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2012.01.24

田中慎弥先生の受賞後第1作は「竹やぶ」

なんか産経新聞が批判しているらしいけど,本人の嬉しさがにじみ出ていた,非常に良い記者会見だったじゃないですか,田中慎弥先生。

同じく下関の直木賞受賞作家・古川薫は田中慎弥の文体を「下関の言葉を文学に昇華させた」と激賞したいたらしい。

昨年の西村賢太といい,新型無頼作家の時代が始まったのではないかと思う。

で,田中慎弥の受賞後第一作であるが,毎日新聞の「田中慎弥の掌劇場」という欄に掲載された「竹やぶ」という短編小説がそれである。

短いからあらすじは書かない。雰囲気だけ書いておく。

下関弁は出ない。とくにオチがあるわけではない。疑問を抱えたまま終わる。

読み終わって,後藤明生とか黒井千次を思い出して再読したくなった。


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そういえば,黒井千次は田中慎弥のことを「これだけの力量のある新人はめったにいない」と激賞していたっけ。

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2012.01.09

清盛の父・祖父は大金持ちの軍人貴族

1990年12月1日,古河市の市制40周年を祝う講演会の中で,司馬遼太郎は,鎌倉幕府の成立以降が本当の日本の歴史だと語った※。

武士とはもともと庶民,武装した農場主で,その人々が支配権を握った鎌倉時代以降がわれわれ日本人の本当の歴史の始まりなのだと。

(※『司馬遼太郎が語る日本 未公開講演録愛蔵版II』(朝日新聞社,1997年)所収「鎌倉武士と北条政子」)


大河ドラマ「平清盛」の第一回を見て思ったのは,武士を庶民側の存在として強調して描いているということである。血みどろになって働かないといけないし,服はぼろぼろだし,家は質素だし。

とくに庶民の側だということがわかりやすく表現されているのは貴族との対比である。

清盛の父・忠盛(中井貴一),祖父・正盛(中村敦夫)は関白・藤原忠実(ただざね,演ずるは国村隼)の牛車の前ではヘコヘコせざるを得なかった。また,常日頃,「王家の犬」と呼ばれ,白河院に逆らったら誅滅されるのではないかという恐怖感の下で暮らしていた。

と,まあ,「貴族とその他」しかいない世の中で,武士は武力はあっても「その他」の一員に過ぎないんですよ,という描かれ方だった。

だが,海音寺潮五郎『武将列伝』の「平清盛」の章を読んでいると,また違った印象を受ける。

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当時の一般の武士に関しては,司馬の言うように庶民の一員,武装した農場主という側面が強かったのだろう。しかし,正盛・忠盛に関しては別だと思う。むしろ位は低くとも既に貴族の一員になっているという印象である。

清盛が生まれたのは1118年(元永元年)である。このときまでに祖父・正盛は隠岐守,若狭守,因幡守,但馬守,丹後守,備前守と国司を歴任しており,立派な中級貴族である。1117年(永久5年)には従五位上に昇っている。

また,忠盛も既に18歳の時に従五位下に昇っており,1117年(永久5年)には伯耆守兼右馬権頭となっており,これも立派な中級貴族である。

国司というのは非常に実入りの良い仕事である。中級貴族の間では国司任官を望む声が強かった。正盛・忠盛は国司を歴任することにより,大変な蓄財をしていたと思われる。その富を以って,白河院,鳥羽院に取入ったというのが,歴史家の唱えるところである。

大河ドラマがこれから平清盛をどのように描くか楽しみであるが,今述べたことをベースに考えると,祖父と父の軍事力と財力とコネを最大限に生かし,いわば三段ロケット方式で政治の頂点に至った人物というのが実態なのではないかと思う。

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白河院ご荒淫:清盛落胤説

昨日,「平清盛」を見た。

「龍馬伝」以来,大河ドラマの撮り方が変わってきた。カメラワークも良くなったし,あとは「タイムスクープハンター」のように,メイクがリアル路線になってきたのも良い。

とくに今回は貴族たちに白粉(おしろい),眉無しが導入されるようになったのが好印象。杏とか,りょうとかの眉が無かったのはあの時代っぽくて良い。あと,国村隼が白粉でメークしていたのも貴族っぽくて良い。あとは全員鉄漿(おはぐろ)をやってもらえるともっといいんだけど,そこまでやると演じる側も見る側も衝撃が大きすぎるか。

「平清盛」第1話では,清盛出生の秘密がとりあげられた。

白河法皇が荒淫で清盛も崇徳天皇もご落胤という説はわりと知られた話である(清盛落胤説)。

海音寺潮五郎の『武将列伝』の「平清盛」の章でも紹介されているが,二つの清盛落胤説がある:

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一つは平家物語の説。

白河法皇は寵姫・祇園女御(ぎおんにょうご)のもとに通うとき,いつも平忠盛を供に連れていた。

ある雨の夜,白河法皇が祇園女御のもとに行く途中,前方に不気味な妖怪のようなものが見えた。白河法皇はその妖怪を殺すよう,忠盛に命じた。忠盛はその妖怪は狐狸のたぐいであり,殺すのは不憫であると考え,生け捕りにすることにした。

