ラオスの電力に関する情報に一貫性が無い件
今,仕事でラオスの電力の統計データを集めているのだが,値がばらばらで困っている。
米国にEnergy Information Administration (EIA)という組織があって,ここでは世界のエネルギー統計情報を収集し公開している。ここで,ラオスの発電量・消費量などを調べてみたのだが,前に見た時と今回とでは1998年以降の値が全然違うので驚いた。
まず↓これが2010年1月に見たときの値をグラフ化したもの:
Figure 1 (EIA, January 2010)
つぎに↓これが今回見た値(2010年6月30日に更新したらしい)をグラフ化したもの:
Figure 2 (EIA, June 30, 2010)
EIAでは発電量(Production)から輸出量(Exports)と配電ロス(Distribution Losses)を引き,輸入量(Imports)を足したものを消費量(Consumption)としている。
しかし,上の図で1998年から2003年にかけて消費量が負の値になるのはおかしい。
EIAはラオスの国営電力企業Electricite du Laos (EdL)の値を出典としているので,EdLのサイトで調べようとしたら,こういう「残念でした」的なものが出てきた:
EdLに知り合いがいないわけでもないから,今度問い合わせようかと思う。
EdLがダメでもラオスの統計局(Lao Statistics Bureau)があるので,そちらを調べてみた。ここのYear BookのCommerceやIndustryのデータをもとにグラフを作ると,こんな感じになる:
Figure 3 (Statistics Bureau, Lao PDR: Year Book)
ラオスの統計局は輸出・輸入量に関しては,EIAと同じくEdLのデータを使っているらしい。そして発電量に関してはMinistry of Industrial and Handicraftの値を使っているらしい。
Figure 3のデータはとびとびになっているが,照合できるところだけ比較すると,発電量・輸入量に関しては図2,すなわちEIA2010年6月の値とほぼ同じである。
輸出量は全然違う。輸出量が発電量とほぼ同じになってしまうことはないと考えると,EIAがEdLから得たデータ(輸出量)に間違いがあったのではないかと思う。
他に公開されているデータはないかと調べたら,ラオスのMinistry of Energy and MinesのDepartment of Energy Promotion and Development (EPD)が作っているサイト,Powering Progressの"Power Exports and Imports 1990-2008"というページにデータが出ていた。それを書きなおしたのが下のグラフである:
Figure 4 (Powering Progress)
Powering ProgressのデータはMinistry of Energy and Minesのデータであり,Ministry of Energy and MinesはEdLからデータを得たのだろうと思う。Figure 4のGenerationとFigure 1のProductionは一致している。
◆ ◆ ◆
比較しながら考えたのだが,いずれの公開データもデータ源はEdLなのだろうと思う。そして,データ源が同じであるにもかかわらず,結果の一部が一致し,一部が異なっているというのは,結局は集計時のエラーなのだろうと考えられる。
とりあえず,各関係機関に照会でもしようと思う。
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