坂口謹一郎『日本の酒』を読みながら
最近,晩飯時に日本酒を飲んでいる。
以前は日本の酒といえば,二日酔いしにくいということや九州文化圏に近いということで焼酎を飲んでいたのだが,急に日本酒に興味が移った。
きっかけは本棚に眠っていたこの本をたまたま読んだこと。
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著者坂口謹一郎博士,通称「サカキン」氏は発酵・醸造に関する世界的権威で,歌人でもあった。
読んでいると日本酒が結構特異な酒であることがわかる。
例えば,醸造酒としては世界でも屈指のアルコール度数(通常15, 6度)を誇ること。ビールが普通は5, 6度ぐらい,ワインが高くても14度ぐらいというのに比べるとやはり高い。
新酒が尊ばれ,長年寝かせるという習慣が無いのも面白いことである。ワインなどは新酒でも飲まれるが,長期保存が普通に行われている。
甘口・辛口という区分があいまいで,時代によって変化していることも面白い。明治維新のころなどは全体的に辛口で,アルコール度数が18%を超えるものまで存在した。当時の甘口は現在なら辛口になることだろう。日本酒の甘辛については今も明確な分類は無く,ワインとは対照的である。「甘口酒」・「辛口酒」という明確な区分を設けていれば,食前・食中・食後など使い分けができて,飲酒の楽しみが増しただろうに,とは,著者が繰り返し述べるところである。
ワインのソムリエがやっているような,「どの料理にはどの銘柄が合う」というリコメンドが行われないことも日本酒の特異な現状である。
品評会がよく行われ,数多くの銘柄が味を競っているのにもかかわらず,作って出荷された後のケアがあまりにもずさんなのはもったいない(これこそ日本酒の消費が平成に入ってからどんどん低下していることの原因なのではなかろうか? と小生は思う)。
◆ ◆ ◆
さて,最近飲んだ酒について報告。山口の地酒に専念していて,永山本家酒造(宇部)の「特別純米酒 男山」->村重酒造(岩国)の「純米酒 金冠黒松」->酒井酒造(岩国)の「上撰 五橋」の順で飲んでいる。日本酒愛好家という程じゃないので高いのは飲まない。
永山本家酒造の酒としては「特別純米 貴」が名高い(吉田類が嬉しそうに飲んでいた)が,近所のリカーショップになかったので,普通の「特別純米酒 男山」を買ってきた。アルコール度数は15度以上16度未満。日本酒度は+5。米は山口県の誇る「西都の雫」を80パーセント使用。
日本酒らしい米味。刺身に良く合う。
「男山」を飲み果たした後は,村重酒造の「純米酒 金冠黒松」に手を出した。「2011年春季・全国酒類コンクール・純米酒部門第1位」というラベルに目がくらんだから。アルコール度数は15度以上16度未満。日本酒度は+3。酸度は1.6。米は「西都の雫」100パーセント。
「男山」に較べると随分と透明感があって,グラスに入れたとき銀色に光った。「男山」に較べると甘く感じる。
で,昨日・今日と,山口県ではメジャーな「上撰 五橋」を飲んでいるところ。これは純米酒じゃなくて,醸造アルコールが入っている。「アル添」は別に悪い事じゃなくて,さっぱりとした飲み口をもたらす。実際,これは随分とスッキリした酒である。
アルコール度数は15度以上16度未満。日本酒度は+7から+8…というのだが,なぜか甘く感じた。酸度は1.5~1.6で先の「金冠黒松」とあまり変わらないのだが。やはり「アル添」効果か?
偉そうに3銘柄飲んでみたが,今のところ,「どれも食事に合う。とくに魚に合う」というどうしようもない結論。さっぱり度で言えば,「特別純米酒 男山」よりも「純米酒 金冠黒松」,「純米酒 金冠黒松」よりも「上撰 五橋」という感じだが,少し複雑な味も感じられる「特別純米酒 男山」の方が魅力があるかも。
今後も高くないものばかり漁ることになると思うが,パック酒には手を出すまいと思っている。
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