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2011.04.30

「日本はいつだって私が行き着く最後の港なのだ」(ドナルド・キーン)

日本はいつだって私が行き着く最後の港なのだ。(『ドナルド・キーン自伝』325頁)

ドナルド・キーンが日本に永住することになったという話題は,大震災で打ちのめされた日本人にとって,明るい話題となっている。

タイミングを合わせていたかのように,2011年2月には『ドナルド・キーン自伝』が中央公論新社から文庫として出版された。

ドナルド・キーン自伝 (中公文庫)ドナルド・キーン自伝 (中公文庫)
ドナルド キーン Donald Keene

中央公論新社 2011-02
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木曜日の晩に宇部の宮脇書店で購入して,土曜日の夕方に読み終わった。

帯に「私の人生は,信じられないほどの幸運に満ちていた」と書かれているが,若い日,日本文化に出会い,それを半世紀以上にわたって世界に対して紹介し続けていることを無上の喜びとしていることが,過剰なほどに伝わってくる好著である。

三島由紀夫安部公房との交流など興味深いエピソードばかりなのだが,小生がとくに好きなのは,角田柳作アーサー・ウェイリー(Arthur Waley)といった師や先達への敬愛の念が伝わってくる部分である。若い日にこの2人を知ったことが,ドナルド・キーンの人生を決定づけた。


  ◆   ◆   ◆


Wikipediaでも書かれているように,ドナルド・キーンは1922年ニューヨーク生まれである。スポーツが苦手だったり,15歳のときに両親が離婚するという事件があったり,少年時代にはあまりいい思い出は無かったようである。唯一,9歳の時に父親のヨーロッパ出張について行ったことが楽しい思い出だったようである。学業は優秀で,飛び級を重ねて16歳の時にコロンビア大に入学した。

日本文化にハマるきっかけは,アーサー・ウェイリー訳の『源氏物語』を読んだことだった。ナチによるヨーロッパ侵攻の恐怖の中,キーンは『源氏物語』の世界に救いを見出していた。

コロンビア大4年生の時,キーンは角田柳作の「日本思想史」を受講する。しばらくはキーンだけが受講生だけだったり,キーンの日本語力では講義内容を完全には理解できなかったりという問題があったが,キーンは角田柳作のもとで熱心に学んだ。

1941年に太平洋戦争が勃発。海軍が日本語ができる士官を育成しようとしていると知り,キーンは海軍語学校に入学する。卒業後は語学将校としてアッツ島や沖縄などの作戦に参加した。

終戦後,キーンはコロンビア大に戻り,角田柳作の下で平安文学・仏教文学・元禄文学といった広い範囲の日本の古典文学を学んだ。本田利明を題材とした修士論文を書き,1947年に修士号を取得した。

1947年,日本文化研究をさらに深化させるべく,ハーヴァード大に転じた。このとき,角田柳作は「遍参(へんざん)」という言葉を用いてキーンの転学を快諾した。

キーンはハーヴァード大で,当時の伝説的な日本学者セルゲイ・エリセーエフの講義を受けた。しかし,文学の価値に触れず,表面的・書誌的な情報の伝授に終始する講義内容には大いに失望した。

エリセーエフが角田柳作を蔑む発言をしたこともあった。これに対し,キーンは

「角田先生は日本文学について,あなたの十倍もよく知っている」(120頁)

と言い返したかったという。

この時の経験から,キーンは終生,エリセーエフを反面教師とし,その反対のスタイルで講義を行うこととした。

1年にも満たないハーヴァードでの勉学の後,キーンは英国のケンブリッジ大に移る。

同大学在学中,キーンを日本文化に誘(いざな)うこととなった『源氏物語』の訳者であるアーサー・ウェイリーと交際を始めた。キーンのウェイリーに対する敬意は大変なもので,「『源氏物語』を信じられないような美しい英語に書き直した偉大な翻訳家」(134頁),「私の霊感の源泉」(同),「天才」(135頁)と讃えている。

このケンブリッジ大留学を終えた後,キーンはついに憧れの日本に留学し,日本文化,とくに日本文学との長い付き合いが始まるわけである。


  ◆   ◆   ◆


とまあ,キーンの修業時代(1940年代~1950年代)のことをだらだらと述べてきたわけだが,こうやって記述してみると,角田柳作とアーサー・ウェイリーとがキーンの人生を決定づけたことがわかる。

1960年代には,この二人の恩人との別れがやってくる。

ウェイリーは晩年(1961~62年頃),右腕の骨折で執筆ができなくなり,かつ伴侶を失うという不幸に見舞われ,キーンとの交際を絶ってしまった(232~234頁)。角田柳作は晩年,癌になり,最後を日本で迎えようとする旅の途上,ホノルルで逝去した(1964年,271頁)。これらの出来事に対してキーンは深い悲しみを吐露している。

角田柳作とアーサー・ウェイリーへの恩返しの一つともいうべきものが次のアンソロジーである。

Anthology of Japanese Literature from the Earliest Era to the Mid-Nineteenth Century (UNESCO Collection of Representative Works: European)Anthology of Japanese Literature from the Earliest Era to the Mid-Nineteenth Century (UNESCO Collection of Representative Works: European)
Donald Keene

Grove Pr 1960-03
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1955年に出版され,米大学の日本文学の講義では必ず使用される一冊となっている。これまでに50万部は出版されているという。

この本には『源氏物語』「夕顔」の巻,『枕草子』の一節,和歌,謡曲などのアーサー・ウェイリー訳が載っているほか,世阿弥の書のキーンと角田柳作の共訳書が掲載されている。このアンソロジーはキーンの恩人たちの,世に知られていない業績を広めるために一役買っている。


  ◆   ◆   ◆


アーサー・ウェイリー訳の『源氏物語』がさらに日本語に訳されて出版されている。小生は読んでいないが,興味ある人はご一読を。

源氏物語 2 ウェイリー版 (2) (平凡社ライブラリー む 4-2)源氏物語 2 ウェイリー版 (2) (平凡社ライブラリー む 4-2)
紫式部 アーサー・ウェイリー

平凡社 2008-11-11
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表紙は近藤ようこか?

