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2011.04.13

【東電管内】節電しないと,最高気温29℃以上で大停電

産業・運輸・民生分野で,例年通りに電力を使用する場合,つまり特に節電を心掛けないような場合,夏期に電力が不足し,大停電が発生することが予想されている。

ここ数日,東京電力のデータ(http://www.tepco.co.jp/forecast/html/maxsummer.pdfなど)を使用して,電力需要の気温依存性(ようするに最高気温が1℃あがるごとに何万kW需要が伸びるか)について検討している(参考)のだが,再検討することにした。

まず手元にある,2004年と2009年の夏期平日の,東京電力の日別最大需要と東京管区気象台の日別最高気温のデータをあらためてプロットしてみる(「tepco-summer-max.csv」をダウンロード
)。

Retry20110413

2004年と2009年では温度帯が違うが(2004年は猛暑だったということである)データはおおよそ重なっているように見える。すでに電化の進展は進んでいて,2004年と2009年とでは電力需要と気温の関係に大きな変化はないのかもしれない。やや乱暴だがここでは2004年のデータと2009年のデータをひとまとめにして取り扱うことにする。

そして,電力需要が落ち込む「盆休み」のデータ(2004年8月11日~17日,2009年8月10日~14日)を除去して再プロットしたのが次のグラフである。

Retry201104132

線形モデル(直線)と非線形モデル(3次曲線)で回帰した結果も書き加えている。非線形モデルは多少,決定係数が向上する程度なので,とりあえずは線形モデルでの回帰で良いだろう。

線形モデルの結果によれば,先日の記事とほぼ同じ結果,すなわち,特に節電を心掛けない場合,最高気温1℃上昇で約150万kWの需要増という結果になった。


  ◆   ◆   ◆


東京電力が夏場に供給できる最大の電力は5000万kW程度だと言われている。線形モデルでは30.5℃で5000万kWに達するが,実際には29.4℃(2004年7月5日)で5000万kWを超えている例がある。安全側に考えれば,最高気温が29℃以上になると電力が不足する可能性が高い。

最高気温が29~30℃になる日が頻出するのは6月である(5月もたまにそうなる日があるが冷房期間ではないので省く)。過去3年間で6月に初めて最高気温が29℃を突破した日を東京管区気象台のデータから取り出してみると,

2008年6月14日 29.1℃
2009年6月23日 29.7℃
2010年6月16日 30.3℃

となる。つまり6月中旬には電力不足が起こる可能性がある。実際,「平成22年度 数表でみる東京電力」(22ページ)によれば2001年6月には5407万kWに達した例がある。

最近は冷房期間(7月1日~8月31日)の厳守が徹底しているので,冷房のせいで6月に電力需要が5000万kWを超える可能性は低いだろう。しかし,例年通りの冷房使用をすると,7月に入った途端に電力不足が発生する可能性がある。


  ◆   ◆   ◆


そもそも,気温が上がるとなぜ電力需要が伸びるのかということについて再確認し,節電について考える。

常識的に考えて,まず冷房用の電力が伸びるからである。また冷房の他にも扇風機や換気用の電力が伸びるからだともいえる。あと,見落としがちなのが冷蔵・冷凍用の電力が増加するということである。

夏場の節電といえば,冷房を切ることが真っ先に挙げられる。しかし,冷房を切ると熱中症のリスクが上昇するし,労働生産性も下がる。冷房なしでしのぐには限界があるだろう。


<夜間蓄冷>

ひとつの解決策としては夜間蓄冷が挙げられる。

例えば,夜間に大量の氷を作っておいて,日中の冷房に使用するという手である。ただし,夜間蓄冷には設備が必要でこの夏には間に合わない。


<夜間中心の生活へ>

もうひとつの解決策としては生活時間帯のシフトがある。

「夏時間」のアイディアが出ているが,1時間ずらす程度ではあまり意味がない。最大の電力需要が発生するのは13:00~15:00である。ピーク時間帯だけが問題ではない。「平成22年度 数表でみる東京電力・一日の電気の使われ方」(23ページ)を見ると,9:00~17:00の営業時間帯でもピーク時電力の90%を消費している。この広範な時間帯を外さなくてはならない。

「夏時間」よりももっと大胆に,「夜間就業」「夜間通学」ぐらいの策が必要だろうと思う。トゥアレグ族の知恵に学ぶとか。シェスタ導入とか。


<冷蔵・冷凍はどうしよう>

冷房用電力よりももっと重要なのは冷蔵・冷凍用電力である。食糧・医薬品の保存のために必要だからである。冷蔵・冷凍用電力は都市生活の生死にかかわる電力であり,切ることはできない。

解決策としては先に挙げた,夜間蓄冷がある。冷房にも役に立つが,冷蔵にも使える。しかし,冷凍は難しいかもしれない。また,先に述べたように,夜間蓄冷には設備が必要なので,今からでは間に合わないだろう。冷蔵・冷凍用の電力に関してはあまり良い知恵がない。

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