【バングラデシュ】ムハマド・ユヌス氏の100万ドル流用疑惑について [Norwegian money to Grameen Bank]
それがどういう話なのか,以下の記事:
"Grameen Bank's Yunus 'stole' $100 mn" (Dec. 1, 2010, Indian Express)
"Norway gives clean chit to Nobel Laureate Muhammad Yunus" (Dec 8, 2010, DHAKA, PTI, Daily News and Analysis)
"Nation Fails to Defend an Icon" (Published in The Independent, Dec 18, 2010, M. Serajul Islam)
をもとにまとめてみた。
2010年12月,ノルウェー国営放送NRKが"Fanget I Mikrogjeld"すなわち"Caught in Micro-credit"というドキュメンタリーを放送した。
その内容は,「1994年,ノルウェー政府(正確にはNORAD:Norwegian Agency for Development Cooperation)からグラミン銀行に,マイクロクレジットに使用する目的で100万ドルを提供することが決まった。しかし,その資金はグラミン銀行の下部組織であるグラミン・カリヤン (Grameen Kalyan,グラミン・グループの保健福祉部門。マイクロクレジットの仕事はしていない)に回された。これは合意文書に反する行為だった」というものだった。
実際にはそのあと100万ドルはグラミン銀行に戻され,ノルウェー政府とグラミン銀行の間で対話が行われ,1998年には決着がついたのだが,同放送でそこまで放送したかどうかは小生にはわからない。
十数年前の事件を今更蒸し返すとは何事?という感じなのだが,同放送後の2010年12月,バングラデシュの政府関係者とマスコミは「ユヌス,過去に横領?!」と大騒ぎになった。
ノルウェー政府は12月8日にユヌス総裁(当時)を擁護する声明を発表。「一時,NORADの資金がグラミン・カリヤンに回ったのは事実だが,その件は1998年に解決済みである。ノルウェーからの資金が目的外流用されたり横領されたりしたという事実はない」とノルウェーの環境・国際開発大臣は述べた。
バングラデシュのシェイク・ハシナ首相はこの問題に非常な関心を寄せ,「グラミン銀行からグラミン・カリヤンへの資金の移動は税逃れのトリックではなかろうか?」とか,「マイクロクレジットは本当に貧困層を貧困のサイクルから救出できているのだろうか?」と疑問を提示した。
当事者(ノルウェー政府とグラミン銀行)の間では解決済みの問題が今頃になって出てくるのも変だが,ハシナ首相はこれを奇貨として政敵を追い落とそうとしているような感じである。
ただ,ユヌス氏が長く総裁を続けすぎている感があるのも事実である。
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コメント
大変参考になりました。
“疑惑”の顛末について、私のブログ(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110303)で利用させていただきましたが、差し支えあるようでしたら該当部分を削除しますのでご連絡ください。
事後になり、申し訳ありませんでした。
投稿: azianokaze | 2011.03.03 22:02
azianokaze様,貴ブログ「孤帆の遠影碧空に尽き」への引用ありがとうございます。
要約は適切なもので,問題ありません。
投稿: fukunan | 2011.03.03 23:53