カリフォルニアは省エネ大国
今週,某所で省エネに関して話す機会があるので,資料を作っている。
話題提供としていくつかのネタをまとめたのだが,その一つが「カリフォルニアは省エネ大国」という話。
◆ ◆ ◆
アメリカというと,エネルギーをバンバン使って,贅沢をしている国というイメージであるが(そう思っているのは小生だけですかね?),州ごとに見ると状況が大きく異なる。
カリフォルニア州は全米でもとくに環境保護や省エネに熱心な州である。
例えば,California Energy Commissionが発表している資料"U.S. Per Capita Electricity Use By State In 2010"によると,2010年の一人あたり電力消費量では,カリフォルニア州が全米で最も低いところにランキングされている(51位)。
一人あたり全エネルギー消費量(≒一人あたり一次エネルギー供給量)でも48位だ。
とは言っても,省エネ大国日本にかなうまい!
と思うところだが,念のため,全米,日本,カリフォルニア州で比較を行ってみる。
面倒な計算のところはここでは述べないが,3者を比較すると,結果として次の表のとおりとなる。
国・州 | 一人あたりGDP [$] | 一人あたり一次エネルギー供給 [GJ/年・人] | エネルギー生産効率 [$/GJ] |
---|---|---|---|
全米 | 42429 | 299.5 | 141.7 |
日本 | 34239 | 172.5 | 198.5 |
カリフォルニア | 46488 | 199.0 | 233.6 |
日米比較のため,日本円を購買力平価(PPP)でドル換算している。
この表をスライドにしたのが,次の図である。
(クリックして拡大)
全米と日本を比較すると,日本の方が,一人あたりの一次エネルギー供給が小さく省エネ。しかし,カリフォルニアと日本を比較するとその差は小さい。
さらに,エネルギー生産効率(Wikipedia「エネルギーの経済効率」参照),つまり,エネルギーを投入して得られるGDPを比較すると,カリフォルニアの方が日本よりも効率が良い。
つまり経済の「燃費」を考えると,日本全体の平均よりもカリフォルニアの方が省エネというわけである。
カリフォルニアは人口3700万人を超え,GDP規模では世界10位以内の国家に匹敵する「大国」である。省エネについても大国。
※注
ちなみに,日本ではエネルギーの輸出をしないので一次エネルギー供給が国内に供給され消費されるエネルギーの総量になる。つまり一次エネルギー供給=消費(需要)。
しかし,アメリカでは,一次エネルギー供給の一部は輸出されるので,一次エネルギー供給 - 輸出分 = 消費(需要)となる。日本の一次エネルギー供給はアメリカでは一次エネルギー消費にあたる(実際,EIAの統計でも"Primary Energy Consumption"と呼んでいる)。
なお,エネルギー転換ロスなどがあるため,一次エネルギー供給もしくは一次エネルギー消費と最終消費(End Use)の間には大きな差があるというのは言わずもがな。
データ参照元:
[1] Energy Information Administration, http://www.eia.gov/
[2] 資源エネルギー庁『エネルギー白書2012』
[3] Gross Domestic Product by State, Advance Statistics for 2010 and Revised Statistics for 2007 - 2009, By Jonathan E. Avery, Todd P. Siebeneck, and Robert P. Tate, BEA
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