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2012.03.11

宇部の黄幡社(おうばんしゃ)

健康維持のためにウォーキングをしているのだが,車の移動では気付かなかったものを発見したりする。

Oubansha

宇部市下条1丁目には小さな丘があるのだが,古墳かと思って登ってみたら,こんなものがあった。

Oubansha01

Oubansha02

これは黄幡社(おうばんしゃ)と言い,牛馬の神を祭る社である。
この社の由来は,次の写真に示すとおりである:

Oubansha03

今,黄幡神(おうばんしん)を牛馬の神,と言ったが,本来の黄幡神は九曜の一つ,羅睺(らごう)である。羅睺というのは,太陽や月の兄弟で,日食や月食をもたらす神,「ラーフ」のことであり,祟り神である。

なんでラーフこと黄幡神が牛馬の神になるのか?これには複雑な事情がある。

ラーフは太陽や月の兄弟であるが,これと似た立場の神が日本にもいる。スサノオである。太陽神アマテラスと月神ツクヨミの弟である。この類似した立場から(というか本来は同じ神だったのかもしれない),ラーフこと黄幡神は日本に入ってからはスサノオと習合した(同一視された)。

さて話が飛んで京都の八坂神社には牛頭天王という異国由来の神が祭られている。薬師如来が日本に現れる時の一形態である。疫病をつかさどる神とされている。

新羅の国に牛頭山という山があり,熱病に効く生薬であるセンダンを産した。牛頭天王はこの山の神とされた。日本書紀によると,スサノオはこの牛頭山(新羅名:ソシモリ)に降臨したという記述がある。このため,スサノオ=牛頭天王と見なされるようになった。

つまり,ラーフこと黄幡神と牛頭天王がスサノオを介して同一の神と見なされるようになったわけである。

日本の民間信仰では,牛頭天王はその名前から,牛の神と見なされるようになった。馬の神としては馬頭観音が祭られた。いつのまにか,役割がごっちゃになって,牛頭天王は牛馬の神となった。今さっき述べたように,牛頭天王=スサノオ=黄幡神なので,黄幡神は牛馬の神,ということになるわけである。

ああややこしい。

【3月15日加筆】

スサノオ関連の推薦図書を挙げておく。

スサノオと羅睺の関係について取り上げたマンガはこれ:

宗像教授伝奇考 3 (ビッグコミックススペシャル)宗像教授伝奇考 3 (ビッグコミックススペシャル)
星野 之宣

小学館 2008-02
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スサノオと馬の直接的な関係を取り上げているのはこれ:

暗黒神話 (集英社文庫―コミック版)暗黒神話 (集英社文庫―コミック版)
諸星 大二郎

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「暗黒神話」はせっかくだから「孔子暗黒伝」とセットで読むと良い。

孔子暗黒伝 (集英社文庫―コミック版)孔子暗黒伝 (集英社文庫―コミック版)
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コメント

 そう言えばスサノオには生きた馬の皮を剥いでアマテラスの神殿に投げ込むという逸話がありましたね。
 馬=スサノオ自身と考えると・・・意味深ではあります。

投稿: 拾伍谷 | 2012.03.13 23:44

どうも。

ご存知かと思いますが,羅睺=スサノオの話は星野之宣の宗像教授シリーズで「彗星王」というテーマで取り上げられております。

で,スサノオと馬の関係は諸星大二郎の『暗黒神話』で取り上げられております。

本記事で取り上げたネタが星野・諸星両巨頭の作品と絡んでしまうのは何の因果かと思います。

スサノオが馬(アメノフチコマ)を投げ込んだとき,古事記では機織り女が,日本書紀ではアマテラス自身(ワカヒルメ)が杼(ひ)で「ほと」を突いて死んでしまったことになっていますが,貴兄の指摘した「皮をはいだ馬=スサノオ自身」と併せて考えるとさらに意味深になりそうです。

投稿: fukunan | 2012.03.14 18:55

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