「ネタニヤフとオバマはイスラエルを成果の得られない消耗戦に導こうとしている」とイスラエル紙
最近,イスラエルによるイランへの単独攻撃の可能性が取りざたされている。
イランの核施設への攻撃の話は2年前にもあった:「風雲急を告げる中東情勢」(2010年8月20日)とか「【中東情勢】シュタイニッツ財務大臣(イスラエル)、米国に対イラン最後通告を要請」(2010年8月20日)
結局このときはイランへの攻撃は無かった。
しかし,イスラエルは何もしなかったわけではないようである。2010年9月にはイランの核燃料施設のウラン濃縮用遠心分離機が新型コンピュータウィルス「スタックスネット」によって稼働不能に陥るという事件が発生している。どうも,この時,イスラエルは物理戦からサイバー戦に切り替えて攻撃をしていたようである。
しかし,イランの核開発は進展。2012年2月には,イラン国営放送が国産の核燃料棒の開発に成功したと報じた。
で,この夏,再びイラン攻撃の可能性が高まってきたわけである。
◆ ◆ ◆
イスラエルではイラン攻撃を支持するか反対するか,国論を二分する議論が沸き起こっている。
しかし,これは「イスラエル単独で」攻撃するかしないかの議論であって,「アメリカと共同で」攻撃するということになれば,両派とも賛成・議論終了ということになる。つまりアメリカあってのイスラエル。
イスラエルの大手新聞イェディオト・アハロノト(Yedioth Ahronoth)に掲載された,Sever Plockerによるオピニオン記事では,ネタニヤフ首相とオバマ大統領の間で信頼関係が構築されていないことが批判されている:
Third alternative to Iran crisis: Op-ed: Netanyahu, Barak may lead Israel to lengthy war of attrition that will not prevent nuclear Iran (Sever Plocker, 2012年8月22日)
このオピニオン記事は次のように述べている(適当に要約):
「イラン攻撃支持派は,イランが二度とイスラエルに立ち向かうことができないぐらい徹底的に作戦を実施するべきだと考えている(その作戦は4週間程度になるだろう)。だが,それがうまくいかなかったら? そのときはイスラエルはイランの核兵器開発能力を破壊するまで数十年間の戦争を続けなくてはならなくなるだろう。
反対派は,政権崩壊,経済崩壊,サイバー戦による電子機器の故障,アメリカの圧力などがイランの核開発の妨げになると考えている。しかし,結局,イランが核兵器を開発してしまったら? イランとの長期の戦いを避けようと思ったら,核を保有するイランと共存せざるを得ないだろう。
この究極の選択を迫られている中,3つ目の選択肢が現れてきている。それはネタニヤフ首相とオバマ大統領が互いを信頼していないことに由来するもので,
「イランの核開発を止めることができないまま長い消耗戦に陥り,イスラエルのイランに対する防衛力を損ないつつ,イスラエルとアメリカの同盟関係にひびを入れる」
という選択肢である。
イスラエルによる単独攻撃を止めるためには,(前軍情報部長のAmos Yadlinが提案したように)もはやオバマ大統領にイスラエル国会(クネセト)に直接来てもらって,アメリカもイランの核開発を食い止めるために積極的に関与することを表明してもらわないとだめな段階に来ている。
だが,もしオバマ大統領の演説と引き換えに,イラン攻撃をやめることにすれば,イスラエルは,その運命を他国に握られた弱く従順な国とみなされてしまうことだろう。
イスラエルをこんな状況に陥れてくれたネタニヤフ首相とオバマ大統領に感謝を。」
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