こんな時代だから読むべき本:五木寛之『他力』(講談社文庫)
「BSアーカイブス ハイビジョン特集 五木寛之21世紀・仏教への旅」というドキュメンタリーが連日放送されている。
今日放送されたのはシリーズ5回目である。9.11テロ事件の経験を引きずっているアメリカを旅しながら,「他力」「悪人正機」といった親鸞の思想の現代における可能性を探るという話である。
このドキュメンタリーで取り上げられたのが,五木寛之の著書『他力』である。法然・親鸞・蓮如らの思想のコアである「他力」の概念をベースに,現代を生きるためのヒントをつづった本である。
他力 (講談社文庫) 五木 寛之 講談社 2000-11-06 売り上げランキング : 138 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
アメリカでは9.11のテロの後,『他力』に加え,『生きるヒント』『大河の一滴』『人生の目的』のエッセンスが凝縮された"TARIKI"が出版された。同著は多くのアメリカ人に受け入れられ,2002年度ブック・オブ・ザ・イヤー(スピリチュアル部門)を受賞した。
Tariki: Embracing Despair, Discovering Peace Hiroyuki Itsuki Kodansha Amer Inc 2004-07 売り上げランキング : 669528 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本語版の同書の一説にはこのような言葉が書かれている:
私たちがいま目の前にしている世界は,国家と社会の危機だけではありません。私たちは,誰もが「精神的,または心理的に重大な危機」に直面しているという実感を抱いて生きているはずですから。(『他力』,22ページ)
つまり私たちはいま,外側からも,内側からもまさに二重の<非常時>に直面していると言うべきかもしれません。(『他力』,23ページ)
この本が書かれたのはもちろん震災よりも前なのだが,戦後最大という非常時を迎えた今こそ読むべき本だろうと思う。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 紀蔚然『台北プライベートアイ』を読む(2024.09.20)
- 『ワープする宇宙』|松岡正剛に導かれて読んだ本(2024.08.23)
- Azureの勉強をする本(2024.07.11)
- 『<学知史>から近現代を問い直す』所収の「オカルト史研究」を読む(2024.05.23)
- トマス・リード『人間の知的能力に関する試論』を読む(2024.05.22)
コメント