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2011.05.19

((キラキラ|DQN)ネーム|暴走万葉仮名)問題を考える

少し前に「暴走万葉仮名」(2007年に呉 智英:くれ・ともふさが命名)と呼ばれていた難読名前(「大宙:てん」とか「苺姫:きらら」)のことを今は「キラキラネーム」と呼ぶのだそうだ。知らんかった。ネット上では以前から「DQNネーム」と言われていたとか。

以前は読みにくいだけが問題だったのだが,アメーバ・ニュースによると就職にまで弊害が生じているという:

「DQNネーム」が就活苦戦理由と本人分析(アメーバ・ニュース,2011年5月17日)

名前のせいじゃない可能性も大きいと思うが,小生が採用担当者だったらどう思うだろうか?複数の就職希望者がいて,甲乙つけがたい場合,無難な名前の方を採ると思う。

それは結局,小生自身も世間様も,「暴走万葉仮名」/「DQNネーム」/「キラキラネーム」に対する偏見を持っており,ビジネスを展開していく上で心配になるからである。

その偏見とは何か? それは,この手の名前は「自分らしさ」=「オレ様化」の強度を表しているに違いないという見方である。


<「キラキラネーム」∝「オレ様強度」という考え方のメカニズム>

「キラキラネーム」/「暴走万葉仮名」が「オレ様強度」に比例するという説(仮説)はもともと呉智英の説いたものであるが,それを敷衍して上述の「偏見」のメカニズムを考えてみると,こういうことになると思う:

(1) わが子が特別な存在である(あってほしい)という親の気持ち
(2) 「キラキラネーム」による命名
(3) 個性的な名前に応じた,個性を重んじる家庭内教育
(4) その裏返しとしてわがままに育つ(オレ様化する)子供
(5) 個性が強く,協調性に欠ける人間に成長

この(1)~(5)のようなことを思っている人はかなり多いと思う。

このメカニズムは単に思い込みで作り上げたもので,何ら科学的な裏付けはない。だが,そもそも偏見というものは科学的根拠を持たないものである。信念と言っても良い。

このような偏見/信念は根強い。

偏見/信念の持ち主は,偏見/信念に沿ったものしか見ないので,「キラキラネーム」の持ち主が並みの行動をしていても偏見/信念は揺るがない。「キラキラネーム」の持ち主がトラブルを起こせば,偏見/信念は強化される。

偏見/信念を押しのけるには他人より秀でたところを見せ続けるという不断の努力が必要だろう。


<「キラキラネーム」を与える親の心構え>

命名は自由なので,例えば「キラキラname」というサイトを利用して親が子に「キラキラネーム」をつけてもいっこうにかまわない。

しかし,上述した偏見を持つ人々は多い。「DQNネーム」という言葉が根強く使われていることでもよくわかる。世間の風は割と冷たい。「キラキラネーム」がだれからも歓迎されるかというと大間違いである。「キラキラネーム」をつける親にはそれ相応の心構えが必要。

端的に言えば,普通の名前の子供よりも立派に育てなければならないという心構えである。「立派に」というのは勉学でもスポーツでもよいので一芸に秀でるように,ということである。

また,「協調性」を持たせることも重要である。「キラキラネーム」=「オレ様」という偏見はおそらく根強い。この偏見に対峙するためには個性と協調性のバランスが必要である。

こういう心構えが無く,幸せになってほしい程度の気持ちしかないのであれば,子供のためにも,従来通りの命名をしたほうがいい。


<「キラキラネーム」を持ってしまった場合の対策>

立派な人間にならざるを得ない。

学者の世界の話になるが2例挙げておこう。


江崎玲於奈(えさき・れおな)という物理学者がいる。固体でのトンネル効果を実証した功績によりノーベル物理学賞を得た。

「玲於奈」という名前は獅子(Leo)に由来するという話があったり,レオナルド・ダ・ヴィンチに由来するという話があったりするが(本人が欧米では"Leo Esaki"と名乗っているところからすると前者),いずれにせよ「キラキラネーム」/「暴走万葉仮名」の類に入れられてもおかしくない。

ところがなぜ,「キラキラネーム」扱いされないのかというと,本人が偉いからである。


玉田俊平太(たまだ・しゅんぺいた)という経営学者がいる。関西学院大学の教授であり経済産業研究所のファカルティフェローでもある。

お分かりだと思うが,かのシュムペーターに由来する名前を持つ。「暴走万葉仮名」の類には入らないが,特殊名前であることは間違いない。欧文で論文を書くとき,この人はSchumpeter Tamadaと署名する。そもそもSchumpeterはファミリーネームなんですけど,という突込みはさておく。

本人が「親の因果が子に報い」と発言(2006年10月30日,GATIC 2006会場にて)していたことでもわかるように,努めてイノベーションの専門家たらんとしている。名前負けしないような努力を積まなければならない命運が正のフィードバックになっている好例である。


ここには学者の例しか挙げていないのだが,たとえば少し昔,スノボーの世界に「キラキラネーム」的な名前の兄妹弟がいて,日本トップの実力を誇っていた。名前への突っ込みはあったものの,それによって彼らの前途に支障が生じたという話は聞かない。

まあ,何かに秀でればキラキラネームなど問題にならないということで。

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