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2013.03.16

安藤サクラ主演『かぞくのくに』を見てきた件

いまや安藤サクラは実力派女優の頂点に立っていると思う。

その安藤サクラが主人公を演じている,梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督『かぞくのくに』をツマと一緒にYCAMで見てきた。

Kazokunokuni

25年前に北朝鮮に渡った兄(オッパ)ソンホ(井浦新)が病気治療のために3か月だけ日本への帰国を許される。日本に住む妹リエ(安藤サクラ)は父・母・叔父とともにそれを喜ぶ……。

というところから話が始まるのだが,やはり25年間という時間は家族を大きく分け隔ててしまっていた。リエは在日朝鮮人ということもあり,恋愛や旅行がままならないという問題を抱えてはいるが,基本的には自由を謳歌している。しかし,ソンホはまったく自由の無い,生き延びること以外は思考を停止せざるを得ない社会に生きている。兄妹としての強い絆はあるが,ともに生きていくことができないという事実に直面せざるを得ない。

家族の会話から,やがて,なぜソンホが16歳の時に「帰国事業」によって北朝鮮に渡らなければならなかったのか,という事情も明らかになる。ソンホとリエの父は朝鮮総連の幹部であり,立場を守るためにも家族の誰かが帰国事業に参加せざるを得なかったのである。リエはそれを許せない。

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日本の病院で検査した結果。ソンホは悪性の脳腫瘍だったことが判明する。長期の治療が必要であるにもかかわらず,北朝鮮からは即日帰国の指令が下る。

再び引き裂かれる家族。

ラストシーンは銀色のスーツケースを引きずりながら早足で街を歩くリエの姿。銀色のスーツケースはソンホが得ることができなかった自由の象徴……。


  ◆   ◆   ◆


本作は梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督の実体験を基にした作品である。

なぜ,9万人もの人々が日本から北朝鮮に渡ったのか。

この件はWikipediaの「在日朝鮮人の帰還事業」に詳述されているが,在日コリアンにとっては日本社会における差別や貧困からの脱出,日本政府にとっては人道的措置と「厄介払い」,というように様々な思惑が絡んでの事業だった。

在日コリアンにとって,韓国への帰還という選択肢はなかったのか,というと実質的には無かった。

今の若い人には信じられないかもしれないが,小生が高校生の頃まで韓国は軍事政権下に置かれていた。韓国の民主化は1987年からようやく始まった。それまでは韓国は軍事独裁国家だったのである。もし,在日コリアンが朝鮮半島に戻るとすれば,向かう先はまず,北朝鮮だったのである。

帰還事業が始まった1959年頃,日本のマスコミは保守系・革新系を問わず北朝鮮への帰還を人道的事業として取り上げた。北朝鮮を「地上の楽園」として取り上げたマスコミもあった。

しかし,いまや明らかになったように北朝鮮もまた独裁国家だったのである。当時,帰還事業を煽ったマスコミの罪は深い。

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