東京大学特任研究員というお仕事
本家・京大山中教授のノーベル賞受賞のニュースより大きくなってしまって,ネット上では「京大に対する東大の刺客」とも言われている某先生の一連のニュース。
マスメディア関係の人々が某先生を信用してしまった理由の一つとして,「東京大学特任研究員」や「東京大学特任教授」といった肩書があったことは確実である。
「東京大学」というのは今もなお確固たるブランド。東京大学の先生ともなれば雲の上の存在であるかのように思う人もいる。
しかし,東大というのは意外にオープンなところで,「特任教授」はややハードルが高いが,「特任研究員」ならわりと簡単になれる(参照:「「客員」「特任」研究員とは何者か 実は比較的簡単に得られる肩書きだった」J-CASTニュース,2012年10月15日)。
◆ ◆ ◆
東大の特任研究員というのは「東京大学特定有期雇用教職員の就業に関する規程」に定められた教職員で,この規定の中で:
第7条 特任研究員とは、プロジェクト等において、専ら研究に従事する者をいう
と定義されている。「プロジェクト等」というのは,民間企業や政府機関などからの「外部資金」による共同研究,受託研究,あるいは寄付講座等のことである。
特任研究員の採用の仕方だが,これは同規定の中ではとくに決められていない。
同規定の中で「特任教員」つまり特任教授・特任准教授……の選考の仕方として「東京大学教員の就業に関する規程」第3条の適用,つまり,
第3条 大学教員の採用及び昇任の選考は、教授会が行う
ことが定められているので,常識的にはこれに準じて選考するのだろう。
小生の見聞と上述の規定とを踏まえると,東大の特任研究員採用の常識的プロセスは次のようなものとなる:
- 民間企業/政府機関による資金によって研究プロジェクトが立ち上げられる
- 同研究プロジェクトに専念するための特任研究員が公募される
- 応募者の中から適任者が選ばれ,教授会で採用が決定される
実際,東大では一年を通じて大量の特任研究員の公募が行われている。大多数の特任研究員はこういったプロセスを経て採用され,業績を蓄積し,やがてテニュアを獲得していくのだろう。
だが,「東京大学特定有期雇用教職員の就業に関する規程」において特任研究員の採用の仕方が定められていないということは,今述べたような常識的プロセスによらず,わりと自由に採用できる,ということでもある。
朝日新聞はこのように報道している:
「特任」とは,特定の研究を目的とする寄付講座や研究プロジェクトのために雇われるポストで,何もつかない「准教授」や「教授」に比べると選考基準がかなり甘い。国立大学の法人化や定員削減の影響で寄付講座が増え,「特任」や「客員」も増えている。**氏はそうした「肩書バブル」をうまく活用していたようだ。(2012年10月14日,朝日新聞)
◆ ◆ ◆
「特任制度」のあまりの自由度の高さが某先生に利用されてしまったような感じの一連の事件である。某先生がどのようにして特任研究員,特任教授になられたのか,そのあたりのプロセスはマスコミの方々が明らかにしてくれるものと思う。
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