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2012.02.27

ヴィエンチャンでランド・ローバーのお披露目

ヴィエンチャンでは車が増えている。

いつのものだかわからないぼろい車もあるし,比較的安い韓国車(ワンボックスだとヒュンダイ(ヒョンデ))も多いが,目立つのは結構値の張る車である。

メルセデスもそうだし,トヨタのハイラックスやランドクルーザーもよく走っている。どれもこれもピッカピカである。

ラオス人はわりと見栄っ張りなので,多少,お金に余裕が出てくると日本人でも躊躇するような高価格の,そしてオフロードに強い車を選ぶようだ。

そういう傾向を踏まえてのことだと思うが,先日,ナンプー公園そばのKhop Chai deuでランドローバーの新車発表会があった:

Landrover02

Landrover01

こういうイベントがよく行われているのを見ると,なんでこの国が援助対象国なのかと思ったりする。

しかし,ヴィエンチャンから離れると,一挙に周りはド田舎になる。

Ruralarea

こういう風景を見ると,やっぱり援助対象国かなー?と思ったりもする。

しかしややこしいことに,農村部はお金こそあまり流通していないものの,食べ物は豊富にあるので,それほど貧しいという雰囲気でもない。

ラオスという国,どうやって扱っていいのか謎が多い。

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ヴィエンチャンタイムスに北澤豪?

ヴィエンチャンタイムスを読んでいたら,元Jリーガー,北澤豪氏らしき人物の写真があった:

Kitazawavientiane_2

多分,クラスター爆弾処理の支援で来ているのだと思うが,単に"a japanese visitor"と一般人扱いされているので,良く分からない。

記事の内容は爆弾の金属くずが資源として売れています,とかいう話だったと思う。

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ヴィエンチャンの東京タワー?

ヴィエンチャンの中心部からDongdokへと向かう途中,いつも見かけるのが,このタワー。

Tower

東京タワーかエッフェル塔か?

単なる電波塔にしては,作りが凝っている。

とりあえず,ヴィエンチャンの東京タワーと呼んでおこう。

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2012.02.26

ラオス4回目の訪問にして,ようやくタートルアンを見る

いつも交通手段が無くて(あるんだけど仕事以外に使うのはダメ),ラオプラザ近辺の観光スポットしか行ったことが無かった。

で,今回はラオス人の知り合いのお蔭で,ようやくビエンチャンが誇るタートルアン, "That Luang: Great Stupa"を見ることができたわけである:

Thatluang2

Thatluang

これで,ようやく他のラオス専門家の前でも恥ずかしい思いをしないで済む。

あとは「凱旋門」,パトゥーサイ, "Patuxai"にも上った:

Patuxai

1960年頃に建てられたらしい。下から見上げると,こんな天井画がある:

Patuxaiceiling

パトゥーサイは登ることができる。頂上からの眺めはこんな感じ:

Frompatuxai01

Frompatuxai02

日曜の昼はわりと交通量が少ない。

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ラオスで「Koreanみたいでかっこいい」といわれてがっくりする件

ラオス人にほめられても,「Koreanみたいだ」というのは何かがっくりくる。ラオス人としては悪気が全然ないんだけど。

ラオスでは韓国の美男美女映画がよく上映されているらしい。で,いまでは美男美女といえば韓国人というわけである。

韓国の対外文化政策の大勝利である。

日本も,日本国内では受けなくてもいいからアジア各国に分かりやすい美男美女映画を作るべきだと思います。


写真はラオスの夕方の交通渋滞。

Trafficjam


数年前,ラオス人が遅刻の言い訳をするときに"traffic jam"と言っていた。車なんか全然走っていなかったのに。

いまや本当に交通渋滞が発生するので,ちゃんとした言い訳に昇格したわけである。

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2012.02.19

良く分からないラオスの経済成長

Asia Development Bankから出ている"Key Indicators 2011"によれば,ラオスの1人当たりGDPは$2,355で,タイの$8,748,マレーシアの$14,771に較べるとずっと小さい。

だから貧しいか,というと…

Dsc_0562s

日曜日は公園でピクニックやってて楽しそうだし…

Dsc_0576s

こんな「スーパーカー」みたいなのが走っていて,どこが貧しいのか?!

