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2011.01.19

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『半分のぼった黄色い太陽』を読んでいるところ

昨年の夏ごろに話題になった,チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(くぼたのぞみ訳)『半分のぼった黄色い太陽』(河出書房新社,2010年)を,だらだらと何日もかけて読んでいる。とりあえず,「第一部 60年代前半」を読み終わったところである。

半分のぼった黄色い太陽半分のぼった黄色い太陽
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ くぼた のぞみ

河出書房新社 2010-08-25
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物語の舞台は1960年代のナイジェリア。ビアフラ戦争イボ族 の分離独立運動が間もなく勃発するという時代である。「半分のぼった黄色い太陽: Half of a Yellow Sun」とはビアフラ共和国の国旗のことである:

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主人公的な存在は3人である:

ウグウ: イボ族の少年。大学で数学を教えているオデニボ(イボ族)の家(大学町スッカにある)でハウスボーイとして働いている。オデニボを「ご主人」と呼んで尊敬している。オデニボの恋人,オランナにも魅せられる。

オランナ: オデニボの恋人。美人。イボ族の実力者,チーフ・オゾビアの娘。ロンドンに留学経験あり。双子の姉妹,カイネネがいる。

リチャード: イボ=ウクウ美術に見せられたイギリス人。自称小説家だが,一篇も完成させていない。オランナの双子の姉妹,カイネネと恋仲になる。大学町スッカに移住し,オデニボたちに出会う。

物語は三人称で綴られているが,上述の3人の立場から,つまり3つの視点から描かれている。これは,作者である,チママンダ・ンゴズィ・アディーチェが唱える「シングルストーリーの危険性」という考え方に基づいているのであろう。

(字幕つきはこちら

小生は第一部を読み終わっただけだが,次のように感じた。

深刻な政治的問題が背景として存在しているのにもかかわらず,登場人物たちは,わりとあっけらかんとしていて,ときによっては猥雑で官能的でもある。

たとえば,オランナに関しては,こんな一節がある。エヌグ空港までオデニボがオランナを見送りに行ったときのこと:

「待ちきれないよ,ンケム」といって彼が唇を重ねた。マーマレードの味がした。わたしだってスッカに引っ越すまで待ちきれない,といいたかったけれど,それは彼もわかっているし,彼の舌が彼女の口の中にあって,オランナは股間にあらたな温もりを感じていた。(34ページ)

また,こんな表現もある:

男の突き込む動作が長く尾を引く記憶になるなんて,オランナは知らなかった。(38ページ)

オランナとカイネネという双子姉妹はこの作品中でもっとも魅力的な存在である。彼女らはイボ族の上流社会に属し,ロンドン留学経験が示すように,この国における知識階級でもある。オランナは優しく,社交的で,輝くような美人として描かれている。これに対し,カイネネはミステリアスで冷やかな女性として描かれており,リチャードはカイネネに翻弄されているふしがある。

第一部ではまだ物語は動き始めていない。これから「第二部 1960年代後半」に入るが,一体どのような展開が待っているのだろうか?


  ◆   ◆   ◆


半分のぼった黄色い太陽』の冒頭部分の原文・訳,また同書のプロモーションビデオ,そして各国語に訳された同書の表紙集などの情報については,次のサイトを見ると良い:
Half of a Yellow Sun by Chimamanda Ngozi Adichie チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 『半分のぼった黄色い太陽: tomokilog - うただひかるまだがすかる

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コメント

はじめまして。
TEDでチママンダさんの講演を見て、ぜひ彼女の小説を読んでみたいと思っていました。「半分のぼった黄色い太陽」、不思議かつ魅力的なタイトルだと感じたのですが、国旗のデザインを表していたのですね。「シングルストーリーの危険性」を取り除こうとしている文体にも興味を持ちました。ぜひ読んでみます。書評ありがとうございました。

投稿: ETCマンツーマン英会話 | 2011.10.27 00:56

書評お読みいただきありがとうございます。

小生としては短編集『アメリカにいる、きみ』に掲載されている同名の短編小説「半分のぼった黄色い太陽」も読んでみたいと思いました。

投稿: fukunan | 2011.10.27 12:01

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