『松丸本舗主義』届く
連休が明けたところで,注文していた『松丸本舗主義』が届いた。
本屋を支えるためには本屋で購入するべきなのだろうが,今回はアマゾンで予約注文したわけである。
本書はソフトカバーで500頁を超える大部である。
以下のような4章構成になっている:
第1章「松丸本舗の旋法」は松岡正剛による松丸本舗三年間の回顧録。
第2章「松丸本舗全仕事」は棚づくりやイベントなど,松丸本舗スタッフが試みた活動をまとめたもの。
第3章「気分は松丸本舗」は松丸本舗のファンだった各界著名人からのメッセージ集。隈研吾もいるし,華恵もいるし,小飼弾もいるし,森村泰昌もいる。
第4章「松丸本舗クロニクル」は松丸本舗1074日間の年表。
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口絵,そして第1章と第2章の間には,在りし日の松丸本舗の店内の風景を写したカラー写真が飾られている。
これらの本棚やディスプレーの写真を眺めていると,こんな夢のような書店がついこの間まで存在したのだなぁ,という感慨に襲われる。
第3章「気分は松丸本舗」で町田康はこう言っている:
「稀有な書店であるが,これこそが書店であると思った。松丸本舗はそのような書店であった。そのような書店が一時的にせよあってそこで本を買った人が大勢いたことはよかったことだ,と私は底から思っている。うくく。」(本書456頁)
これまでに松丸本舗を訪れた人々も同じ思いだろう。
松丸本舗は本当に終わりなのか?
「あとがき」によれば,松岡正剛は松丸本舗はそのうちに姿を変えていくだろうと考えていたようだ。したがって,閉店を残念に思うと同時に,彼のプロジェクトの新たな段階への一区切りとしてもとらえているようである。
「松丸の起承転結はここで閉じるわけではないのだ。これはお茶や相撲でいう『中入り』なのだ」(本書513頁)
月並みな言い方だが,奇跡の三年の間にばらまかれた松丸本舗の種子は新たな場所で根を下ろし花を咲かせるのだろう。
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コメント
ご無沙汰しております。
路面の実店舗というのは品揃えとディスプレイが命というのはまさにその通り。ネットショップは目的買いのためのものですが、実店舗は「目的ないけど行ってみたい」と思ってもらえなければダメなわけなのですね。
なので、常に品切れ絶版との戦いになるのです。ああ、これ売れるのになあというアイテムがいかに多いことか・・・
投稿: 拾伍谷 | 2012.10.10 02:49
こちらこそ,ご無沙汰しております。
実店舗で働いている人ならではの感想ですね。
全ての店舗がデジタル化&AIによるリコメンド方式に移行してしまったら,さぞつまらない世の中になるのでしょうね。
投稿: fukunan | 2012.10.11 18:19
レスどうもです。
不意打ち的な出会いを求めて店に行くとは言っても大概は失望の連続ですから、流行り廃りは故あってのこととも言えますね。
松丸本舗のように魅力のある売場がなくなってしまうのは構造的な問題か、あるいは別の理由あってのことかと思いますが、それ以前の状態(ほとんど「モスクワのデパート」の様な品揃え)で営業努力を放棄して古典的な価値観を弄んでも仕方ないなあと反省しきりです。
まずは、できることとやりたいことを比べて行動しないといけませんね。
それでだめなら、その時はその時と思っておりますw
投稿: 拾伍谷 | 2012.10.11 20:06