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2012.07.13

ポリネシアの神話

月に一回は立ち寄る宮脇書店で神話の本が山積みになっていた。

つまり小生に対する罠が仕掛けてあったわけである。

で,立ち読みの結果,ロズリン・ポイニャント著,豊田由貴夫訳『オセアニア神話』を買った。

オセアニア神話オセアニア神話
ロズリン ポイニャント Roslyn Poignant

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第一刷は1993年だから約20年前に訳出された本である。そして原著の初版は1967年とさらに古い。

原題は"Oceanic and Australasian mythology"と言うのだが,オーストラレシアとは聞きなれない言葉である。ロズリン・ポイニャントはオセアニアという言葉にオーストラリア周辺が入らないイメージがあるので,オーストラリアとその周辺海域を含むオーストラレシアという言葉を入れたらしい。しかし,今では広義のオセアニアにオーストラリアが含まれるので,わざわざオーストラレシアという必要は無くなっている。

この本では,ポリネシア,ミクロネシア,メラネシア,オーストラリアの4地域に分けて,それぞれの地域の神話を概説しているのだが,最もページを割いており(100頁以上),記述が充実しているのはポリネシアである。


  ◆   ◆   ◆


ポリネシアは非常に広い海域であるにもかかわらず,ほぼ同質の身体・言語・文化的特徴を持つポリネシア人によってカバーされている。ハワイ,タヒチ,マオリ,サモア,トンガ,皆ポリネシア人である。

広い海域をカバーしているのはポリネシア人が高度な航海技術を持っているからである。ずっと前にナショジオで見た番組によると,彼らの航海技術の精度は,10000キロ移動して1キロのズレが生じる程度だという。


さて,小生がポリネシアの神話に興味を持っているのは,日本の神話との類似性があるからである。

日本列島は文化の吹き溜まりと言われ,ユーラシア大陸や海洋から多様な人・言語・文化・技術が流れ込み重層的な文化が形成されている,というのはわりと常識化している。

日本神話とポリネシア神話の類似性については,戦前,松本信廣が指摘し,その後,多くの人々が研究することとなった。小生の場合は,吉田敦彦『日本神話の源流』でこのことを知ったわけだが,今回手にした『オセアニア神話』を通して,日本神話とポリネシア神話との類似・関係性を強く感じることができた。


  ◆   ◆   ◆


東部ポリネシアでは,祖先たちの故郷の地はハワイキ(hawaiki)と呼ばれ,西方にある。ハワイキはまた,死者の魂の行く地でもある。

この話を聞くと,スサノオが根の国(黄泉の国とされる)を「妣(はは)の国」と呼び,そこに行きたいと言って泣いていた件(くだり)を思い出す。

「僕(あ)は妣の国(ははのくに)根の堅州国(かたすくに)に罷らむ(まからむ)と欲(おも)ふ」(スサノオ)

祖先の国=黄泉の国という世界観の類似性は,小生の想像を逞しくしてくれるものである。


  ◆   ◆   ◆


マオリ族の神話によれば,男性神タネによって人間が生まれた。また,タネ神と妻との争いから,人間は死を運命づけられた。

タネはハワイキの土で女性を作った。その女性はヒネ・ハウ・オネ,すなわち「土でできた女」と呼ばれる。タネとヒネ・ハウ・オネとの間に娘,ヒネ・ティタマ(夜明けの女)が生まれるが,タネはヒネ・ティタマを妻とする。

ヒネ・ティタマはやがてタネが父であることを恥じ,ハワイキから地下世界ポに逃れた。タネはヒネ・ティタマを追いかけるが,ヒネ・ティタマは地上世界との縁を切り,今後,タネの子孫を地下世界に引きずり込み続けることを宣言する。これが人間の死の由来である……。

この話,古事記の「黄泉比良坂」の件(くだり)を思い起こさせる。根の国(根の堅洲國,死者の国)の住人となったイザナミは,イザナギに対し,「私はこれから毎日,1日に1000人ずつ殺す」と言い,これが人間の死の由来となった。


  ◆   ◆   ◆


2つほど例を挙げたが,もちろん,日本神話とポリネシア神話の間には似ていないことも多々ある。

似ていたり似ていなかったりすることについて,小生はこのように考えている:

まず,祖形となる神話が,ポリネシア人の祖先の住んでいた東南アジアにあり,それが人々の移動とともに,日本やポリネシアに伝わり,それぞれの環境に合わせて変貌していったのだと。日本の場合は,ユーラシア大陸から伝わった神話との融合があって複雑化し,ポリネシアの場合は島ごとの生活環境に合わせて変化する程度で,祖形はあまり崩れなかったのではなかろうかと。

とりあえず,もうちょっと勉強します。


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