まあ,みんな景気がいいかというとそうでもなく,

以前あった日本食レストラン"Shi-zen"が,

Shizen2010

(↑2010年2月撮影)

潰れていた(↓2012年2月):

Shizen2012

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2012.02.18

ヴィエンチャンにいるわけで

サバイ・ディー。

現在,ヴィエンチャンにいるわけである。

思ったほど暑くはないが,それでも南国ということで日差しはやや厳しい。

いつもの通り,モニュメントブックスで立ち読みでもしようと街を歩いていると,あちこちの店先で犬たちがくつろいでいた:

Dsc_0551s

モニュメントブックスで2冊ほどラオス関連の本を買った後,今度は昼飯でも食べようと思い,「ナンプー・コーヒー」への向かう。

その途上,トゥルー・コーヒーの近所で,いつもの如く電信柱を撮影した:

Dsc_0548s

ここまでくると,もはや芸術である。
ラオスでは急速に電化が進んでおり,どこの電信柱も電線がえらいことになっている。

そして,「ナンプー・コーヒー」で昼飯。

これもいつもの如く,「カオ・ピアック」を頼む。小椀で13,000kipである:

Dsc_0550s

今日は1ドル=7,900kipである。日本円に直すのは面倒なので各自で計算してください。

ナンプー・コーヒーには日本から来たと思われる若者4人組が居て,「安い安い」と言っていた。

若者の1人が「kipを円に直すのって,ゼロを二つ消す感じ?」と言っていたので,小生は心の中で「その感じ」と返事をしておいた。

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2012.02.15

またラオスに行きます

明日からラオスに出張。

600pxflag_of_laos_svg

もう何回目のラオス訪問なのか忘れてしまった。

今頃荷物の詰め込みに悪戦苦闘するというぐらいの緊張感のなさである。

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2012.02.14

『共喰い』<-イマジネーションの勝利

現在発売中の『文藝春秋 3月号』では,田中慎弥&円城塔の芥川受賞作の全文が選評とともに掲載されている:

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これまで本ブログで田中慎弥に注目してきたこと(「田中慎弥先生の受賞後第1作は「竹やぶ」」,「田中慎弥『共喰い』,バカ売れの件」)でもわかるように,小生としてやはり気になるのは『共喰い』の選評である。

黒井千次の選評は『共喰い』の特徴を簡潔かつ余さず押さえて評したもので,選評・書評というのは書くあるべしという手本のようなものだった。「冒頭の海に近い澱んだ川の描写には暗い力がひそみ,それが全編を貫いている」(同誌362ページ)という一文には納得。


黒井千次の選評も良いが,もっとしっくり来たのは高樹のぶ子の選評。

「一読し,中上健次の時代に戻ったかと思わせたが,都会の青春小説が輝きも確執も懊悩も失い,浮遊するプアヤングしか描かれなくなると,このように一地方に囲い込まれた土着熱が,新鮮かつ未来的に見え,説得力を持ってくる」(同誌365ページ)

「都会で浮遊する若者に較べて,地方の若者は質量が大きい。今後この質量の差は,さらに拡大するのではないだろうか」(同誌同ページ)

『共喰い』の持つ魅力を「質量」という言葉で表現したところはさすが。性と暴力という重い主題があって,さらに下関弁,川の周辺に生息するフナムシ,蟹,鷺,鯔,鰻,カタツムリといった生き物の丹念な描写が質量を増加させている。

ただし,高樹のぶ子の言う「都会の青春小説が輝きも確執も懊悩も失い」という部分に関しては,吉田修一『横道世之介』という傑作があるので(確執は無いかもしれないが),おいそれと賛同するわけにはいかない。

共喰い共喰い
田中 慎弥

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文藝春秋3月号の受賞者インタビューを読むと,『共喰い』という作品中の川釣りの描写は田中慎弥の体験がベースにあるようだ。

しかし,暴力の描写については「自分のなかに暴力が内包されているわけじゃないし,周りに暴力を振るう人間もいない」(同誌376ページ)と言っているので,これは完全なるイマジネーションの産物であると思われる。インタビューでは触れられていないが,性描写についても経験がベースにあるわけではないだろう。

みうらじゅんがかつて「童貞力」ということを言った。経験が無いことがクリエイティブな力を生むということである。この説を採るならば,職歴を持たず執筆三昧という作者の生活こそがイマジネーションを育み,かえって生々しい性と暴力の描写を生み出したのではないだろうか。

