【中韓挟撃?】竹島と尖閣諸島は同じスキームで対処するべきか?【尖閣の場合】
8月中旬以来,領土問題が大きくクローズアップされている。
中国と韓国が日本を挟撃しているかのような印象である。呼吸を合わせているんじゃないかと。
日本としてはどちらに対しても領土保持の主張を曲げず対処するべきなのだが,竹島問題と尖閣諸島問題では問題の背景がだいぶ違う。
端的に言うと,尖閣諸島問題はコントロールされた問題,竹島問題はコントロールされていない問題といえる。
ここでは尖閣の場合を取り上げる。
尖閣諸島問題は中国国内の権力闘争の延長である(と小生は確信している)。
以前「【尖閣諸島問題】「中国人船長釈放」は日本の外交史上稀に見る悪手?!」(2010年9月25日)という記事でも触れたが,中国の指導部の中では党派抗争が常に起こっている。そして,尖閣諸島問題はその党派抗争の一つの道具というわけである。
党派抗争は極めて複雑で,簡単に党派を分けられないが,話を簡単にするために現政権をA派とし,これに対抗する勢力をB派としよう。すると問題の構図はこんな感じになる:
- A派が対日融和を方針とし,尖閣諸島領有権をとりあえず棚上げしたとする
- B派はA派を「弱腰」と非難する
- A派はB派の攻撃をかわすため,いわゆる愛国運動家の尖閣諸島上陸を黙認する
- A派はその一方でこの問題の鎮静化を図り,自国民や日本政府に対するシグナルを送る
最後に述べた「自国民」向けのシグナルというのは,例えば反日デモみたいなものはみっともないからやめて自制せよ,という新聞記事を出すことである。
日本政府に対するシグナルとしては時事通信が報道しているような「対日3条件」がある。この対日3条件,日本の主権を脅かしているような文面に見えるが,結局,現状維持の方針であって,日本の実効支配を認めるものである。
◆ ◆ ◆
つい先日,「丹羽大使襲撃事件」という外交上の大事件が発生したが,これを以て,「中国は日本の主権を脅かそうとしている」と解釈するのは早計である。
この事件,中国政府の統治能力の無さを露呈し,メンツを丸つぶれにしてしまう事件である。中国政府が速やかに謝罪し,また,胡錦濤主席の外交政策の指南役でもある唐家セン・前国務委員が謝罪したことでもわかるように,中国の現政権(上の箇条書きで言うところのA派)は「まずい」と思っている。
A派でないとすれば,まず考えられるのはB派の仕業である。
今回の犯行に使われたベンツやBMW,毎日新聞社説の伝えるところでは「軍・党幹部の子弟」あるいは「黒社会の幹部」が乗るとされる車である。B派がその子弟あるいは黒社会を動かして,現政権(A派)を揺さぶっているのだと考えると構図が見えてくる。
◆ ◆ ◆
結局,尖閣諸島問題というのは中国指導部の党派抗争の一環なので,日本としては中国にすり寄る必要もなく,強硬な措置を取る必要もなく,毅然として実効支配を続けていけばいいだけであると考えられる。
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