日本建築学会・総合論文誌,ひっそりと廃刊
日本建築学会がほぼ年一回のペースで刊行してきた「総合論文誌」が,2012年1月刊行の第10号をもって廃刊となることが決まった。
かの偉大なるアニリール・セルカンの論文を掲載(総合論文誌第7号(2009年1月),110~113ページ)するという壮挙を成し遂げたことでも話題の論文誌だった。
建築学が抱える問題を学際的・総合的に論じるための論文誌として2003年1月に第1号が刊行された。
第1号のチーフエディター,村上周三氏(第49代日本建築学会会長)は第1号刊行にあたって次のように慶賀の弁を述べていた:
「建築学が抱える今日的問題を幅広い視野から総合的に論じることを目的にした本誌の開設は,新しい会員サービスであり,日本建築学会の活動を以前にも増して活性化するものと期待され,慶賀にたえない。」「今後この総合論文誌が,建築学を総合的に語り,議論する場として,大きく発展することを期待してやまない。」
だが,会員の反響は芳しくなかったようである。第1号以降しばらく「建築雑誌」のおまけとして配布されていた間は問題は顕在化していなかったが,2011年1月刊行分から希望購読制へ移行した途端に,購読者・投稿者が極めて限られていることが判明した。
そもそも,日本建築学会には機関誌としては「建築雑誌」があり,論文集としては,いわゆる黄表紙:「日本建築学会(構造系/計画系/環境系)論文集」があり,さらに技術論文集としては,いわゆる白表紙:「技術報告集」がある。
総合的なテーマには機関誌,専門的なテーマには「論文集」「技術報告集」という受け皿が既にあって,「総合論文誌」の存在意義は不明確であったといえる。
アカデミズムにしてはわりと早い段階で撤退を決定したことは評価できる。
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