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2013.06.13

『オルグ学入門』を読む(3)

今日は,「理論オルグ」に関する3つの章(第4章~第6章)を読む。

一昨日の記事では組織化活動(オルグ活動)にもいろいろあることを述べたが,組織化活動の中核ともいえるのが,理論オルグである。そのため,本書では理論オルグについて3つもの章を割いて議論している。


  ◆   ◆   ◆


第4章 理論オルグと訴求力

理論を道具にして,ターゲット(対象者)を説得し,組織に引き込む技術,これを理論オルグという。

理論オルグは正統派の組織化技術である。相手の弱みを握って組織に引き入れるやり方は効果的だが卑怯なやり方だと非難される。しかし,理論オルグならばそんな非難は受けない。

ただし,オーガナイザが理屈をこねまわすだけで,ターゲットを説得できるかというと,それは怪しい。

さらに,ターゲットを説得できたとしても,ターゲットが組織活動に加わってくれるかどうかはわからない。行動のきっかけは理性ではなく,情緒である。ターゲットを説得するだけでなく,組織活動に加わろうという感情をターゲットに持たせることが必要なのである。

オーガナイザがターゲットと議論して理論的に勝ってしまうのは,どちらかというと問題である。この場合,オーガナイザがターゲットの説得に成功しているというよりも,ターゲットにオーガナイザに対する抵抗感や憎悪を持たせてしまっている可能性が強い。ターゲットとの間の理論闘争は避けるべきである。

理論オルグで大事なことは訴求力のある話し方ができるかどうかという点である。訴求力というのは経営学,とくにマーケティングで重要な概念である。ターゲットの性質を見極め,理論の本質を損なうことなく,ターゲットにとって訴求力のある話し方ができるように調整することが重要である。


  ◆   ◆   ◆


第5章 理論オルグのための整備作業と内容分析

理論オルグの訴求力を高めるということは,ターゲットにとって好ましいイメージを伝達することに他ならない。そのためには,準備作業=整備作業が必要である。こうなると,理論オルグというのはもはやマーケティングの範疇に入る。本章は理論オルグの準備作業としてやらなくてはならないことを逐一あげている。

ターゲットにとって好ましいイメージを構築するためには,次に示す理想目標,中間目標,現実目標,実践目標の4つを明確にし,ターゲットに伝えなくてはならない:

  • 理想目標: 自由とか平等など,多くの人々に受け入れられる崇高で抽象的な目標
  • 現実目標: 組織に加わることによって実現される具体的かつ現実的な目標。賃金値上げとか労働時間短縮とか明確なご利益のことである
  • 中間目標: 理想目標と現実目標の間にあって,現実目標の達成を繰り返すことによって達成される目標。中間目標がいよいよ実現されそうだ,という状況になると,中間目標は現実目標と呼ばれるようになる。そして,その現実目標(かつての中間目標)と理想目標の間に新たな中間目標が設定されるようになる
  • 実践目標: 現実目標を達成するために日々行われる実践的な目標のことである。実践的な目標があって初めて,ターゲットを説得できる

しかし,ターゲットに理想目標,中間目標,現実目標,実践目標の4つを示すだけでは訴求力が不足している。

次の2つを満たすことが必要である。

  • ターゲットにとって各目標が魅力あるものとすること
  • ターゲットにとって各目標が正当なものに見えるようにすること

目標が魅力的であるということは,目標がターゲットの欲求にフィットしたものである,ということである。ターゲットの欲求を分析することも準備作業として必要である。

目標が魅力的であることも大事だが,同時に目標の正当性も大事である。人間はある程度正しさを求める傾向がある。魅力的でも非倫理的あるいは非合理的な目標を掲げていては組織化活動を継続できない。

つぎに各目標を実現するための戦略・戦術を選択し,ターゲットに伝えることも必要である。このとき,様々な戦略・戦術がある中で,所定の戦略・戦術を選択した正当な理由を述べる必要もある。

また,各目標を実現する際の阻害要因促進要因とを把握し,これらをターゲットに伝えることも必要である。

さらに,各目標を実現することが可能であるというイメージ作りも必要である。この際利用されるのが,歴史解釈である。歴史解釈とは,過去の事例に基づいて,各目標の実現性が高いことを示すことである。

というわけで,整理すると,理論オルグを実施する前には次のような事項を整理しておく必要がある。

  • 組織の目指す,理想目標,中間目標,現実目標,実践目標の4つの目標を明確にする
  • 各目標に魅力を持たせる
  • 各目標に正当性を持たせる
  • 各目標実現に向けた戦略・戦術の選択と正当化を行う
  • 各目標の実現性の高さを示す


  ◆   ◆   ◆


第6章 理論オルグの技術

前章の準備作業を経て,いよいよ理論オルグを実施する。

本書では正統派理論オルグにおける,話し方の順序の一例を示している(131頁から132頁):

  1. 出会いの話しかけ
  2. 現状認識による問題提起
  3. 現実目標の策定と正当化
  4. 中間目標の明確化と正当化
  5. 理想目標の明確化と正当化
  6. 目標選択と目標達成手段選択(戦略)の正当化
  7. 歴史的解釈による裏付け
  8. 戦略に対する反論
  9. 現実認識に対する反論
  10. 戦略に対する反論反駁
  11. 現実認識に対する反論反駁
  12. 帰結としての主張の正当性と大衆組織化のすすめ

8~11に反論の提示とそれに対する反駁を示しているが,これは話している内容に説得力を持たせるためのテクニックである。あらかじめ予想される反論を示し,それを反駁することによって,オーガナイザの主張の正しさを強調するわけである。

昨日の記事では「組織化戦術公式1~4」を示したが,今示した話し方の順序のモデルの中で,2は第1公式(地獄のイメージ),3~5は第2公式(極楽のイメージ),6以降は第3公式(合理化)の応用である。

今示した話し方の順序のモデルでは,実践目標が出てこないじゃないか,という疑問が生じるかもしれない。実は,正統派理論オルグというのは,もともとオーガナイザの組織に興味を持っているターゲットや,すでに組織に加わっている者に対して行う活動であり,組織の理論を深く理解してもらうための活動なので,実践目標はとりあえず引っ込めてある。

実践目標が必要なのは,オーガナイザの組織についてあまり知識のない人,一般の人を対象に行う,大衆用理論オルグを実行する場合である。

大衆用理論オルグでは,次のような話し方のモデルが用意されている(140頁~141頁)

  1. 出会いの話しかけ(アイスブレーキング)
  2. 実践目標の明確化
  3. 現状認識による問題提起
  4. 実践目標の再提示と理想・中間・現実目標との関係の解説
  5. 実践目標達成に向けた戦術の提示
  6. 戦術に対する反論
  7. 戦術に対する反論反駁
  8. 使命感(組織活動への献身)の植え付け

このモデルでは,具体性に重みを置き,実践目標達成による現実的利益の享受について語ることで,オーガナイザの組織について興味がなかった人々をも引き付けようとしている。


  ◆   ◆   ◆


ということで,理論オルグについて学んだわけだが,やはり経営学,特にマーケティングにおえるプロモーション活動に通じるものを感じる。


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