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2011.04.27

【東京・愛知急落】2011年公表「平成20年度版・県民経済計算」【県民所得格差は最大2.04倍】

内閣府がようやく「平成20年度版」=2008年度版の県民経済計算の結果を公表したので,県民所得ランキングを更新することにした。

格差に関して言えば,1位の東京と最下位の沖縄とでは2.04倍の開きがあるが,2007年度よりは縮まっている。2007年度の格差は2.2倍だった。差が縮まったのは東京都の県民所得が落ちたせいである。2008年度にはリーマンショックが起きている。その影響を直接に被ったのは東京だったようである。

次に示すのが県民所得ランキング2008年度版である:


1人当たり県民所得[千円]1人当たり雇用者報酬[千円]
東京都41556485
愛知県32344877
静岡県32154510
神奈川県31985429
大阪府30045662
滋賀県29844155
千葉県29764746
富山県29494456
茨城県29434483
埼玉県29334990
京都府29244685
栃木県29174727
山口県28434265
広島県28344761
三重県28294720
石川県28184219
福島県27434206
兵庫県27404913
山梨県27294585
福井県27244264
長野県27174857
群馬県26934676
徳島県26854070
岡山県26624674
岐阜県26584277
福岡県26444482
新潟県26184378
香川県25784694
大分県25624196
和歌山県25464496
奈良県25265056
宮城県24734433
佐賀県24554016
北海道23894558
青森県23693859
山形県23273931
鳥取県23043902
秋田県22973485
愛媛県22853918
岩手県22673860
熊本県22654183
鹿児島県22533877
島根県22413990
長崎県21573838
宮崎県21303696
高知県20464516
沖縄県20393839

前の記事にも書いたが,県民所得には個人所得の他に法人所得も含まれているので,県民一人ひとりの豊かさを表しているというよりも都道府県の豊かさを表す指標である。

これに対して1人当たり雇用者報酬は個人事業主や無給の家族従業者を除く全雇用者の平均的な所得を示すものである。こちらの方が県民一人ひとりの豊かさの実感に近いかもしれない。

そこで,県民所得と雇用者報酬の関係をグラフ化してみた。

Kenmin2008

ばらつきがあるとはいえ,県民所得と雇用者報酬は比例していると言っていいだろう。


  ◆   ◆   ◆


以前,書いた記事(2006年度版)先日の記事(2007年度版)と比べると,東京・愛知・静岡という上位3都県はここのところ変わっていないが,大阪が久々に復活している。橋下効果?

よく吟味すると,栄華を誇っていたはずの東京の県民所得の低下ぶりが著しいのが気にかかる。前年比マイナス9.5パーセントである。2008年度はリーマンショックのあった年なので特別かもしれないが,この勢いだと2009年度は東京でも3000千円台に突入してしまう。愛知県もまた下落幅が大きい。前年比マイナス10.8パーセントである。

順位2008年度2007年度2006年度
1東京都(4155)東京都(4540)東京都(4820)
2愛知県(3234)愛知県(3588)愛知県(3509)
3静岡県(3215)静岡県(3384)静岡県(3389)
4神奈川県(3198)神奈川県(3284)滋賀県(3352)
5大阪府(3004)三重県(3229)神奈川県(3257)
※括弧内は1人当たり県民所得[千円]


下位5県を2006~2008年度で比較すると次のようになる。5位の鹿児島が6位になり,島根県が5位に入ってしまった。

順位2008年度2007年度2006年度
1沖縄県(2039)沖縄県(2049)沖縄県(2089)
2高知県(2046)高知県(2114)宮崎県(2150)
3宮崎県(2130)宮崎県(2152)長崎県(2159)
4長崎県(2157)長崎県(2191)高知県(2170)
5島根県(2241)鹿児島県(2353)鹿児島県(2283)
※括弧内は1人当たり県民所得[千円]


  ◆   ◆   ◆


さらに大きなタイムスパンの比較を以下に示す。

1人当たり県民所得の上位5位を1996年度と2008年度とで比較すると次のようになる。

順位2008年度1996年度
1東京都(4155)東京都(4328)
2愛知県(3234)愛知県(3731)
3静岡県(3215)神奈川県(3616)
4神奈川県(3198)大阪府(3558)
5大阪府(3004)滋賀県(3482)
※括弧内は1人当たり県民所得[千円]


リーマンショックの影響は大きかったようで,東京ですら1996年度を下回っている。これまで「繁栄を続ける東京」という印象の記事を書いてきたが,2008年度からはそうは言えなくなってきたようである。


下位5位を比較すると次のようになる。沖縄は11年間でほとんど差が見られないが,他の県は1人当たり県民所得が十数万~二十万円下がっている。

順位2008年度1996年度
1沖縄県(2039)沖縄県(2072)
2高知県(2046)宮崎県(2309)
3宮崎県(2130)鹿児島県(2317)
4長崎県(2157)長崎県(2357)
5島根県(2241)熊本県(2436)
※括弧内は1人当たり県民所得[千円]

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2011.04.24

【西京シネクラブ4月例会】キャリー・ジョージ・フクナガ監督・脚本『闇の列車,光の旅』 (Sin Nombre)