『共喰い』の芥川賞受賞はいわば田中慎弥の脳力=イマジネーションの勝利と言えるのではないだろうか。

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2012.02.13

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読んだ件

だいぶ前にツマが買ってきて読み終わっていた,カズオ・イシグロ『私を離さないで』(土屋政雄訳,ハヤカワepi文庫)を,今度は小生が読んでみた。

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これは映画にもなっているし,映画になったとき,NHKでこの作品を巡るドキュメンタリーが放映された。

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端的に言えば,この物語は「ヘールシャム」と呼ばれる施設で育った「提供者」キャシー,ルース,トミーの三角関係を描いた物語である。「提供者」であることが,彼女らの人生に暗い影を落としている。

「提供者」とは,臓器提供を使命とするクローン人間である。オリジナルの人間と同様に絵画や詩作のような創造的活動もするし,恋愛もする。教育施設を出てからは一般の人々と交流する機会もある。だが「提供者」には避けることのできない運命が待っている。

『わたしを離さないで』は三部構成になっており,いずれもキャシーの回想という形をとっている。第一部はヘールシャムでの,いわば学園生活,第二部はコテージとよばれる場所でのモラトリアム生活,第三部は「提供者」の世話をする「介護人」生活が描かれる。

介護人は提供者になる前の仕事であり,仲間の運命を見守る仕事である。キャシーは回想している時点では,すでに提供者となったルースやトミーの介護人となっている。しかしキャシー自身もいずれ提供者となる。

いずれ命を落とすのなら,「提供者」たちに通常の人間と同じような教育を施し,感情豊かに育てることはむしろ残酷なのではないかと思われるが,ヘールシャムでは人道的かつ文化的な教育が行われている。それは何故か,ということは第三部の終わりごろに明らかにされる。


  ◆   ◆   ◆


NHKのドキュメンタリーによれば,カズオ・イシグロがこの作品を執筆することになったきっかけはクローン羊ドリーの登場だったということである。

オリジナルの人間とクローン人間の運命の違いについてまず考えさせられる作品だが,小生などはさらに,家畜とペットの境界線は?ということを思ったりした。


  ◆   ◆   ◆


特殊な運命の中で生きる人々の心理を描いた,せつない話というと,萩尾望都を思い出すのだが,googleで「わたしを離さないで 萩尾望都」で検索すると,検索結果がウジャウジャ出てくる。同じことを思っている人は非常に多い。

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2012.02.10

787に乗ったわけで

知っている人も多いと思うが,2012年1月23日からANA羽田=山口宇部線に787が導入されている。

で先日,東京出張の際に乗ってきた:

Dsc_0522s
↑山口宇部空港で待機中の787

これが噂のエンジンである。
ロールス・ロイス製トレント1000なのかゼネラル・エレクトリック製GEnxなのか,よくわからんのだが,吹き出し口がギザギザしているのが特徴。吹き出した空気の速度にばらつきを与えて騒音を減少させるのだそうだ:

Dsc_0527
↑エンジン拡大図

内部は広い。窓も大きい。

一般の座席は2席,4席,2席の配置で,全席,モニター付き。国際線に乗っている気分である。

天井照明はなぜか虹色。

降りるときに撮影したのが下の2枚。
もちろん,電子機器使用がOKになった後で撮った:

Dsc_0535s

Dsc_0531s
↑機内の様子

そのうち,この機体も普及して珍しくなくなるだろうが,今は乗ったら土産話になる。

Dsc_0534s
↑羽田61番ゲート到着後の写真

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2012.02.07

長崎土産

一昨日、長崎ランタンフェスティバルに行ったわけだが、そのときのお土産を並べてみる。

博多でも買えるのだが,やはり長崎で買うことに意義があるだろうという「福砂屋のカステラ」:

