内田康夫『汚れちまった道』読了。次は『萩殺人事件』
「すべてが私の汚れちまった道から始まったんじゃ」(本書373ページ)
内田康夫『汚れちまった道』(祥伝社)のタイトルはある人物のセリフに由来する。だが,ネタバレになるのでここでは誰のセリフなのかは明かさない。
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内田康夫『汚れちまった道』(祥伝社)は面白かった。宇部の住人としては知っている場所の描写が楽しめる。
例えば:
「ホテルから十分足らず,飲食店の多い街まで歩いた。東京の赤坂や六本木などと較べると,まるで灯の消えたような寂しい街だが,これでも宇部では賑やかなほうらしい」(191ページ)
これは宇部新川近辺の割烹「明徳(みょうとく)」に浅見光彦が向かう途中の様子。まあ,たしかにさびしい感じの飲食店街ではある。だが,明徳に関しては褒めている。
また,こんなのもある:
「宇部ICで下りて,琴崎八幡宮を過ぎて間もなく沼という交差点を左折。その後も左折右折を繰り返すわかりにくい場所だったが…」(318ページ)
これは浅見光彦と松田が,生島の息子に会うためにときわ公園の西側にあるS住宅団地に向かう途中の様子。沼交差点を左折する,ということは常盤台を上っているということになる。ときわ公園の西側にあるS住宅団地と言えば,猿田住宅かな?と思うが,割と新しい団地の情景なので,「あすとぴあ」をモデルにした団地かもしれない。
というわけで地元民ならではの楽しみ方がある。宮脇書店でも本書を積んだ棚に「まるで身近で起きているような事件」と書かれていたが,まさにその通り。
◆ ◆ ◆
ネタバレにならない程度に,そして自分用に登場人物一覧を挙げておく。他にも登場人物がいるが,事件の核心に触れてしまうので,そのあたりは省略している。
主人公たち
- 浅見光彦(あさみ・みつひこ):ご存知名探偵。ルポライター。雑誌「旅と歴史」中原中也特集取材と奥田伸二捜索のため山口県を訪問
- 松田将明(まつだ・まさあき):浅見光彦の大学時代の親友。好燦社の編集者。見合いのため山口県を訪問
山口の人々
- 奥田伸二(おくだ・しんじ):山口毎朝新聞記者。萩支局勤務。「ポロリ,ポロリと死んでゆく」という言葉を残して失踪
- 奥田こずえ:奥田伸二の妻。防府市在住
- 北林一夫(きたばやし・かずお):山口毎朝新聞・防府支局長
- 原麻利香(はら・まりか):山口毎朝新聞・防府支局勤務。中原中也同好会メンバー
- 生島一憲(いくしま・かずのり):元美祢市議。事務用品販売「生光商会」社長
- 成松利香(なりまつ・りか):中原中也同好会幹事。山口市在住。愛車は赤いアルファロメオ
- 岡山:山口毎朝新聞主筆。奥田を山口毎朝新聞にスカウトした。病気のため山口市の自宅で休養中
- 津幡(つばた):仙崎港の水先案内人。元客船の船長。下関市豊北町島戸在住
- 山田:「萩往還ピクソン」主催者。元は福岡のタクシー運転手。現在,宇部興産のダブルストレーラーの運転手
- 西岡由姫(にしおか・ゆき):萩焼のジュエリー作家。萩市在住
- 八木康子(やぎ・やすこ):松田の見合い相手。宇部市在住
- 國田堅吉(くにだ・けんきち):好燦社『未来21』の元編集長。坂本と名乗る
<故人>
- 竹澤郁(たけざわ・いく):防府市職員。原麻利香の高校の同級生。中原中也同好会メンバー。四年前に佐波川(さばがわ)の土手で事故死
- 子安一也(こやす・かずや):防府市職員。中原中也同好会メンバー。四年前に来目皇子(くめのみこ)の古墳にて自殺
<名前だけ登場>
- 高須俊朗(たかす・としろう):故人。高陽化成工業会長
- 笹川信之(ささがわ・のぶゆき):県会議員。竹澤の就職を世話
◆ ◆ ◆
そして今は『汚れちまった道』読破の勢いに乗って,『萩殺人事件』を読んでいるところである。『汚れちまった道』は奥田伸二失踪の謎が中心だが,『萩殺人事件』は元美祢市議殺害の謎が中心である。両者が絡まって複雑な様相を呈している。それが面白い。
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