この土曜日,西京シネクラブ4月例会に行き,キャリー・ジョージ・フクナガ監督・脚本の『闇の列車,光の旅』 (原題: Sin Nombre)を見てきた。

Sinnombre

父親とともに貨物列車の屋根に乗り,ホンジュラスからメキシコ経由でアメリカへ向かう少女サイラ

そしてメキシコのギャング団マラ・サルバトゥルチャ13に所属する少年カスペル(別名ウィリー)。

この二人が出会い,アメリカとの国境を目指して旅を続けるというロードムービーである。

少年・少女が互いにほのかな恋心を抱きながら逃避行を続けるというのが本筋だが,それよりも何よりも目を奪われるのが,メキシコのギャングの恐ろしさ。

カスペルたちは,よその組織のメンバーがシマに入ってきただけで殺してバラバラにして犬に食べさせる。カスペルには恋人がいたのだが,組織の秩序を乱す存在として,マラ・サルバトゥルチャのリーダー,リル・マゴによって殺されてしまう。

ギャングにとっては,アメリカへと向かう列車の屋根に乗る不法移民たちも標的である。

あるとき,カスペル,その弟分のスマイリー(小学生ぐらい。本名はベニート),リル・マゴの3人は強盗目的で列車に乗り込み,不法移民たちから金を巻き上げていた。そのとき不法移民たちの中にいたのがサイラたちである。サイラはリーダーに暴行されかけるが,カスペルがリーダーを殺害したことによって助けられる。これが主人公たちの出会いとなる。

カスペルはリーダー殺害の罪で組織から追われる身となり,サイラとともに米国国境を目指すことになる。ネタばれになるが,結末を言うと,サイラは国境を越えるものの,カスペルはスマイリーに射殺される。

サイラがアメリカに脱出できたことは救いである。しかし,まだ幼いスマイリーが裏切り者カスペルを殺害した功績でマラ・サルバトゥルチャの正式メンバーに迎えられてしまうあたりは,中南米の貧困問題解決の困難さを思い起こさせ,暗い気持ちにさせてくれる。


キャリー・ジョージ・フクナガ監督はまだ32歳だという話である。不法移民とギャングを,ドキュメンタリーかと思うぐらいにリアルに描いた手腕は大したものであると感心した。

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2011.04.23

レジーヌ・ペルヌー『テンプル騎士団』(文庫クセジュ)読了

随分前のことになるが,クリスマスプレゼントとしてツマから貰った松岡正剛セレクト「天界物語八冊組」(松丸本舗ブックギフト・プロジェクト)に入っていた一冊に,レジーヌ・ペルヌー著・橋口倫介訳『テンプル騎士団』(文庫クセジュ)があった。

テンプル騎士団 (文庫クセジュ 604)テンプル騎士団 (文庫クセジュ 604)
レジーヌ・ペルヌー 橋口 倫介

白水社 1977-03
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ながらく手つかずのままだったが,今週の木・金と,東京に出張した際,移動時間を使って読みおえた。

内容はテンプル騎士団の設立から滅亡までの200年間の歴史である。

「十字軍運動の中で,巡礼保護という崇高な目的のために設立された組織が,いつしか巨大な経営組織に成長するものの,ある日突然,フランス王によって無実の罪を着せられ滅ぼされる」というあらすじで,なんか後味が悪い。

以下は読後のまとめである。

まずは,テンプル騎士団の起源と聖地における軍歴について詳しく説明している本書前半の紹介。


  ◆   ◆   ◆


十字軍運動が盛んだったころ,聖地や巡礼者の守護,病人保護などを目的として,いくつかの騎士修道会(宗教騎士団)が結成された。最も名高いのがテンプル騎士団聖ヨハネ騎士団ドイツ騎士団の3つだった。

聖ヨハネ騎士団とドイツ騎士団が病人保護を主目的としていたのに対し,テンプル騎士団は巡礼の保護を主目的としていた。

同じ十字軍運動の中で生まれた騎士団同士だから,イスラム勢力に対して結束して対抗していたかというと,そうでもない。13世紀半ば,フリードリヒ2世が聖地エルサレムにやってきた頃にはテンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団との間で争いが同地で繰り返されていた。

フリードリヒ2世は神聖ローマ皇帝でありながらイスラムに寛容な君主で,アイユーブ朝のスルタンとの話し合いで聖地を回復した。彼に忠実なのはドイツ騎士団であり,ドイツ騎士団はまた聖ヨハネ騎士団と連合していた。

テンプル騎士団は親イスラム的なフリードリヒ2世のやり方に憎悪の念を抱いており,自然,親フリードリヒ2世的な騎士団であるドイツ騎士団・聖ヨハネ騎士団と対立するようになっていたわけである。

騎士団同士の対立をさらに激化させることになったのは,イタリア都市国家同士の争いである。地中海貿易の覇権をめぐって争っていたイタリア諸都市のうち,ヴェネチアやピサはテンプル騎士団を頼り,ジェノアは聖ヨハネ騎士団を頼った。

騎士団同士の紛争は,聖地におけるキリスト教徒の勢力を殺ぎ,イスラム勢力を利することとなった。

13世紀後半からパレスチナにおけるキリスト教徒の根拠地は次々に陥落し,1291年にイスラム勢力によってキリスト教勢力の根拠地アッコンが陥落。これで中東における十字軍運動は事実上終了する。

その後も聖ヨハネ騎士団とドイツ騎士団は長らく存続した(聖ヨハネ騎士団は現在でもマルタ騎士団として存続している)が,テンプル騎士団は1307年のある事件を機に滅亡した。

テンプル騎士団滅亡の経緯とその原因について詳しく述べているのが本書の後半である。


  ◆   ◆   ◆


1307年10月13日,フランス王フィリップ4世(別名フィリップ美男王)の命によって,フランス在住のテンプル騎士全員が一斉に逮捕された。罪状は「異端」である。

拷問によって,様々な涜神行為の供述が強要され,多くのテンプル騎士が火刑に処された。総長ジャク・ド・モレーも火刑に処された。これでテンプル騎士団は滅亡し,財産の多くは聖ヨハネ騎士団へと移管された。

