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2012.05.22

パオロ・バチガルピ『ねじまき少女』をどう読むか(2)

パオロ・バチガルピの『ねじまき少女』は,「ねじまき」(人造人間)のエミコと白シャツ隊隊長のカニヤという二人の女性が,他者によって翻弄される運命から自らを解放し,自らの人生を取り戻す物語である,というようにも読むことができる。


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エミコとカニヤとはついに相まみえることがなかったが,それぞれ,歴史を大きく動かす存在となった。

エミコはソムデット・チャオプラヤを殺害することによって,タイの政局を後戻りのできない状況に追い込んだ。カニヤは最後の最後にタイ人としてのアイデンティティに目覚め,カロリー企業の手からタイを守った。


タイの歴史を紐解くと,女性が危機に瀕した国家を救うという場面にしばしば出くわす。そういうことを梅棹忠夫が『東南アジア紀行』に記している。例えば,ビルマ・タウングー王朝のバインナウン王との戦いの中,アユタヤ朝のチャクラパット王を救った王妃シースリヨータイ。また,ヴィエンチャン王チャオ・アヌ(アヌヴォン)の侵攻からコーラートを守ったスラナーリー。

タニヤもまた,これらの女性たちの系譜に連なる者であり,『ねじまき少女』はタイらしい児女英雄伝説であると見ることもできよう。

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