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2011.04.23

レジーヌ・ペルヌー『テンプル騎士団』(文庫クセジュ)読了

随分前のことになるが,クリスマスプレゼントとしてツマから貰った松岡正剛セレクト「天界物語八冊組」(松丸本舗ブックギフト・プロジェクト)に入っていた一冊に,レジーヌ・ペルヌー著・橋口倫介訳『テンプル騎士団』(文庫クセジュ)があった。

テンプル騎士団 (文庫クセジュ 604)テンプル騎士団 (文庫クセジュ 604)
レジーヌ・ペルヌー 橋口 倫介

白水社 1977-03
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ながらく手つかずのままだったが,今週の木・金と,東京に出張した際,移動時間を使って読みおえた。

内容はテンプル騎士団の設立から滅亡までの200年間の歴史である。

「十字軍運動の中で,巡礼保護という崇高な目的のために設立された組織が,いつしか巨大な経営組織に成長するものの,ある日突然,フランス王によって無実の罪を着せられ滅ぼされる」というあらすじで,なんか後味が悪い。

以下は読後のまとめである。

まずは,テンプル騎士団の起源と聖地における軍歴について詳しく説明している本書前半の紹介。


  ◆   ◆   ◆


十字軍運動が盛んだったころ,聖地や巡礼者の守護,病人保護などを目的として,いくつかの騎士修道会(宗教騎士団)が結成された。最も名高いのがテンプル騎士団聖ヨハネ騎士団ドイツ騎士団の3つだった。

聖ヨハネ騎士団とドイツ騎士団が病人保護を主目的としていたのに対し,テンプル騎士団は巡礼の保護を主目的としていた。

同じ十字軍運動の中で生まれた騎士団同士だから,イスラム勢力に対して結束して対抗していたかというと,そうでもない。13世紀半ば,フリードリヒ2世が聖地エルサレムにやってきた頃にはテンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団との間で争いが同地で繰り返されていた。

フリードリヒ2世は神聖ローマ皇帝でありながらイスラムに寛容な君主で,アイユーブ朝のスルタンとの話し合いで聖地を回復した。彼に忠実なのはドイツ騎士団であり,ドイツ騎士団はまた聖ヨハネ騎士団と連合していた。

テンプル騎士団は親イスラム的なフリードリヒ2世のやり方に憎悪の念を抱いており,自然,親フリードリヒ2世的な騎士団であるドイツ騎士団・聖ヨハネ騎士団と対立するようになっていたわけである。

騎士団同士の対立をさらに激化させることになったのは,イタリア都市国家同士の争いである。地中海貿易の覇権をめぐって争っていたイタリア諸都市のうち,ヴェネチアやピサはテンプル騎士団を頼り,ジェノアは聖ヨハネ騎士団を頼った。

騎士団同士の紛争は,聖地におけるキリスト教徒の勢力を殺ぎ,イスラム勢力を利することとなった。

13世紀後半からパレスチナにおけるキリスト教徒の根拠地は次々に陥落し,1291年にイスラム勢力によってキリスト教勢力の根拠地アッコンが陥落。これで中東における十字軍運動は事実上終了する。

その後も聖ヨハネ騎士団とドイツ騎士団は長らく存続した(聖ヨハネ騎士団は現在でもマルタ騎士団として存続している)が,テンプル騎士団は1307年のある事件を機に滅亡した。

テンプル騎士団滅亡の経緯とその原因について詳しく述べているのが本書の後半である。


  ◆   ◆   ◆


1307年10月13日,フランス王フィリップ4世(別名フィリップ美男王)の命によって,フランス在住のテンプル騎士全員が一斉に逮捕された。罪状は「異端」である。

拷問によって,様々な涜神行為の供述が強要され,多くのテンプル騎士が火刑に処された。総長ジャク・ド・モレーも火刑に処された。これでテンプル騎士団は滅亡し,財産の多くは聖ヨハネ騎士団へと移管された。

この罪はでっちあげで,テンプル騎士団は無実であるというのが現在では定説である。本書の著者も「騎士団全体の無実は疑問の余地がない」と記している。

しかし,では,なぜ,フランス王はテンプル騎士団を弾圧したのか。

唯一で無いにせよ有力な動機として著者は「テンプル騎士団の財産」を挙げている。

テンプル騎士団はエルサレムにおける軍事組織であったが,その軍事行動を経済的に支えるために,ヨーロッパ全土で9000の所領を運営していた。また,エルサレムへの巡礼者や後には王侯貴族のの資産を預かり,預金証書を発行するという銀行業も営んでいた。

フランス国内に限ってみても,3000もの所領が存在していた。また,テンプル騎士団のパリ支部の「タンプル塔」は王室金庫を預かる役目をしていた。

これだけの莫大な財産は,フィリップ美男王にとっては間違いなく魅力的なものだったろう。

最終的にはテンプル騎士団の財産は聖ヨハネ騎士団に移管されることになったのだが,移管されるまでの間,旧テンプル騎士団領からの収益はフィリップ美男王の懐に入ったようである。


  ◆   ◆   ◆


それにしてもこの本が「天界物語八冊組」に入っていたのはなんか解せないが,勉強になったのでよしとしよう。

Templiersseigow

「セイゴオ」サイン入りの扉。

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