この罪はでっちあげで,テンプル騎士団は無実であるというのが現在では定説である。本書の著者も「騎士団全体の無実は疑問の余地がない」と記している。

しかし,では,なぜ,フランス王はテンプル騎士団を弾圧したのか。

唯一で無いにせよ有力な動機として著者は「テンプル騎士団の財産」を挙げている。

テンプル騎士団はエルサレムにおける軍事組織であったが,その軍事行動を経済的に支えるために,ヨーロッパ全土で9000の所領を運営していた。また,エルサレムへの巡礼者や後には王侯貴族のの資産を預かり,預金証書を発行するという銀行業も営んでいた。

フランス国内に限ってみても,3000もの所領が存在していた。また,テンプル騎士団のパリ支部の「タンプル塔」は王室金庫を預かる役目をしていた。

これだけの莫大な財産は,フィリップ美男王にとっては間違いなく魅力的なものだったろう。

最終的にはテンプル騎士団の財産は聖ヨハネ騎士団に移管されることになったのだが,移管されるまでの間,旧テンプル騎士団領からの収益はフィリップ美男王の懐に入ったようである。


  ◆   ◆   ◆


それにしてもこの本が「天界物語八冊組」に入っていたのはなんか解せないが,勉強になったのでよしとしよう。

Templiersseigow

「セイゴオ」サイン入りの扉。

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2011.04.19

「日本のための祈り」@ワシントン大聖堂

震災から一か月後の4月11日,ワシントン大聖堂。 地震・津波・原発事故という大災害に見舞われた日本国民のために宗教を超えた礼拝「日本のための祈り」が行われた。

ヒンドゥー教,キリスト教,ユダヤ教,イスラム教,仏教,神道の代表者が祈りをささげた。

国務省国際情報プログラム局が編集したビデオはYoutubeに掲載されている:

アメリカ南部をハリケーン・カトリーナが襲ったとき,日本はこれほどまでにアメリカ人のことを思っただろうか?

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2011.04.13

【東電管内】節電しないと,最高気温29℃以上で大停電

産業・運輸・民生分野で,例年通りに電力を使用する場合,つまり特に節電を心掛けないような場合,夏期に電力が不足し,大停電が発生することが予想されている。

ここ数日,東京電力のデータ(http://www.tepco.co.jp/forecast/html/maxsummer.pdfなど)を使用して,電力需要の気温依存性(ようするに最高気温が1℃あがるごとに何万kW需要が伸びるか)について検討している(参考)のだが,再検討することにした。

まず手元にある,2004年と2009年の夏期平日の,東京電力の日別最大需要と東京管区気象台の日別最高気温のデータをあらためてプロットしてみる(「tepco-summer-max.csv」をダウンロード
)。

Retry20110413

2004年と2009年では温度帯が違うが(2004年は猛暑だったということである)データはおおよそ重なっているように見える。すでに電化の進展は進んでいて,2004年と2009年とでは電力需要と気温の関係に大きな変化はないのかもしれない。やや乱暴だがここでは2004年のデータと2009年のデータをひとまとめにして取り扱うことにする。

そして,電力需要が落ち込む「盆休み」のデータ(2004年8月11日~17日,2009年8月10日~14日)を除去して再プロットしたのが次のグラフである。

Retry201104132

線形モデル(直線)と非線形モデル(3次曲線)で回帰した結果も書き加えている。非線形モデルは多少,決定係数が向上する程度なので,とりあえずは線形モデルでの回帰で良いだろう。

線形モデルの結果によれば,先日の記事とほぼ同じ結果,すなわち,特に節電を心掛けない場合,最高気温1℃上昇で約150万kWの需要増という結果になった。


  ◆   ◆   ◆


東京電力が夏場に供給できる最大の電力は5000万kW程度だと言われている。線形モデルでは30.5℃で5000万kWに達するが,実際には29.4℃(2004年7月5日)で5000万kWを超えている例がある。安全側に考えれば,最高気温が29℃以上になると電力が不足する可能性が高い。

最高気温が29~30℃になる日が頻出するのは6月である(5月もたまにそうなる日があるが冷房期間ではないので省く)。過去3年間で6月に初めて最高気温が29℃を突破した日を東京管区気象台のデータから取り出してみると,

2008年6月14日 29.1℃
2009年6月23日 29.7℃
2010年6月16日 30.3℃

となる。つまり6月中旬には電力不足が起こる可能性がある。実際,「平成22年度 数表でみる東京電力」(22ページ)によれば2001年6月には5407万kWに達した例がある。

最近は冷房期間(7月1日~8月31日)の厳守が徹底しているので,冷房のせいで6月に電力需要が5000万kWを超える可能性は低いだろう。しかし,例年通りの冷房使用をすると,7月に入った途端に電力不足が発生する可能性がある。


  ◆   ◆   ◆


そもそも,気温が上がるとなぜ電力需要が伸びるのかということについて再確認し,節電について考える。

常識的に考えて,まず冷房用の電力が伸びるからである。また冷房の他にも扇風機や換気用の電力が伸びるからだともいえる。あと,見落としがちなのが冷蔵・冷凍用の電力が増加するということである。

夏場の節電といえば,冷房を切ることが真っ先に挙げられる。しかし,冷房を切ると熱中症のリスクが上昇するし,労働生産性も下がる。冷房なしでしのぐには限界があるだろう。


<夜間蓄冷>

ひとつの解決策としては夜間蓄冷が挙げられる。

例えば,夜間に大量の氷を作っておいて,日中の冷房に使用するという手である。ただし,夜間蓄冷には設備が必要でこの夏には間に合わない。


<夜間中心の生活へ>

もうひとつの解決策としては生活時間帯のシフトがある。

「夏時間」のアイディアが出ているが,1時間ずらす程度ではあまり意味がない。最大の電力需要が発生するのは13:00~15:00である。ピーク時間帯だけが問題ではない。「平成22年度 数表でみる東京電力・一日の電気の使われ方」(23ページ)を見ると,9:00~17:00の営業時間帯でもピーク時電力の90%を消費している。この広範な時間帯を外さなくてはならない。