生け捕ってみると,その妖怪は実は老僧であった。白河法皇は無用な殺生を避けた忠盛の武勇と沈着冷静さを賞賛し,祇園女御を忠盛に賜ることとした。

祇園女御は白河法皇の子を懐妊しており,白河法皇は忠盛に対し,「その子が女ならば私の子とし,男ならばお前の子とする」と言った。果たして生まれたのは男の子であった。これが後の清盛である。


もう一つは源平盛衰記の説。

妖怪かと思ったら老僧でした,という忠盛武勇伝は同じだが,賜ったのは兵衛佐ノ局(ひょうえのすけのつぼね)だったというのが違うところ。こちらもやはり懐妊していた。生まれたのが清盛,ということである。


いずれも歴史書ではなく物語の記述なので,歴史家はとりあわない。だが,物語としてはやはり面白い。今回の大河ドラマでも形を変えて取り入れられたわけである。


  ◆   ◆   ◆


清盛も崇徳天皇も白河法皇のご落胤,というのはあまりにも乱れていて,ありえないだろー,と現代の感覚では思う。

だが,小生としてはこれはありうることだと思っている。そのヒントとなるのが,鎌倉時代の日記「とはずがたり」である。

後深草院に仕えた女房二条の書いた日記である。白河法皇や平清盛とは全く無関係なのだが,この日記に描かれているドロドロの恋愛関係を見ていくと,平安・鎌倉の宮廷はこんなものだろうという確信を抱かざるを得ない。

この二条という女性,西園寺実兼(さいおんじ・さねかね,通称:雪の曙)と関係をもちつつ,後深草院の寵を受けて皇子を生む。性助法親王(しょうじょ・ほっしんのう,通称:有明の月)とも鷹司兼平(たかつかさ・かねひら,通称:近衛大殿)とも関係を持つ。後深草院が嫉妬に駆られたかというと逆で,二条が他の男と関係を持つのを喜んでいるフシさえある。

より詳しい解説はドナルド・キーン『百代の過客』の「とはずがたり」の章をご照覧ありたい:

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こういうのを見ると,白河法皇と璋子の密通なんてありそうなことと思う。白河院,ご荒淫ならせ給うらん。

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2012.01.08

松丸本舗・本の福袋:杉浦康平

正月は静岡の実家に行ったり、栃木の妻の実家に行ったりしたのだが、その途中で東京のオアゾにある松丸本舗に寄った訳である。

目的は、本の福袋の調達。

いつもいつも正剛ちゃんのセレクトに従い続けるのも何でございますので、今回はグラフィック・デザイナーの杉浦康平のセレクトしたものを購入:

松丸本舗・本の福袋:杉浦康平

開けてみると,眼もくらやむような豪華な装丁の本が4冊登場:

宇宙を叩く―火焔太鼓・曼荼羅・アジアの響き (万物照応劇場)宇宙を叩く―火焔太鼓・曼荼羅・アジアの響き (万物照応劇場)
杉浦 康平

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マンダラ発光―杉浦康平のマンダラ造本宇宙マンダラ発光―杉浦康平のマンダラ造本宇宙
臼田 捷治

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ダライ・ラマ六世 恋愛彷徨詩集ダライ・ラマ六世 恋愛彷徨詩集
ダライ・ラマ六世 ツァンヤン・ギャムツォ 今枝 由郎

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虹と雲―王妃の父が生きたブータン現代史 (ブータン・チベット仏教文化叢書)虹と雲―王妃の父が生きたブータン現代史 (ブータン・チベット仏教文化叢書)
アシ・ドルジ・ワンモ・ワンチュック 今枝 由郎

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本を並べているだけで,おめでたくもスピリチュアルな気持ちになってくるのである。

正剛ちゃんのセレクトに任せておいたら,こういう本に触れる機会は無かっただろうと思う。


  ◆   ◆   ◆


うしろの2冊だけ紹介する。

『ダライ・ラマ六世 恋愛彷徨詩集』と『虹と雲―王妃の父が生きたブータン現代史』は,チベット文化研究者として名高い,今枝由郎氏による訳書で,これまであまり知られていなかったチベット文化圏の歴史の一面を知ることができる本である。

ダライ・ラマ六世ツァンヤン・ギャムツォはブータン人の血をひく人物。歴代のダライ・ラマの中でも異色の存在で,還俗し,恋愛に惑溺し,最後には廃位された。そのツァンヤン・ギャムツォの生涯と詩を紹介するのが『ダライ・ラマ六世 恋愛彷徨詩集』である。

『虹と雲―王妃の父が生きたブータン現代史』は先代のブータン国王の王妃の一人,アシ・ドルジ・ワンモ・ワンチュックが,父アシ・ドルジ・ワンモ・ワンチュックの人生を聞き書きしたものである。

日本ではブータンを幸福大国と呼び習わしているが,ずっと平穏な歴史が続いていたわけではない。ここ一世紀の間,国内外に様々な争いがあったことがこの本を見るとわかる。

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2012.01.05

マクロミル・チキンカレー

新年のご挨拶として,マクロミル社からこういうのが来た:

Macromill

「マクロミル・チキンカレー2012」

カレンダーとかはよくあるが・・・。

「リサーチもいいけどカレーもね!」

だそうです。

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