ドナルド・キーン,日本永住へ
こういう記事が朝日に出ていた。
「ドナルド・キーン教授 月末に退職 東京で著述生活へ」(2011年4月6日,朝日新聞)
日本文学研究で知られるドナルド・キーン教授(Donald Lawrence Keene, 1922年6月18日~)が4月末で教壇を離れ,その後は東京で著述に専念するという。
外国人の日本離れが続く中,日本にとっては良いニュース。
「日本文学研究」といっても,ドナルド・キーンの守備範囲は広い。古代から現代まで広がっている。さらに古来から日本文学に影響を与えている中国文学も守備範囲に入っている。
小生の手元にはキーンが編集した日本の古典のアンソロジー,"Anthology of Japanese Literature: from the earliest era to the mid-nineteenth century" (Grove Press, 1955)がある。
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このアンソロジーの特徴の一つとして,「懐風藻」などの漢詩が含まれているという点が挙げられる。高校の授業では「古文」と「漢文」は分けて教育され,「漢文」は日本の古典ではないような扱いがなされているが,キーンのアンソロジーでは日本人による漢詩もまた日本文学の重要な一要素として位置づけられているわけである。
また,空海の「請来目録」からの抜粋や観阿弥・世阿弥の謡曲が含まれていることも,このアンソロジーの特徴である。日本文学の広がりを再認識させてくれるあたり,さすがキーンである。
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