「夏時間」よりももっと大胆に,「夜間就業」「夜間通学」ぐらいの策が必要だろうと思う。トゥアレグ族の知恵に学ぶとか。シェスタ導入とか。


<冷蔵・冷凍はどうしよう>

冷房用電力よりももっと重要なのは冷蔵・冷凍用電力である。食糧・医薬品の保存のために必要だからである。冷蔵・冷凍用電力は都市生活の生死にかかわる電力であり,切ることはできない。

解決策としては先に挙げた,夜間蓄冷がある。冷房にも役に立つが,冷蔵にも使える。しかし,冷凍は難しいかもしれない。また,先に述べたように,夜間蓄冷には設備が必要なので,今からでは間に合わないだろう。冷蔵・冷凍用の電力に関してはあまり良い知恵がない。

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2011.04.11

【県民所得の格差は最大2.2倍】2010年公表「平成19年度版・県民経済計算」

2009年2月に「『県別の所得格差は二倍以上!』2009年2月発表バージョン」という記事を書いて2年以上経過した。そろそろ内容を更新しようと思っているのだが,内閣府がなかなか新しい結果を発表してくれない。この4月に公表されるはずだが,震災等の影響で作業が遅れているのかもしれない。

やむを得ず,2010年に公表された「平成19年度版」=2007年版の結果をもとにして記事を書くことにする。


  ◆   ◆   ◆


2007年度の1人当たり県民所得のランキングは以下の通りである。今回は参考までに1人当たり雇用者報酬も加えている。

格差に関して言えば,1位の東京と最下位の沖縄とでは2.2倍の開きがある。

県民所得には個人所得の他に法人所得も含まれているので,県民一人ひとりの豊かさを表しているというよりも都道府県の豊かさを表す指標である。

これに対して1人当たり雇用者報酬は個人事業主や無給の家族従業者を除く全雇用者の平均的な所得を示すものである。ちなみに企業役員・公務員・議員も雇用者に含まれる。こちらの方が県民一人ひとりの豊かさに近いかもしれない。


1人当たり県民所得[千円]1人当たり雇用者報酬[千円]
東京都45406383
愛知県35884973
静岡県33844433
神奈川県32845437
三重県32294700
滋賀県31384479
大阪府31075696
栃木県31054644
富山県30884752
広島県30594850
千葉県30104760
茨城県30074516
京都府29934716
山口県29824270
埼玉県29735026
石川県29454248
群馬県28804709
福島県28474213
兵庫県28234941
福井県28214203
岡山県28124519
長野県28084665
徳島県28074437
岐阜県27704237
山梨県27674616
福岡県27464509
新潟県27244397
奈良県26815304
香川県26524647
和歌山県26374524
大分県26364183
宮城県25804457
佐賀県25754405
山形県25413933
愛媛県24853959
秋田県24833517
島根県24363903
青森県24333908
北海道24084566
岩手県23833851
熊本県23814078
鳥取県23643976
鹿児島県23533933
長崎県21913818
宮崎県21523797
高知県21144558
沖縄県20493744

グラフ化したもの以下に示す:

Kenmin200701

県民所得と雇用者報酬の間にどのような関係があるのかについてグラフ化したものを下に示す。

Kenmin200702

ばらつきが大きいものの県民所得と雇用者報酬は比例していると言えるのではないだろうか?ちなみに大阪は県民所得(府民所得)の割に雇用者報酬が大きいと言えるだろう。


  ◆   ◆   ◆


以前,「『県別の所得格差は二倍以上!』2009年2月発表バージョン」という記事に掲載した2006年度版と比べると,東京・愛知・静岡という上位3都県は変わっていない。

上位5都県を2006年度と2007年度とで比較すると次のようになる。2007年には上位5都県の中に新たに三重県が入ってきている。

順位2007年度2006年度
1東京都(4540)東京都(4820)
2愛知県(3588)愛知県(3509)
3静岡県(3384)静岡県(3389)
4神奈川県(3284)滋賀県(3352)
5三重県(3229)神奈川県(3257)
※括弧内は1人当たり県民所得[千円]


下位5県を2006年度と2007年度とで比較すると次のようになる。順位の入れ替わりがあるものの,顔ぶれは同じである。

順位2007年度2006年度
1沖縄県(2049)沖縄県(2089)
2高知県(2114)宮崎県(2150)
3宮崎県(2152)長崎県(2159)
4長崎県(2191)高知県(2170)
5鹿児島県(2353)鹿児島県(2283)
※括弧内は1人当たり県民所得[千円]


  ◆   ◆   ◆


さらに大きなタイムスパンで比較を行ってみよう。

1人当たり県民所得の上位5位を1996年度と2007年度とで比較すると次のようになる。かつては大阪府が5位以内に入っていた。金額を見ると,東京以外は11年間で1人当たり県民所得が十数万~三十数万円下がっている。

順位2007年度1996年度
1東京都(4540)東京都(4328)
2愛知県(3588)愛知県(3731)
3静岡県(3384)神奈川県(3616)
4神奈川県(3284)大阪府(3558)
5三重県(3229)滋賀県(3482)
※括弧内は1人当たり県民所得[千円]


下位5位を比較すると次のようになる。九州・沖縄勢の顔触れはほとんど変わっていない。金額面では,沖縄と鹿児島は11年間でほとんど変化が見られないが,他の県は1人当たり県民所得が十数万円下がっている。

順位2007年度1996年度
1沖縄県(2049)沖縄県(2072)
2高知県(2114)宮崎県(2309)
3宮崎県(2152)鹿児島県(2317)
4長崎県(2191)長崎県(2357)
5鹿児島県(2353)熊本県(2436)
※括弧内は1人当たり県民所得[千円]


1人当たり県民所得で日本地図の塗り分けをやってみると次のようになる。まず,2007年度:

Kenmin200703

つぎに1996年度:

