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2012.10.03

かつて「松丸本舗」という書店があった

2012年9月30日。東京駅近くのオアゾにあった松丸本舗が三年間の歴史に幕を閉じた。

【News】9月30日(日)『松丸本舗、千客万来』」(セイゴオチャンネル,2012年9月27日)

閉店に至る事情は新聞などで報道されているので,ここでは触れない。

松岡正剛プロデュースの前代未聞の本屋としていろいろな試みをしていた。小生が楽しんでいたのは本の詰め合わせセットである。

たとえば,ツマからクリスマスにもらった「天界物語八冊組」(松丸本舗ブックギフト・プロジェクト):

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↑「【クリスマスプレゼント】天界物語八冊組【セイゴウ・セレクト】」(2010年12月23日)より


または,今年の正月に購入した杉浦康平による本の福袋:

松丸本舗・本の福袋:杉浦康平

↑「松丸本舗・本の福袋:杉浦康平」(2012年1月8日)


松丸本舗自体も本の詰め合わせ的なものだった。いやむしろ,本の詰め合わせセットの方が松丸本舗のミニチュアだったのかもしれない。松丸本舗では,どの棚にも「本をひとりぼっちにさせない」という「編集」の精神があった。

本を自分で選ぶのではなく,本の目利き達に任せてみるというのは,スリリングであるし,自分では思いつかないような新しい本との出会いがあって,とても楽しいことだ。こういう体験が無くなると思うと,とても残念である。

ビッグデータの分析結果によって本をリコメンドするといのは確率・統計の応用であって,そこには「編集」の精神は無い。マーケティング的にはその方が正しいのだけれど。


  ◆   ◆   ◆


松丸本舗では凝ったチラシやパンフレットを配布していたが,小生はこれが気に入っていて今も手元に置いている:

Img007

裏表紙(右半分)は松丸本舗の見取り図で,どの棚がどういう意図で設計されているかが読み取れる。

このパンフレット「松丸本舗 『千夜千冊 本殿』 虎の巻」のメインコンテンツは本のスタンプラリーである。

かの名高い「千夜千冊」で紹介された本のリストが再編集されていて,「千夜千冊」の文章と一緒に本をどんどん読んでチェックマークをつけていきましょう,という内容になっている。

下にリストの一部を示すが,上段が千夜千冊での番号と表題,中段が著者,下段が書名である。

Img008

千夜千冊」の該当する記事を読んだら上段をチェック,同じ著者の違う本を読んだら中段をチェック,同じ著書を読んだら下段をチェックするというしくみである。


小生が知らないだけで,他にも様々な試みがあったに違いないが,経済的な事情で閉じることになったようだ。

本ブログを書き始めたころ,青山ブックセンターが閉店したことに関して「本屋で本を買わう」(2004年7月21日)という記事を書いたことがある。いい本屋だと思ったら買い支えないとダメだな。


というわけで,松丸本舗様,三年間,ありがとうございました。

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