『暗殺の森』(ベルトルッチ)を見てきた
YCAMこと山口情報芸術センターで『暗殺の森 (Il conformista)』(ベルナルド・ベルトルッチ,1970年)を見てきた。
【あらすじ】
舞台は1930年代~1943年のイタリア。ファシスト党での出世をもくろむマルチェロ・クレリチ(Marcello Clerici)は資産家の娘,ジュリア(Giulia)と結婚する。
新婚旅行でパリに向かう途上,かつての恩師でパリ在住のルカ・クアドリ(Luca Quadri)教授の暗殺を指示される。マルチェロはクアドリ教授への接触を図るが,その過程でクアドリ教授夫人であるアンナ(Anna)と情を通じるようになる。妻のジュリアもまたアンナと親しくなる。
ある日,マルチェロは,クアドリ教授夫妻が別荘に行く予定であることを知る。マルチェロはファシスト党の工作員であるマンガニエロ(Manganiello)にその情報を伝えると同時に,アンナに教授と一緒に別荘に行ってはいけないと警告する。
しかし,ある雪の日,クアドリ教授とアンナは連れだって自家用車で別荘に向かう。マルチェロはマンガニエロが運転する車でクアドリ夫妻を追う。そしてマルチェロは,森の中でファシストの待ち伏せに遭ったクアドリ教授とアンナが殺害される一部始終を見届ける・・・。 (あらすじ終わり)
◆ ◆ ◆
上述のあらすじには書いていないが,打算づくでジュリアと結婚したり,自分の母親の愛人をマンガニエロに殺害させたり,とマルチェロの冷酷っぷりが映画では描かれている。
その一方で,クアドリ教授の殺害には自らは手を下さず,またアンナを救おうとしたものの結局は見捨てる等,狡さも同時に描かれている。こういうゆがんだ人格になってしまったのは,どうも幼少期にリノ(Lino)というホモセクシュアルの青年に出会ってしまったことが原因らしい。
表面的には「ファシスト政権下における反体制派暗殺」という非常に政治的な事件がこの映画の主題のように見えるが,どちらかというと,「幼少期のトラウマがゆがんだ人格を形成し,周囲を不幸にする」という,時代とか場所を超えた問題が主題である。
あと,付け加えておくと,この作品は非常にスタイリッシュである。主人公にせよ,その他の登場人物にせよ,衣裳は洗練されている。さすがイタリア。また,にぎやかで美しいパリの街と重厚だが寒々しいファシスト党施設内部の対比もメリハリが効いていて良い。「ラストエンペラー」でもそうだったが,ベルトルッチの映画では映像美が重要な要素である。
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