国内および米国と国外の間の通話が対象であり,ベライゾンのサービスを利用していても,米国外だけで行われる通話は対象外ということである。

今回の件についてThe GurdianのGreenwald記者は,NSAが対外的な諜報活動から国内監視へと姿勢を変えてきたことを如実に語っている,と記している。

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2013.06.04

一国環境主義をやめよう

昨日,倉敷市で講演をしてきた。

環境・エネルギー問題について。

シェールガスの今後や,大震災以降の電力消費の実態など,いろいろな話題を取り上げたのだが,今回,最も力を入れたのがこれです:

一国環境主義からの転換

Environmentalism

円グラフは1990年と2011年の世界のCO2排出量の状況を示している。データ源は欧州委員会が管轄するデータベース,EDGARである。

1990年の世界の排出量合計は22,060,863キロトンだったが,2011年にはその1.5倍に増加している。

一目でわかるのは中国の伸びである。いまや世界の二酸化炭素の三分の一は中国から発生している。


実際に削減義務を負ったのは日本だけ

京都議定書では主としてEU,ロシア,日本が排出量の削減義務を負った。しかし,EUは加盟国増加により自然に削減量を達成。ロシアはタイガという森林地帯がCO2吸収源となるため,削減量はゼロ。2008年~2012年の第一約束期間中,日本のみが1990年比マイナス6%という削減義務を負った。

日本のみ削減してどの程度の意味があるか?

先ほど述べたように,日本が努力している間にも世界のCO2排出量の総量は増加を続けている。新興国の伸びは大きく,とくに中国の伸びが目立つ。今や,日本は世界の4%を占めているのに過ぎない。日本が例えば25%削減しても,世界の排出量合計から見れば,1%の減少にすぎないわけである。それに,日本が努力して削減している間に世界の排出量合計はもっともっと増加することだろう。

日本国内の省エネ・新エネの努力が無駄であるとは思わない。だが,これを世界に波及しなければ,世界全体でのCO2排出量の削減を実現することはできない。

日本の省エネ・新エネ技術を世界に積極的に輸出する。
技術だけでなく,マネジメントの仕方も輸出する。
場合によっては海外においてエネルギー・インフラの経営にも関与していく。

これによって,世界のCO2排出量の削減を図り,さらに資源の浪費を食い止める。

つまり,日本だけがCO2削減目標を立てて実現しようとする,一国環境主義からの転換。

そういう姿勢でないと,実質的な地球環境の保護,エネルギー資源価格の高騰の抑制を実現できないだろうと思う。

※ちなみに上のグラフでは,1990年と2011年の比較のため,現在のEU加盟27か国でEUの排出量を集計している。1990年頃はEU加盟国は現在の半分ぐらいだった。

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