長崎土産

しっとりしていて旨い。底にはちゃんとザラメがある。しっとりした本体を食べている途中でザラザラガリガリするのが乙。

これも長崎の味。岩崎本舗の「角煮まんじゅう」。一番人気の「大とろ角煮まんじゅう」を買ってきた。

長崎土産

大とろ角煮まんじゅうは2011年のモンドセレクション金賞受賞。舌でとろける,やわらかい角煮をふんわりした皮で挟んだ絶品である。

あと,これは萬順の「脆麻花 よりより」。小麦粉と砂糖を練って捩って,油で揚げた菓子である。

長崎土産

見た目は何か柔らかそうだが,実はカッチカチ。歯が弱い人は要注意だが,素朴な味わいで美味しい。

長崎は旨いものばかりでいいとこだ。

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2012.02.06

長崎ランタンフェスティバルに行った件

2月5日,早起きして,ツマと一緒にバスツアーで長崎のランタンフェスティバルを見に行ったわけである。

Chinatown03

12時には長崎市内に到着したので,

孔子廟に行ったり,

Confucius01

Confucius02

オランダ坂に行ったり,

Hollanderslope

グラバー園に行ったり,

Glovergarden02

というように,まずは普通の長崎観光をしたわけである。

そして,いよいよ長崎新地中華街や浜市アーケードへと移動。

この日,雨に見舞われていたものの,中華街はすでに大賑わい:

Chinatown00

関帝こと関羽には大量の供物が:

Chinatown01

そして,あどけない笑顔の布袋和尚こと弥勒菩薩も:

Miroku

ランタンはもっと暗くなってからの方がきれいに見えるだろう,ということで,遠方の興福寺の方を先に見ることにし,またあとで長崎新地中華街や浜市アーケードのランタンを見ることとした。

興福寺の山門にもランタンが飾ってあった。これら2体の人物は順風耳(じゅんぷうじ)と千里眼(せんりがん)と言って,ランタンフェスティバルの主役である媽祖(まそ)の従者たちである。興福寺には媽祖も祭られている。

Koufukuji01

千里眼の後ろには開法開山,隠元禅師の肖像の特大コピーが隠れていた。

Koufukuji02

興福寺を後にして,眼鏡橋経由で,再び浜市アーケードへと向かう。

眼鏡橋のまわりにもランタンが飾られていた:

Megane

眼鏡橋を渡り,川沿いを歩くと,隠元禅師のランタンが:

Ingen

5時を過ぎて周囲が暗くなってくると,ランタンが点り,町がいっそう華やかになる。
浜市アーケードは昼よりもさらに多くの人出があった:

Street

また,縁結びの神様「月下老人」が人気を集めていた:

Gekka

関羽もいるし:

Guanyu

布袋さんもいるし:

Miroku02

龍馬&お龍夫妻もいる(ここだけなぜか和風):

Ryoma

浜市アーケードでは「豚角煮饅頭」や福砂屋の「カステラ」を購入。

そして今日の観光の最後の仕上げに中華街へと向かう。

中華街へと向かう橋の上から写したのが次の写真:

Uponriver

ランタンが川面に反射して華やかさが倍増している。

当日はあいにくの雨だったが,中華街は大賑わいで押し合いへし合いの大混雑。
スマホのカメラを立ち上げるのにも一苦労だったが,なんとかランタンだけは撮れた。

Chinatown02

このあと,7時にバス乗り場に集合して,あとは一路,宇部へと戻った。
長崎を7時間も満喫できたので,バスツアーというものはコストパフォーマンスがいいなぁ,と感心した次第。

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2012.02.03

ワシリー・グロスマン『人生と運命』を読み始めた

ワシーリー・グロスマン著,齋藤紘一訳『人生と運命』を読み始めた。

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「書評は読み終わってから書け!」という意見もあろうと思う。しかしこの本,なにしろ529ページもあるので,しかもそれは第一部に過ぎないので,読み始め時の感想を忘れないうちに書いておくべきだろうと思う。


  ◆   ◆   ◆


先日も少し触れたが,この大部の小説は独ソ戦最大の戦闘,スターリングラード攻防戦を舞台とした群像劇である。

物語はドイツの捕虜収容所の状況から始まる(第一部1~6章)。モストフスコイという古くからのソ連共産党員(ボリシェヴィキ)が捕虜収容所の話における主人公である。

ここで描かれるのは囚人が囚人を管理するという収容所の異様な光景である。本来同じ立場であるはずの囚人が管理する側とされる側に分かれ,管理する側の囚人は,管理される側の囚人の生死の決定にも関わる。

