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2011.04.09

【東京電力の電力需要と気温の関係】 夏場は1℃上昇で150万kWの需要増

東京電力は,現在,東日本大震災に伴う輪番停電への対応として電力需要のデータを提供している:

電力の使用状況グラフ(当社サービスエリア内)

そのデータを使って,気温と最大電力需要の関係を検討してみた。

気温が低くなればなるほど暖房需要が伸び,電力需要が高まるが,それはどの程度のものだろうか?


<最低気温と最大電力需要>

3月24日~4月8日の各日の最低気温(東京管区気象台)と最大電力需要をプロットしたのが次のグラフである:

20110324040801

決定係数が0.43と低めで線形近似の当てはまりがわるいが,最低気温が1℃下がると31万kW電力需要が伸びることがわかる。


<最大需要発生時気温と最大電力需要>

最大需要が発生するのは9時台もしくは18時~19時台である。最大需要が発生した時の気温(東京管区気象台)と電力需要をプロットしたのが次のグラフである:

20110324040802

最大需要が発生した時の気温が最大需要に影響を与えるのは当然のことであるから,決定係数は0.65と向上している。最大需要が発生する時間帯の気温が1℃下がると28万kWだけ電力需要が伸びるという結果になった。

おおざっぱにいえば,冬場,気温が1℃下がると東京電力管内の電力需要は約30万kW増加するというわけである。


  ◆   ◆   ◆


<夏場はどうなる?>

今を去ること8~9年前,「東京電力の原発トラブル隠し」という事件があった。

そのせいで東京電力では全原発を順次停止して点検を行なうことになり,夏場の電力不足が起こるおそれがあった。このとき民放のテレビ・ラジオで放送されたのが「でんき予報」である。

その「でんき予報」が流されているころに公表されたデータ(http://www.tepco.co.jp/forecast/html/maxsummer.pdf(2004年当時))をもとに,夏場(2004年7月5日~9月17日)の各日の最高気温(東京管区気象台)と最大電力需要の関係をグラフ化したのが次の図である:

200407050917

最高気温と最大需要には強い関係があることがわかる。1℃最高気温が上がると,最大電力需要が146万kW増加するということになる。原発1基の出力がおよそ100万キロワットだとすると,1.5基分の増加ということになる。

2004年当時よりも現在のほうが少しばかり電化が進展していること(増加要因)と今回の震災による節電意識の向上(減少要因)のどちらが勝るかわからないが,1℃上昇で約150万kW以上増加というところではなかろうか?


  ◆   ◆   ◆


なぜ,夏場の方が冬場よりも1℃の気温の変化に対する電力需要の増加が激しいのか,ということに関しては2つの要因が挙げられる:

(1) 暖房に関しては電気以外のエネルギー源,つまり灯油・ガスが使えるのに対し,冷房に関しては電気に頼るしかない

(2) エアコンに関して言えば(理論的には),冷房COPは暖房COPよりも1低い。つまり,エアコンの暖房で1℃上昇させるのに必要な電力よりも冷房で1℃下げるのに必要な電力のほうが大きい

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