内田康夫『汚れちまった道』を読んでいる件
浅見光彦シリーズ30周年記念の舞台は山口県だというので,急いで宮脇書店に行き,購入したのが内田康夫『汚れちまった道』(祥伝社)である。
「防府,萩,長門,美祢,宇部……。
山口の闇をつなぐ"道"を
名探偵・浅見光彦が奔る!」(帯より)
浅見光彦が,山口県や中原中也に関する知識ほぼゼロのまま,地方紙記者失踪事件を追って防府に入ってくる,というのが面白い。
浅見光彦は朝9時の「のぞみ」に乗って,広島で「こだま」に乗り換えて,徳山から山陽本線で防府にやってくるのだが,到着したのは午後3時。ずいぶんな長旅である。
朝9:40羽田発のANA693便で山口宇部空港に行き(11時20分着),レンタカー借りて防府に行ったら,あるいは山口宇部空港11:35分発のバスで新山口に行き(12時10分着),山陽本線で防府に向かったらもっと早く着きそうな気がするが,それだと推理小説っぽくないか。やはり推理小説の中での移動はなるべく鉄道で,ということなのかもしれない。
ネタバレになるのであらすじには触れないが,この小説,山口県の住民としては,有名人が近所に来ましたという感じで楽しく読める。難読地名として知られる「特牛(こっとい)」とか,宇部新川駅が出てくると意味もなく「やったー」という気になる。そうそう,角島も登場。
あと,小生ももともと山口人ではないのだが(もともとは清水人だ),よそ者から見ると山口県はこんな風に見えるのだ,という視点の違いも楽しい。
という訳で防府,山口,萩,長門,美祢,宇部の各市民は家庭に一冊ずつ置くこと。
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この小説,「世界初」「世界唯一」のミステリーを標榜しているのだが,それはなぜかというと,光文社から『萩殺人事件』というもう一冊の山口を舞台としたミステリーが同時刊行されており,『汚れちまった道』と『萩殺人事件』の二冊が関係し合うという仕掛けがなされているからである。
『汚れちまった道』と『萩殺人事件』の2つが交錯する……名付けてヤマグチ・クロス!
小生が名付けたんじゃなくて,帯とチラシに書いてある。
というわけで,『萩殺人事件』も揃えなくてはいけなくなった。
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コメント
中也の詩は、正しくは「汚れっちまった悲しみに」だったかと記憶しております。
「れっち」「まった」と同じアクセントが繰り返されるのが音楽的で、痛切な詩の内容にある種の軽みを加えていて、ほろ苦いといいますか何とも良い味わいになっておりますね。
角島はとても美しい島ですね。
同じ下関にピアニスト、コルトーの名を冠した厚島(孤留島)があるのを思い出しました。
投稿: 拾伍谷 | 2012.10.24 02:18