ナチズムの恐ろしさは,いかにも冷酷なSS将校が囚人の命を奪っていくというところにあるのではなく,普通の人々に過ぎない管理側囚人が,同じく普通の人々である被管理側囚人を淡々と処理していくというところにある。

本文を引用するとこういうことである:

モストフスコイがとくにゾッとするほど恐ろしく思ったのは,ナチズムは方眼鏡をかけて収容所にやってくるのではない,下士官のように横柄で人々にとっては無縁なものではないということであった。 <中略> それ(ナチズム)は普通の人のように冗談を言い,その冗談には誰もが笑った。それは平民出の人間のように飾らない態度を見せていた。それは自由を奪った相手の言葉も心も知恵も極めてよく知っていた。(8ページ)

つい20年ほど前に旧ユーゴスラビア内部で内戦がおこった。仲の良い隣同士の人々がある日を境に敵同士となり,時によっては虐殺すら行った。

普通の人が淡々と恐ろしいことを始める,というのが,ナチズムに限らず(スターリニズムも同様),時として発生するわけである。


  ◆   ◆   ◆


7章からは話が変わって,スターリングラード攻防戦に移る。ヴォルガ川西岸(右岸)を死守する第62軍司令部の面々,実在の人物であるチュイコーフクルイロフといった人物の奮闘が描かれる。

第62軍の人々にとってはどれだけちゃんとした掩蔽壕を作ることができるかということが,生き残るための手段となっている。ソ連軍兵士たちが人物を評するときには,その人物と掩蔽壕がセットになって評価されたり,からかわれたりする。掩蔽壕は作った人の分身でもあるのだ。


  ◆   ◆   ◆


さて,本記事の最後に,訳者のことを取り上げる。「齋藤紘一」という名前,聞いたことが無かったのだが,かつて通産省の審議官だったらしい。ISO日本代表委員も務めている。行政官としての能力だけでなく,翻訳者としての才能にも恵まれているらしい。

小生もロシア語を学んだ者であるが,こんな大作,原著を読むことも,日本語に訳することもできない。素晴らしい才能だと感嘆するばかりである。

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2012.02.01

『怪帝ナポレオン三世』を読んだ件

鹿島茂の『怪帝ナポレオン三世』(講談社学術文庫)を読んだ。

フランス第二帝政期(1852~1870年)を描いた本である。

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鹿島 茂

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「あとがき」も含めて605頁もある分厚い本だが,読みやすいし面白い。

いわゆる左翼史観でナポレオン三世の政治家人生を要約すると,「好色の馬鹿がクーデターで皇帝になり,国民のご機嫌取りのために行き当たりばったりの政治を行い,新興プロイセンに敗北して捕虜になった」となるのだが,「それは違う。ナポレオン三世はもっと評価されるべきである」というのがこの本の論調である。

左翼史観では,

○ナポレオン一世:オリジナル

●ナポレオン三世:劣化コピー

という評価になる。

皇帝ナポレオン一世(国民投票に基づく即位なのでどちらかというと「終身大統領」)はフランス革命の成果を継承し,王や貴族の握っていたものを市民に受け渡していく役割を担った偉大な人物であるのに対し,ナポレオン三世はというと,ただの馬鹿で,国民を浮き足立させ,国力を弱め,フランスに敗戦と混乱をもたらした人物,という扱いである。

こういう悪評を定着させたのは同時代人のヴィクトル・ユゴーとカール・マルクスの両名である。


  ◆   ◆   ◆


しかしながら,本書を読むと,ナポレオン三世の評価は一変する。

「好色」の点は変わらないが,若いころに影響を受けた「サン・シモン主義」に根差した,民衆の生活向上のために社会の改革を行うという意志を持った「世界で最初のイデオロギー的な君主」(本書221頁)だということがわかってくる。

ナポレオン三世は1844年に『貧困の根絶』を著し,


  • 国家予算はモニュメントの建立や大規模な軍隊の維持といった非生産的なことに使ってはならない

  • 産業振興や労働環境の改善に用いられるべきである

  • その結果として新たな富が生まれ,大衆の貧困が根絶される


と主張している(本書244頁)。

そのような考えの下で行われたのが,労働者住宅(1852年)やリハビリ施設(1855年)の建設,無償教育の保障法(1850年)や老齢年金(1850年)といった無数の福祉法の施行である。左翼史観ではこうしたナポレオン三世主導の社会保障政策についてわざと目を閉ざしている。