Kenmin199601

正確にはデフレの効果などを考慮するべきだろうが,大雑把には東京のみが成長を続け,沖縄・鹿児島は停滞,残りの道府県が衰退傾向ということになるのではなかろうか? とくに北海道・北東北・山陰・四国西南・南九州で県民所得が顕著に低下している。

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2011.04.10

常盤公園で観桜の件

今日は天気が良いので桜が満開の常盤公園に行った。

家族連れで大賑わいだった。

Tokiwa2011041001

見事な桜の木が見られた。

Tokiwa2011041002

Tokiwa2011041003

例の事件で,常盤公園からはハクチョウが一掃されてしまったのだが,ペリカンたちはほぼ無事。久しぶりに元気な姿を見ることができた。

Tokiwa2011041006

Tokiwa2011041007

ただ,ハクチョウのいなくなった常盤湖にハクチョウを模した遊覧船が浮かんでいるのはちょっと悲しい感じがする。

Tokiwa2011041008


常盤公園では桜だけが満開だったわけではない。

モクレンもまた満開だった。

Tokiwa2011041004

遠くから見るとまるで桜のようだった。

Tokiwa2011041005

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【2009年東電データ】最高気温1℃上昇で最大電力需要110万kW増加

昨日の記事では2004年の東京電力の資料を使って2004年夏期の各日の最高気温(東京管区気象台)と最大電力需要の関係を検討した。

今回はより新しいデータ,「今夏の最大電力ならびに日別の最大電力」((東京電力,平成21年9月14日現在,http://www.tepco.co.jp/forecast/html/maxsummer.pdf)をもとに,改めて夏期の各日の最高気温と最大電力上の関係を検討する。


2009年7月6日~9月11日の平日の最高気温(東京管区気象台)と東京電力の最大電力需要をプロットしたのが次の図である:

200907060911

2004年版との大きな違いは傾きが小さいということである。回帰式によれば,最高気温1℃上昇で最大電力需要が約110万kW増加という結果となっている。

2004年版では最高気温1℃上昇に対して最大電力需要約146万kWの増加だったのと比べるとだいぶ気温感応度が小さくなった。ひょっとしたら企業や家庭における省エネが2004年以降進展したのかもしれない。クールビズとか普通になってきたし。


東京電力の最大供給量は夏までには5000万kW程度に回復すると予想されている。上図の回帰式に基づけば,最高気温が32℃を超えると大停電が避けられないことになる。

しかし,実際には電力需要にはばらつきがあるため,上図が示すように最高気温30℃程度でも最大需要が5000万kWを超える日がある。

やはり首都圏においては現在検討されているような「総量規制」ないし「使用制限」は避けられないと思う。

電力を大量に必要とするタイプの産業,または停電が致命的であるタイプの産業に関しては,拠点の西日本移転を真面目に考える段階に入っていると思われる。

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2011.04.09

【東京電力の電力需要と気温の関係】 夏場は1℃上昇で150万kWの需要増

東京電力は,現在,東日本大震災に伴う輪番停電への対応として電力需要のデータを提供している:

電力の使用状況グラフ(当社サービスエリア内)

そのデータを使って,気温と最大電力需要の関係を検討してみた。

気温が低くなればなるほど暖房需要が伸び,電力需要が高まるが,それはどの程度のものだろうか?


<最低気温と最大電力需要>

3月24日~4月8日の各日の最低気温(東京管区気象台)と最大電力需要をプロットしたのが次のグラフである:

20110324040801

決定係数が0.43と低めで線形近似の当てはまりがわるいが,最低気温が1℃下がると31万kW電力需要が伸びることがわかる。


<最大需要発生時気温と最大電力需要>

最大需要が発生するのは9時台もしくは18時~19時台である。最大需要が発生した時の気温(東京管区気象台)と電力需要をプロットしたのが次のグラフである:

20110324040802

最大需要が発生した時の気温が最大需要に影響を与えるのは当然のことであるから,決定係数は0.65と向上している。最大需要が発生する時間帯の気温が1℃下がると28万kWだけ電力需要が伸びるという結果になった。

おおざっぱにいえば,冬場,気温が1℃下がると東京電力管内の電力需要は約30万kW増加するというわけである。


  ◆   ◆   ◆


<夏場はどうなる?>

今を去ること8~9年前,「東京電力の原発トラブル隠し」という事件があった。

そのせいで東京電力では全原発を順次停止して点検を行なうことになり,夏場の電力不足が起こるおそれがあった。このとき民放のテレビ・ラジオで放送されたのが「でんき予報」である。

その「でんき予報」が流されているころに公表されたデータ(http://www.tepco.co.jp/forecast/html/maxsummer.pdf(2004年当時))をもとに,夏場(2004年7月5日~9月17日)の各日の最高気温(東京管区気象台)と最大電力需要の関係をグラフ化したのが次の図である:

200407050917

最高気温と最大需要には強い関係があることがわかる。1℃最高気温が上がると,最大電力需要が146万kW増加するということになる。原発1基の出力がおよそ100万キロワットだとすると,1.5基分の増加ということになる。

2004年当時よりも現在のほうが少しばかり電化が進展していること(増加要因)と今回の震災による節電意識の向上(減少要因)のどちらが勝るかわからないが,1℃上昇で約150万kW以上増加というところではなかろうか?


