日本人よりも大柄だった朝鮮人/イザベラ・バード『朝鮮紀行』
1894年1月,長崎港を出た英国人イザベラ・バードは15時間後には釜山に到着した。以後3年余り,4回にわたる朝鮮旅行の始まりである。
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彼女の旅の記録,『朝鮮紀行』には朝鮮人の体格の良さが語られている。
「体格はよい。男性の平均身長は5フィート4インチ半である」(イザベラ・バード著,時岡敬子訳『朝鮮紀行』,講談社学術文庫1340,23ページ)
「朝鮮人はわたしの目には新規に映った。清国人にも日本人にも似てはおらず,そのどちらよりもずっとみばがよくて,体格は日本人よりも立派である」(同書40ページ)
この本に記されている朝鮮人の平均身長はイザベラ・バードが旅行の中で調査したものではなく,ストリップリングという人物が1897年1月にソウルで1060人の男性を測定した結果である。
この調査に先立つ1880年頃,ドイツの医学者ベルツが日本人の身長を調査している(参照:歯の豆辞典:明治時代から現代までの100年間の変化)。ストリップリングとベルツの測定結果を並べてみると次のようになる:
日本人 (ベルツ,1880年頃) |
朝鮮人 (ストリップリング,1897年1月) |
|
---|---|---|
平均身長 (男子) |
158 cm | 164 cm |
年代が20年ほど違うので,日本人は1897年にはもう少し大きくなってきていたかもしれない。その後の様々な調査によると日本人の平均身長はだいたい10年で1㎝ずつ伸びていたということであるから,1897年には約160cmに達していたと考えられる。しかし,それでも朝鮮人の方が高い。イザベラ・バードの印象は単なる印象ではなく,裏付けのあるものだった。
ここに挙げた日本人と朝鮮人の体格の違いは何に由来するのだろうか?
当時の日本人は米と魚を主食としており,肉食が始まったばかりだった。これに対して朝鮮ではすでに肉食文化が広がっていたのなら,食生活で説明がつきそうである。しかし,李氏朝鮮では一般民衆が肉食だったとは考えられないという話もあって(参照:「食の雑学 その10 焼き肉文化と韓国の肉食の歴史・焼き肉の起源」),食生活説では違いを説明しにくい。
そこで小生が思い出したのは。ベルクマンの法則である。これは「寒冷な地域に生息するものほど大型化する」という法則である。東京に比べ,ソウルの方が年平均気温が低い。これが体格の違いに影響を与えていたかもしれないと思うのだが,どうだろうか?
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