ペレール兄弟によるクレディ・モビリエの設立,すなわち無担保で長・短期の信用貸しを行うベンチャー・キャピタルの設立の認可もまた,ナポレオン三世の「サン・シモン主義」政策の一環である。クレディ・モビリエの登場は鉄道建設ブームを引き起こし,フランスの産業基盤整備に貢献した。

オスマンによるパリ大改造もまた,ナポレオン三世の抱く労働者ユートピアの夢を実現する一策である。パリ大改造はパリを無秩序な開発から解放し,その衛生環境を向上させた。

ナポレオン三世はフランスの「労働運動の父」(本書472頁)でもある。ロンドン万博(1862年)に労働者の代表200人を派遣し,イギリスの労働環境の視察を行わせた。これを機に労働運動が活性化し,労働者の団結権を認める法案が成立(1862年)。また,1864年,ナポレオン三世は労働者インターナショナルのフランス支部設立を認可した。


  ◆   ◆   ◆


このように社会改革に関しては偉大な君主だったのだが,ただ一点,軍事的才能が無かったことが後の評価に響いているのだと小生は思う。

イタリア戦争・ソルフェリーノの戦いにおけるナポレオン三世の指揮の無能っぷりが披露されている(本書443~446頁)が,それよりもやはり,普仏戦争における,フランス軍の連戦連敗が,ナポレオン三世の軍事面での無能さを強く印象付けている。

もちろん,普仏戦争の敗北は戦地で指揮を執る将軍たちやパリで留守を守っている皇后ウージェニー(エウヘニエ)にも原因があるのだが,最終的な責任はナポレオン三世に帰されるべきだろう。

普仏戦争の敗北が,ナポレオン三世のそれまでの功績を覆い隠してしまっていると思う。


  ◆   ◆   ◆


1873年1月,ナポレオン三世は亡命先のイギリスで膀胱結石が原因で死去する。葬儀にはフランスから1万人以上が駆け付けた。その中には労働者代表団88人も含まれていた(本書584頁)。ユゴーとマルクスがいかにナポレオン三世を悪く言おうとも,当時の労働者たちがナポレオン三世をどのように評価していたかがわかる記述である。

鹿島茂は最後(本書588頁)にこう結ぶ:

ナポレオン三世こそは「評価されざる偉大な皇帝」なのである。

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本屋に行くと,予定外の本まで買ってしまう件

本の流通量のかなりの部分をアマゾンなど,ネット書店が占めているという。

しかし,実際にリアル書店に行くと,予定外の本にまで目が行って,結局,多めに本を買ってしまうという現象が発生する。

ネット書店では売れ筋の本や関連書籍などのリコメンドによって,購入者が目的の本以外も購入するという仕組みが作られているわけだが,ネット書店とリアル書店とでは一度に視野に入ってくる本の数が違いすぎる。

何を言いたいかというと,小生の場合,宮脇書店まで『へうげもの 14服』を買いに行って,

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そのあと,店内をうろうろした結果,気がつくと,

乃木大将の実像に迫った,古川薫『斜陽に立つ』と

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スターリングラード攻防戦下の物理学者一家を描いた,ワシリー・グロスマン『人生と運命』

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の2冊をも買ってしまったわけである。

2月中旬からラオスだのインドネシアだのに行くというのに,読みこなす時間あるかしら?

本屋ってすごい。

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田中慎弥『共喰い』,バカ売れの件

今日の宇部日報によると,県内では田中慎弥先生の『共喰い』がバカ売れで,各書店で品切れ中という話である:

芥川賞『共喰い』売り切れ 県内作家,発言で著書に注目 (宇部日報,2012年1月31日)

この記事によると,小生が良く通う宮脇書店宇部店では入荷分が全て予約でいっぱいになり,店頭に並ぶことがなかったという。それに加えて連日,問い合わせが絶えないようである。

集英社発表によると,『共喰い』は増刷で累計15万部になったという。

あの,笑顔のない記者会見が,かえって好感を読んだのではないかと思う。話題性だけで売れているという批判はあるだろうが,まず,人の目に触れる機会が増えたことが重要である。


こういう出版界の朗報が聞かれる一方で,週刊ブックレビュー終了という悲報も。

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