  ◆   ◆   ◆


なぜ,夏場の方が冬場よりも1℃の気温の変化に対する電力需要の増加が激しいのか,ということに関しては2つの要因が挙げられる:

(1) 暖房に関しては電気以外のエネルギー源,つまり灯油・ガスが使えるのに対し,冷房に関しては電気に頼るしかない

(2) エアコンに関して言えば(理論的には),冷房COPは暖房COPよりも1低い。つまり,エアコンの暖房で1℃上昇させるのに必要な電力よりも冷房で1℃下げるのに必要な電力のほうが大きい

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2011.04.08

こんな時代だから読むべき本:五木寛之『他力』(講談社文庫)

「BSアーカイブス ハイビジョン特集 五木寛之21世紀・仏教への旅」というドキュメンタリーが連日放送されている。

今日放送されたのはシリーズ5回目である。9.11テロ事件の経験を引きずっているアメリカを旅しながら,「他力」「悪人正機」といった親鸞の思想の現代における可能性を探るという話である。

このドキュメンタリーで取り上げられたのが,五木寛之の著書『他力』である。法然・親鸞・蓮如らの思想のコアである「他力」の概念をベースに,現代を生きるためのヒントをつづった本である。

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アメリカでは9.11のテロの後,『他力』に加え,『生きるヒント』『大河の一滴』『人生の目的』のエッセンスが凝縮された"TARIKI"が出版された。同著は多くのアメリカ人に受け入れられ,2002年度ブック・オブ・ザ・イヤー(スピリチュアル部門)を受賞した。

Tariki: Embracing Despair, Discovering PeaceTariki: Embracing Despair, Discovering Peace
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日本語版の同書の一説にはこのような言葉が書かれている:

私たちがいま目の前にしている世界は,国家と社会の危機だけではありません。私たちは,誰もが「精神的,または心理的に重大な危機」に直面しているという実感を抱いて生きているはずですから。(『他力』,22ページ)
つまり私たちはいま,外側からも,内側からもまさに二重の<非常時>に直面していると言うべきかもしれません。(『他力』,23ページ)

この本が書かれたのはもちろん震災よりも前なのだが,戦後最大という非常時を迎えた今こそ読むべき本だろうと思う。

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2011.04.07

ドナルド・キーン,日本永住へ

こういう記事が朝日に出ていた。
「ドナルド・キーン教授 月末に退職 東京で著述生活へ」(2011年4月6日,朝日新聞)

日本文学研究で知られるドナルド・キーン教授(Donald Lawrence Keene, 1922年6月18日~)が4月末で教壇を離れ,その後は東京で著述に専念するという。

外国人の日本離れが続く中,日本にとっては良いニュース。


「日本文学研究」といっても,ドナルド・キーンの守備範囲は広い。古代から現代まで広がっている。さらに古来から日本文学に影響を与えている中国文学も守備範囲に入っている。

小生の手元にはキーンが編集した日本の古典のアンソロジー,"Anthology of Japanese Literature: from the earliest era to the mid-nineteenth century" (Grove Press, 1955)がある。

Anthology of Japanese Literature from the Earliest Era to the Mid-Nineteenth Century (UNESCO Collection of Representative Works: European)Anthology of Japanese Literature from the Earliest Era to the Mid-Nineteenth Century (UNESCO Collection of Representative Works: European)
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このアンソロジーの特徴の一つとして,「懐風藻」などの漢詩が含まれているという点が挙げられる。高校の授業では「古文」と「漢文」は分けて教育され,「漢文」は日本の古典ではないような扱いがなされているが,キーンのアンソロジーでは日本人による漢詩もまた日本文学の重要な一要素として位置づけられているわけである。

また,空海の「請来目録」からの抜粋や観阿弥・世阿弥の謡曲が含まれていることも,このアンソロジーの特徴である。日本文学の広がりを再認識させてくれるあたり,さすがキーンである。

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2011.04.05

【学徒動員】社会生態学の先生が震災復興に向け提案

社会生態学がご専門の東京大学教授,安富歩氏が,「学徒動員」を彷彿とさせるようなことを朝日新聞紙上で述べている:

東京大学教授(社会生態学)安富歩「私の視点:大学の新学期 9月始まりで復興の力に」(2011年4月4日,朝日新聞)

氏はすべての大学の年度を4月開始から9月開始に変更することにより,次のようなメリットが生まれると言っているのだ:

  1. 被災した大学が体制を立て直す時間が生まれる
  2. 被災しなかった大学の教職員・学生を半年間,被災地を復興・原発事故処理のために活用できる

1番目はいいとして,2番目は「学徒動員」を彷彿とさせ,どうも引っかかる。

まず,学生の活用について述べた氏の文章を少し引用しよう:

大学には約300万人の学生がいる。彼らが地震や津波,原発事故で避難している方々を助け,その復興に力を貸す仕事に従事するなら,数十万人の被災者の大きな助けになるだろう。

大学の新学期を9月にすることによって生まれる半年間の空白。このとき,学生が続々とボランティアとして被災地に赴き,復興に尽力するのなら,それは素晴らしいことのように思える。

だがよく考えると様々な問題が存在している。

<そんなに大勢は必要ない>

そもそもボランティアへの参加人数というか規模の問題がある。

300万人もの学生が全員出動することはあるまいし,また全員の参加は必要ないだろう。そもそも10分の1,30万人でも来てしまったら,作業効率は悪いわ,ロジスティックが破たんするわで,現地の混乱が拡大する。

ボランティア参加時の意思/意志は重要な問題である。

学生が自らの意思/意志で被災地に行くのなら良い。しかし,行くことを強制されるようなことがあれば,それはやはり学徒動員にほかならない。行こうという積極的な意思/意志がないのにもかかわらず,周囲の雰囲気で行くのなら,それはファシズム。自分の意思/意志で行くのでなければ士気は低く,活動の成果は期待できない。

ボランティアの技能レベルもまた重要な問題である。

被災地のために何かしたい,というのは尊い気持である。しかし,何ができるのだろうか? がれきの撤去ぐらいなら手作業でできる。しかしがれきの撤去には重機を活用する方が効率的だ。重機を扱う技能を持たないのならば重機の燃料代を寄付する方が役に立つのではなかろうか? 何が言いたいかというと,ボランティアのためには,カウンセリングなり,医療なり,大型免許なり,それなりの技能が必要だということである。

<4月開始で十分に対応可能>

こういうことを考えると現実的には,何らかの技能を持ち,士気も高い,精鋭の学生ボランティア数千~数万人が現地の支援をするという態勢に落ち着くことだろう。

そのとき,残った数百万人の学生は勉学もせず何をすれば良いのか?

