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2011.05.15

住宅用太陽光発電システムの普及実態について

このブログは本来は趣味のことだけ書く場所なのだが,たまには自分のやっている研究の一端でも書いてみようと思う。

本記事で取り上げるのは,「住宅用太陽光発電システムの普及実態」の調査結果。

公的統計によるマクロな話と,ネットリサーチによるミクロな話の2件がある。


  ◆   ◆   ◆


まず,マクロ編。

詳細は「住宅用太陽光発電システムの普及実態 マクロ編:太陽光発電システムの導入に対する諸因子の影響で紹介しているので,ここではかいつまんで説明する。

最初に結論を述べると,

「住宅用太陽光発電システムの普及はマクロに見ると日照時間と戸建住宅の割合に左右される」

都道府県別の導入実績(設備容量の累積値)は下図の通りなのだが,これは各都道府県の年間日照時間と戸建住宅の割合によってある程度説明できる。

都道府県別の導入実績

日照時間・戸建住宅の多寡が,太陽光発電システムの導入実績に影響を与えていると仮定して重回帰分析を行った。結果は次式の通りとなった:

s = 0.072 d + 0.690 h -142.7

ここで,

s : 1000世帯あたりの設備容量累積値 [kW / 1000世帯]
d : 日照時間 [h]
h : 戸建住宅に住む世帯の割合[%]

である。

回帰式の説明力自体はそれほど大きくなく,修正済み決定係数(Adjusted R^2) = 0.390となったが,日照時間はp < 0.001で有意,戸建住宅世帯の割合はp < 0.01で有意であり,太陽光発電システムの導入実績に強い影響を与えていると言える。

まあ,集合住宅だと意見がまとまらない限り導入できないし,日照時間が短いと,導入効果が無くなる,ということを考えれば当たり前の結論ではある。


  ◆   ◆   ◆


つぎにミクロ編。

詳細は「住宅用太陽光発電システムの普及実態 ミクロ編:太陽光発電システム導入世帯の属性で紹介しているので,これもかいつまんで説明する。

マクロミル社の住居モニタ(戸建持家の太陽光発電導入世帯300,同じく戸建持家の非導入世帯300)に対し,アンケートを行ったところ,居住地域や家屋に関しては太陽光発電導入世帯と非導入世帯の間であまり明確な違いが見られなかった。しかし,年収に関しては明確な違いが見られた。

スライド7 回答者の属性(世帯人員・年収)

太陽光発電世帯の年収の最頻値は500万円以上700万円未満であるのに対し,非導入世帯のそれは300万円以上500万円未満である。

世帯の経済的状況が高額な太陽光発電システムの導入に強く影響を与えていることはまあ当然。


導入された太陽光発電システムの製造元・定格出力を調べた結果は次の通りである。

スライド11 太陽光発電システムの仕様

製造元のトップはシャープで,三洋・京セラ・三菱電機と続く。

製造元の中のその他の企業としてはホンダや長州産業,そして中国企業のサンテックパワーが挙げられていた。このほか,約1割の世帯は製造元を把握していないこともわかった。

高額な商品であるにもかかわらず太陽光発電システムの定格出力に関しては把握していない世帯が約3分の1を占めていることも判明した。


太陽光発電システム導入によって,どれだけ省エネ効果があったのかということを買電量の差で調べた結果が次の図である。

スライド16 夏期の買電量の比較(西日本)

つまり,西日本(山陽・四国・九州地方)においては太陽光発電導入世帯の買電量は非導入世帯のそれよりも明らかに低く,省エネ効果ありということがわかる。

付け加えておくと,太陽光発電導入世帯はさらに「売電」による収入も得るわけであるから,より大きな経済的メリットを享受することになる。

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