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2012.09.21

オランダで極右退潮?

東アジアにおける領土問題が白熱しているため,あまり話題に上らないのだが,去る9月12日,オランダで総選挙(第二院)があった。

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オランダの第二院は日本では衆議院にあたり,第一院に対して優位に立つ。定数は150で,政党名簿比例代表選挙によって議員が選ばれる。

先月末から毎日新聞では数回にわたって「オランダ総選挙 『極右』の実像」と題した特集を組んでいて,小生は選挙の動向に注目していた。


オランダの第二院では1918年以来,どこかの政党が過半数を占めることがなく,連立政権が常態化している。前回,2010年6月の総選挙では,下の図のような結果となった。

2010年6月オランダ第二院総選挙結果↓

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この結果を受け,第1党の自由民主国民党(People's Party for Freedom and Democracy)のルッテ党首はキリスト教民主アピールと組んで少数連立政権を樹立,そして25議席を占める第3党「極右」自由党が閣外協力という形で,政権に協力することとなった。

極右政党が本格的に政治に参与するというのは大戦後の西欧ではまれな出来事である。なぜ,オランダでは極右が強いのか,それを毎日新聞が報道したわけである。

一連の記事の内容をまとめると,自由党が勢力を増したのは,「反イスラム」,「反移民」,「反権力」,「反EU」を掲げることによって,不満を持つ中下層の市民の支持を吸い上げることに成功したため,と言える。

しかし,それだけなら他国の極右政党と同じである。自由党の台頭は党首ヘルト・ウィルダースのパーソナリティと手腕によるものが大きい。

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ヘルト・ウィルダース(Geert Wilders, 2010年,Wikipediaより)

毎日新聞の記事によれば,ウィルダースは取材にほとんど応じることがない。また,国会議員ですらウィルダースに直接会う機会を得られない。これがウィルダースの神秘性を高め,かえって注目度を強めることとなる。

また,同記事によれば,ウィルダースは巧みに仮想敵を作り,人々の間に怒りを呼び,自由党へと寄り添わせている。ある,元自由党員はウィルダースを「スピン・ドクター(spin doctor)」と呼んでいるそうだ。スピンとはPR手法の一つであり,特定の人物を有利な立場にするための情報操作のことである。

ウィルダースはヒトラーのように主張が一貫しているわけではなく,人々が飽きないよう,次々に仮想敵を作り出しては支持を広げてきた。反移民,反イスラムもそうであるし,トルコのEU加盟反対もそうである。今回の選挙では反EUを掲げた。


今回,総選挙になったのは,自由党が財政緊縮策を拒否し,ルッテ政権が崩壊したことによる。

ウィルダースが緊縮策に反対したのは,何らかの思想があってのことではなく,単に市民の受けが良いから,ということだろう。そして,総選挙になれば,反EUを掲げていることによって党勢のさらなる拡大が期待されると思って行動したのだろうと思う。

事実,選挙期間中は反EUムードが広がり,自由党は主要政党を脅かしたようである。しかし,結果はこうなった:

Netherland2012

新EUを掲げた労働党が議席を増加(38ではなく39という報道もある)。そしてギリシャ救済にはうんざりしながらもそれを承認してきたルッテ首相率いる自由民主国民党もまた議席を増加させた。

これらに対し,自由党は議席を大幅に減少させた。ウィルダースに先に述べたような思惑があったとしたら,それは大きく外れた。

どうやらオランダ国民の多くは,感情ではなく理性で,つまり「嫌なこと」であっても「しなくてはいけないこと」があるということを理解して選挙に臨んだようである。

ブルームバーグの報道によれば,第1党の自由民主国民党と第2党の労働党の連立内閣が樹立される見込みである。

これで,ようやく安定政権が生まれ,極右政党に政局が左右されることがなくなりそうである。


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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 履歴書 | 2012.10.15 20:20

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