学生の本分はやはり勉学だろう。

だとしたら半年間も無為に過ごす必要は無い。9月開始などにせず,4月に授業を開始して大半の学生には勉学に励んでもらうのが最も良い。

その一方で,震災復興のためのボランティアを妨げない仕組みを作ればよい。ボランティア活動の単位化とか,ボランティアから戻ってきた後の補講などによって,進級・就職が遅れない仕組みを作るわけである。

<教職員の役割>

つぎに教職員の責務について述べた安富歩氏の文章を引用しよう:

持てる知識,能力,技術,人脈などの総力を挙げてこの仕事に取り組まねばならない。直接的な救援活動に従事しなくても,これから日本が生き延びる道を示すための,真の意味での知的活動を展開せねばならない。

文中で「この仕事」といっているのは復興支援のことである。教職員が直接あるいは間接的に復興に貢献するべきだというのは正論である。

だが,震災からの復興・日本の生存に結びつかないような教育研究活動なんて,そんなには無いんじゃないかと思う。

そもそも講義や演習の指導を行うという教育活動は学生の知識・スキルを向上させ,社会人として活躍するための基礎をつくるものであって,今回の震災には間に合わなくとも,今後も続くだろう被災地の復興活動を支えたり,また日本の国際競争力を支える人材を生み出すことに貢献するものである。

研究活動もまたしかり。一見役に立たないかのような莫大かつ広範な研究成果の上に,日本の国際競争力のコアとなる産業技術や災害から日本の国土を守る土木建築技術などがのっかっているわけである。

医療や土木工学や原子力工学などの今すぐ必要な技術の専門家はすぐにでも出動するべきだと思うが,その他の教職員はこれまで通り,歩みを止めず,教育研究活動を続けるべきである。すなわち,半年休業は不要。

<浮足立たないこと>

上に引用した安富歩氏の文章の「真の意味での知的活動を展開せねばならない」という発言はどういう意味なのだろう? この震災にあたり,安富歩氏が自らの専門である社会生態学について存在意義を問うたかのように思える一文だ。

莫大かつ広範な知的活動の裾野の上に高度な知識や技術が成立していると考える小生にとっては,「真の意味での知的活動」という言葉はあまり意味を持たない。震災を忘れてはならないが,震災復興ということだけにとらわれず,これまで通り広く自由に知的活動を展開することが,震災復興を支えることに繋がっていくと思うからだ。

震災後,国家総動員的・一極集中的な極端な意見を聞くことが多くなっている。震災復興のために何か貢献したいという思いがそうさせるのだろう。だが,例えば,震災復興の過程で,天災や紛争等の別の災禍に見舞われたらどうする?複数の災害に対応できるような予備の力は常に必要である。

そういった別の災禍に見舞われなかったとしても,震災復興の諸活動を支えるためには,被災しなかった地域において中断された日常への復帰することが必要であると思う。とくに西日本においては過度の自粛はやめるべきである。冷静に考えれば,西日本の経済活動の活性化こそが東日本大震災からの復興を支えることにつながることが分かるはずである。

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2011.04.04

『AKIRA』と『攻殻機動隊』と『イノセンス』と。

4月に入り数日が過ぎた。震災のことを忘れてはいけないが,中断された日常への復帰も重要だと思う。

さて,ここ数日間,近未来を描いた3つのアニメーションを見る機会に恵まれた。

『AKIRA』の舞台は2019年のネオ東京,『攻殻機動隊』と『イノセンス』の舞台は2020年代後半~2030年代前半の新浜県新浜市(おそらく)。

これらの作品にはコアなファンが多く,小生程度(とはいえ士郎正宗氏に関しては,高校生の時に『ブラックマジックM66 絵コンテ集』の初版を購入・熟読していた程度にはファンである)の知識では哄笑されそうなことしか言えないが,短く感想を述べてみたい。

こういう近未来映画で大事なのは,描かれている世界像である。いずれの作品世界でも都市はチャイナタウン化しており,『ブレードランナー』の遺伝子を引き継いでいることは明らかだ。

細部は当然のことながら異なる。『AKIRA』のネオ東京には携帯電話もインターネットも無い。ファッションは80年代風。若者は血気盛んでバイクが好き。映画およびその原作が作られた時代の影響を引きずっている。レーザー兵器や超能力は現在でも実現していないが,日常生活は現実が追い抜いてしまった。見ていて少し悲しい。

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『攻殻機動隊』と『イノセンス』の世界はすでに第3次核大戦・第4次非核大戦という2度の大戦を経た,我々の住む世界とは異なるパラレルワールドである。義体化・電脳化が進んでおり,『AKIRA』の世界よりも我々の住む世界との距離があるように見える。

しかしながら,年々ネット依存性が強くなっている我々にとっては,『AKIRA』の世界よりもむしろ『攻殻機動隊』の世界の方に強く共感<シンパシー>を感じるのではないだろうか。

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ストーリーの構図も『AKIRA』と『攻殻機動隊』・『イノセンス』では大きく異なる。簡単に言うと『AKIRA』のストーリーの根底には「体制への反逆」が良しとされている価値観があるように見える。これに対して『攻殻機動隊』・『イノセンス』では根底に「秩序の維持」を肯定する価値観が存在しているように思える。

この価値観の違いは,作品の主人公たちが素人であるかプロであるかという違いと強く関わっているはずである。時代を経るにつれ,科学技術も政治経済も複雑化し,ある程度の専門性を有していないとそれらに関わることができなくなっている。

プロですら事件に遭遇すれば惑う。素人が時局を左右できるほどに現実世界は単純ではない。そう思う小生としては映像技術の違いを抜きにしても,どうしても『AKIRA』に古さを感じ『攻殻機動隊』・『イノセンス』に肩入れをしてしまうのである。

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