Greg Eganの新作出たよ
グレッグ・イーガンの最新作,"Clockwork Rocket"が出たので購入。読み始めたところだが,軟体動物のような知的生物たちの行動がカワイイ。
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Yalda(ヤルダ)という少女が主人公。Yaldaたちは自由に体の構造を変化できる(胴体から複数の手や足を自在に生やすことができる)知的生物であり,光を受けたり穀物を食べたりして生きているらしい。ちなみにYaldaというのはイランの冬至の祭りのことである。先年"Zendegi"を書いて以来,イーガンはペルシャ語にも愛着を持っているようだ。
Yaldaたちの宇宙は直交(Orthogonal)宇宙で,光は一定速ではない。紫色の光は速く,赤い光は遅い。この直行宇宙ではタイムトラベルも可能である。
またこの世界では植物は闇夜に光を発することで食糧を生み出している。花は朝になると花弁を閉じ始めるというわけで,われわれの世界とだいぶ違う。
Yaldaの世界には危機が訪れている。Hurtlers(衝突体群)と呼ばれる天体が襲来しつつある。しかし,Yaldaたちの文明はそれに対処しうる技術を持っていない。
そこで,タイムトラベルの登場である。宇宙船を高速で飛ばし,何世代にもわたる旅行をさせる。その間に新たな技術を発見させ,タイムトラベルで現代(ほんの数年後)に帰還させる。そうして,得られた未来の技術によって世界を救おうというのである。
第1章はYaldaがお父さん(Vito)とともに,おじいちゃん(Dario)を治療目的で森に連れて行こうとする話である。おじいちゃんは体が弱っているのだが,それを直すためにはこげ茶色とか藤青とかサフラン色とか広範囲スペクトルの光が必要だというのが面白い。そういう光が得られるのは森だというわけである。
森への道すがら,Yaldaたち知的生物の生態,例えば双子で生まれるらしいということ,また光が一定速ではないことなどが分かってくる。
文体は"Zendegi"よりも易しいと思うのだが,他の読者はどう思うだろうか?
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